【5連勝のJ1広島。リーグ優勝に向けて見せた昨季との違い(1)】「去年だったら引き分けで終わっていた…」と選手も振り返る難試合で勝ち切る強さ。連戦を練度に、ジャーメイン良&田中聡がフィット
今季のJ1リーグ優勝を目標とするサンフレッチェ広島。2月8日のFUJIFILM SUPER CUP・ヴィッセル神戸戦から2月23日のJ1リーグ第2節・横浜F・マリノス戦まで、すでに5試合を戦っており、全勝を誇っている。
■【画像】J1広島の先発メンバーと、広島が苦しんだ横浜F・マリノスの「4バック先発システム図→3バック変更布陣図」■
その内訳は、先述したスーパーカップ1試合、ACLE2試合、そしてJ1リーグ2試合というもので、得点数を「12」としながらも失点数はわずかに「1」。4試合で完封を見せる鉄壁さを堅持している。
しかも、相手も難敵ばかりだった。ケガ人が続出していたとはいえ初戦の神戸は昨季J1王者。そして、リーグ戦では町田ゼルビアと横浜F・マリノスを相手にしており、前者は昨季のJ1・3位チームで後者は監督交代をして王者奪還を目指すチームだ。
ホーム開幕戦の横浜FM戦は過密日程の5試合目とあって、選手の中にも疲労があった様子。広島らしく相手のいやがる攻撃を連続で見せた場面もあったものの、ペースダウンして膠着した時間帯もあれば、終盤に押し込まれて決定的なチャンスも与えてしまった。それでも、PKからの1点をしっかり守り切って勝ち切る強さを見せている。
■「去年だったら引き分けで終わっていた」
ホーム開幕戦を終えた直後の塩谷司は、「去年だったら引き分けで終わっていたかなっていう内容だと思うんですけど、やっぱ勝ち切る強さが少しずつ身についてきてると思います」と話して、手応えを感じている。
また、加入したばかりのジャーメイン良も「前節の町田戦もそうでしたけど、今日みたいな難しい試合で、去年の序盤に広島は引き分けが多かったイメージはあった」と口にしている。
選手がこう話すように、昨季の広島は、J1リーグ戦で言えば19勝11分8敗としており、J1優勝を手にするチームとしては悔しい引き分けを何度も見せていた。昨季の最初の5試合はすべてJ1リーグ戦だったため単純な比較はできないものの、2勝3分。FC東京、ヴィッセル神戸、ガンバ大阪と膠着した試合を見せ、勝点3を積み上げることができなかった。
現時点での勝ち切る強さについて、塩谷が「こういう試合を本当に勝ち切り続けていけるようにシーズンを通してしていかないといけない。強さをもっともっと身に着けていかないといけない」と力強く言葉にすれば、日本代表GK大迫敬介も「みんな去年の悔しさを持ってシーズンに入ってるので1試合1試合難しいゲームですけど、前回の町田戦から勝ちたい気持ちをみんなが持って戦ってこれている」と話す。
さらに、ジャーメインも「こういうゲームでもしっかり勝ち切るっていうところは、確実に大事になってくると思うので、本当にいい勝利だった」と続けた。
■選手補強が勝ち切る強さに
チームの勝ち切る強さに結びついているのが、選手補強の成功だ。ジュビロ磐田から獲得したジャーメイン良と湘南ベルマーレから加入した田中聡が全試合で先発出場。ピッチの上でしっかりとした順応を見せ、すでにチームに馴染んでいる。
この試合でPK獲得につながるジャーメインへのクロスを供給した加藤陸次樹にジャーメインとの関係性について聞けば、「非常に、本当にやりやすい」と笑顔で首肯したうえで、「クロスを上げたらそこにいてくれますし、パスを出したら“ここにいるだろう”って所にほとんどいてくれます」と話す。
田中聡本人に聞いても、「複雑な戦術がないので、すごく分かりやすい。マンツーマンでつくので、守備は特にやりやすさを感じています」と充実の表情を見せている。
ミヒャエル・スキッベ監督もジャーメインについて「我々のチームにとって一番大きな補強だった」と絶賛すれば、「プレスに行くこと、ボールを受けること、はたくこと、そういう部分も非常に満足しています」とゴール場面以外でもチームに貢献しているとする。
田中についても「(川村)拓夢がいなくなって、その後、来たわけですけれども、それ以上の働きをしていれていると思っています。ボールを奪うところ、ボールをさばくところ、それから1対1、スピードとか発想力の部分に関しても、申し分ない」と賛辞を惜しまない。
ここまでは、新加入選手を良い形でフィットさせ、そして、それをチーム力に変えているのだ。
ただし、広島にとって大事なのはこれをこのまま続けられるかというところ。そのヒントが、横浜F・マリノス戦にもあった——。
(取材・文/中地拓也)
(後編へ続く)