【5連勝のJ1広島。リーグ優勝に向けて見せた昨季との違い(2)】先発・交代枠の両面で選手変更が少ない状況でピッチ上の選手はどう戦うか。横浜FM戦は終盤に見せた「ヒント」とは
2月23日のホーム開幕・横浜F・マリノス戦を制して、FUJIFILM SUPER CUPも含めた5試合すべてを勝利としたサンフレッチェ広島。J1優勝を目指すうえで最高のスタートを切ったと言える。
内容も申し分なく、ACLEなど他のコンペティションもあるといえ、12得点1失点。チームとして自信を早くも手にできるものだ。
一方で、優勝を狙ううえで今後、乗り越えなければいけないのが選手を固定した中での戦い方である。昨季もミヒャエル・スキッベ監督は信頼する選手をピッチに送り続け、連戦においてもそれは変わらなかった。今季もそれは継続しており、ここまでの5試合で、ジャーメイン良、加藤陸次樹、中野就斗、田中聡、佐々木翔、大迫敬介の6人が全試合で先発。また、トルガイ・アルスラン、塩谷司、荒木隼人、川辺駿、東俊希の5人が4試合で先発している。中2日や中3日での連戦もあったが、5試合中3試合で同じメンバーで試合に臨んでいる。
さらに、交代枠を必ずしも使い切らないのもスキッベ監督の特徴で、今季も、町田ゼルビアと横浜F・マリノスとのリーグ戦2試合ではいずれも5つある交代枠を使い切っておらず、交代人数は町田戦で3人、横浜FM戦で4人にとどまっていた。
■横浜F・マリノス戦で見せた柔軟な戦い方
今後も同じような戦い方をするとなれば、疲労とのつきあい方も重要となるが、ピッチに立つ選手が目の前の局面にどう対応していくかも大事となる。選手交代で流れを変える局面が他のチームに比べて少ないことになり、同時に、同じメンバーで相手の変化に対応していかなければいけないからだ。
しかし、そのヒントが横浜F・マリノス戦にあった。この試合の後半29分、1点を追う横浜FMのスティーブ・ホーランド監督は4枚替えを行い、システムもそれまでの4-2-3-1から3-4-2-1に変更している。選手配置が大きく変わったことで、井上健太など何人かの選手を捕まえきれなくなった場面もあった。
連戦で迎えた試合の終盤15分だったこともあって、体力的に前に出ていけない場面もある。その中で、いったん、ラインを引くことが決断され、佐々木翔や川辺駿を中心に綿密なコミュニケーションを取りながらコントロールされた部分があったという。
加藤陸次樹は「キャプテンを中心にいったんラインを下げようという話をして、越道選手が入ったときに、彼が2度追い・3度追いするような形であえて(他の)選手を前に出させずに、堅い守備を心がけて」と話せば、田中聡も「80分過ぎてからはそんなに出過ぎなくていいって(川辺)駿くんから言ってもらえたので(やりやすかった)。そこは選手間でもコミュニケーションはとれている」と振り返る。
最後尾から声を出していた大迫敬介も、「ちょっと受身なのは覚悟した上での戦いでしたけど、それ以外のところは、ほとんど相手に決定機を作らせなかった」と、時間と状況に合わせての戦い方に自信を見せた。
■加藤陸次樹「どうしても悪い時間は必ず来る」
この試合ではラインを下げて守り抜くことを選択したが、同じメンバーで長年やっているだけに、他の選択肢も取れるはず。田中聡も、「ボランチなので、個人的にはもっとボールを触って時間を使うというか自分たちの流れにしたかった」と話す。
ピッチ上の選手で相手と時間に順応していうことについて聞けば、「1試合を通してみればどうしても悪い時間は必ず来るので、そこでやっぱり守備の部分でバラバラにならないこと」としており、「本当は高い位置から取りたいですけど、取れないときに流れが悪いときっていうのは本当にリトリートすることは大事だと思う」と、理想と現実を見極めながら勝利を手にしていくイメージだ。
この試合から早くも中2日で清水エルパルスとの試合が待っている。しかも、アウェイゲームで体力的にはよりきつい展開となる。