【なぜこんなに想定外が多いのか? 25年J1序盤戦を考察する(2)】王者・神戸は苦境に立ち、初陣苦戦の鹿島とG大阪は復調の兆し。初戦大勝の川崎とC大阪は足踏みか? 鹿島はメンバー編成を再考
清水エスパルスと湘南ベルマーレが開幕2連勝という好発進を見せる中、J1・2連覇中の王者・ヴィッセル神戸が白星を手にできていない。彼らは今季も優勝争いをリードする存在と目されていたが、開幕前から宮代大聖、井手口陽介ら主力級の離脱者が続出。15日のJ1開幕・浦和レッズ戦では最終ラインのキーマンである酒井高徳とジョーカーのジェアン・パトリッキが負傷してしまった。
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そこにACLエリートの順位変動という異例の事態が発生。チーム全体がモヤモヤした状態で22日の名古屋グランパス戦を迎えることになった。その一戦ではケガの癒えた広瀬陸斗、井出遥也が復帰。何とか戦える戦力は揃ったものの、名古屋の徳元悠平に直接FK弾を決められる劣勢を強いられた。
そこで奮起したのが、エース・大迫勇也。彼の2ゴールで逆転に成功し、そのまま逃げ切れるかと思われた。だが、前半に負傷した本多勇喜と交代していた若い日高光揮が浅野雄也を倒してPKを献上。2-2に追いつかれてしまった。またもケガ人が出たうえ、神戸らしい堅守で逃げ切りというのができなかったことで、吉田孝行監督も相当に苛立ちを募らせているはず。戦力的なやりくりにこの先も頭を痛めることになりそうだ。
■鹿島とG大阪が初勝利
神戸以上に開幕から重苦しいムードに包まれたガンバ大阪と鹿島アントラーズは揃って2戦目に今季初勝利を挙げている。
まずガンバだが、ご存じの通り、14日のセレッソ大阪との大阪ダービーでまさかの2-5の大敗。昨季総失点35というチームの守備崩壊に大きな衝撃が走った。ダニエル・ポヤトス監督は今季、相手陣内でのボール奪取率を高めるためにハイプレス戦術を志向。それをキャンプから積み上げてきていたが、逆にチーム全体が間延びして、守りが連動しなくなっていた。
そこで、22日のアビスパ福岡戦ではボランチを美藤倫とネタ・ラヴィに変更。2列目も岸本武流、宇佐美貴史、倉田秋という構成にし、1トップにイッサム・ジェバリを配置するという形にして、攻守両面の再構築を図った。その修正が奏功し、ベテラン・倉田がスーパーゴールを含む2ゴールをマーク。何とか2-1で勝ち切った形だが、クロス対応にズレが出て、1失点してしまった。
昨季のガンバならこういったミスは出なかったはず。攻撃陣の戦力アップが十分でない今、失点ゼロというのがガンバにとって最重要テーマと言っていい。幸いにして一森純は好調をキープしているだけに、彼を中心としてガッチリと守りを固めていくべきだ。
■鹿島はメンバー編成を再考
鹿島の方は初戦・湘南戦を0-1で落とした後、鬼木達監督もメンバー編成を再考したのだろう。開幕前から鈴木優磨、レオ・セアラ、荒木遼太郎の”王様タイプ”3人は共存しづらい言われていたが、22日の東京ヴェルディ戦では荒木を外し、右MFに小池龍太を起用。右サイドは濃野公人とのタテ関係という新たな形にして、活性化を図ったのだ。そして左MFも推進力のある松村優太を起用。ボランチの1枚も樋口雄太を入れ、とにかく2トップを生かす戦いにシフトしようと試みたようだ。
組み合わせ変更もあって、”タテへの意識”を取り戻した鹿島は湘南戦とは別のチームのようにゴールに突き進んだ。そして新加入のエースFWに2ゴールが生まれ、さらには鈴木優磨もPKと流れの中から2点をマークするという最高の結果をつかんだのである。
レオ・セアラの先制点を見ても、濃野のアバウトなクロスが起点になっていて、長いボールも積極的に使っていた。鬼木体制発足後の彼らはポゼッションが目的化し、ゴールに向かえていない印象が強かった。が、得点を取るための優先順位を取り戻したことで、ここから一気に変わりそうな雰囲気もある。小池の右MF起用も本当に大きな要素。彼攻守両面でのポジショニングと周囲との関わり方のうまさが本当に光っているだけに、しばらくはこの形が軸になりそうだ。
■川崎とC大阪は初戦で大勝も足踏み
一方で、開幕戦で大勝した川崎フロンターレとセレッソ大阪は2戦目で足踏みを強いられた。川崎の2戦目はリカルド・ロドリゲス監督就任で生まれ変わった柏レイソルという難敵との対戦だったため、苦戦を強いられるのは想定内と言えるが、ボール支配率やシュート数で下回ったのは気掛かりな要素。長谷部茂利監督就任で守備強度が上がり、攻守の切り替えが早くなった好材料を生かしながら、コンスタントに攻め切って勝てるような攻撃迫力を示していくことが今後の躍進のポイントではないか。
セレッソの方はボール支配率や走行距離では湘南を上回ったものの、守備面のスキを突かれて失点していた印象だ。アーサー・パパス監督のサッカーは選手個々の判断によるところが大で、そこでミスが起きると崩れてしまいがちだ。やはり新監督の序盤ということで、守備組織を完成させるところまでは行っていないのだろう。やはり安定感ある戦いをしたいと思うなら守りが第一。走力やハードワークの部分を強化してきただけに、規律や約束事さえ徹底できれば改善は見込める。ここから先の前向きな変化に期待したい。