【リオ五輪】痛恨オウンゴールから一夜。励ましあり、イジリあり、手倉森ジャパンの“一体感”に救われた藤春の決意

亀川と岩波が「反省してへんやん!!」とイジれば、中島は「次は俺にアシストして」とメッセージ。

 手倉森ジャパンは現地8月8日、マナウスで練習を行ない、コロンビア戦で痛恨のオウンゴールをしてしまった藤春廣輝は、時折笑顔を見せながらリカバリーのメニューを消化した。

「あの瞬間はメンタルもだいぶやられたし、そこで終わってしまうところだった」

五輪の大舞台で、サッカー人生初のオウンゴールを犯すショッキングな事態を受け入れ、前を向くことができた背景にあったものとは――。

同日の練習初めにチームで円陣を組んだ際、手倉森監督は敢えて藤春のオウンゴールについて触れ、「カモシカが鉄砲(猟銃)で撃たれたみたいだったな」と “ネタ”にして選手たちの笑いを誘った。そこで、すかさず立ち上がったのが、藤春の両隣にいた亀川諒史と岩波拓也だ。笑っている“先輩”を見て、「反省し てへんやん!!」と突っ込みを入れ、雰囲気を和ませた。

さらに、アトランタ五輪でオウンゴールを経験している秋葉忠宏コーチ(編集部・注/1次リーグ第2戦のナイジェリア戦試合終盤、飛び出したGK川口能活 をかわすように相手が蹴ったボールが、不運にも全速力で守備に戻ってきた秋葉氏の胸に当たりゴールへと吸い込まれた)が、「俺も経験したことがあるんだ よ。気にすることはない」とサポート。コロンビア戦で同点ゴールを決め、敗戦の危機からチームと藤春を救った中島翔哉も「次は俺にアシストして」と声掛け したという。

「嬉しかったですね」

藤春は、手倉森ジャパンの「温かさ」「一体感」を噛み締めるように振り返る。

「周りもだいぶ気を使ってくれていて、みんな声をかけてくれるし、『気にすんな』と言ってくれています。落ち込んでいたらやっていけないので、悔しい想いをするのは試合の時だけにして、しっかり切り替えるしかない。ひとりだけ暗いとチームの空気も悪くなりますから」

「まだ挽回するチャンスはあるし、次のスウェーデン戦で力を見せるしかない」

 藤春に限らず、塩谷司や興梠慎三にしても、「オーバーエイジ選手」として求められるものは高く、責任感や気負いは必然と強くなる。藤春はフランクなキャ ラクターでムードメーカーとして手倉森ジャパンに溶け込んできたが、オウンゴール後は「良い兄貴分で、あんなに盛り上げ役だったヤツが、大人しくて、ただ みんなに付いて行く感じになっていた」(西野朗技術委員長/藤春とは11年にG大阪で監督と選手の関係)。ただ、多くの後押しによって、スウェーデン戦に フォーカスすることができるまで立ち直った。

「あんなオウンゴールをしたら、名前は確実に覚えられたでしょうね。(藤春って)なかなかいない苗字なので(苦笑)。でも、まだ挽回するチャンスはある し、次のスウェーデン戦で力を見せるしかない。翔哉とのコンビネーションでたくさん良い場面を作れたので、攻撃の良い流れを継続していければいいかなと。 チームとして点は取れている分、あとは守備が抑えれば絶対に勝てる。(オウンゴールのような)ああいう場面の判断はしっかりやっていきたい」

この一連の出来事によって、藤春は本当の意味で手倉森ジャパンの一員になったとも言えるだろう。グループリーグ突破を懸けた“世紀の一戦”で背番号4はどんなプレーを見せるのか。試練を乗り越えた先に、ドラマティックなハッピーエンドがあると信じたい。

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