【2.27 Jリーグ開幕】J人気回復の切り札になり得る“ビッグ6”の存在

今季のJ1順位予想には“ある傾向”が…。

 サッカー解説者とJリーグに精通するフリーランスの記者併せて数十人に今季のJ1リーグの順位予想をしてもらったところ、ひとつの傾向が浮かび上がった。なんと、上位6チームの顔ぶれがほぼ同じだったのだ。

その6チームとは、広島、G大阪、浦和、FC東京、鹿島、川崎。伝統と実績ではJリーグ屈指の横浜が外れているのは寂しいかぎりだが、識者の予想から判断 するかぎり、今季の優勝候補は“ビッグ6”になる。そしてこれは、Jリーグを盛り上げる意味で重要なキーワードにもなりそうだ。

かつてイタリアのセリエAが全盛を誇っていた90年代、「セブンシスターズ」と呼ばれたビッグクラブグループが存在した。ユベントス、ミラン、インテル、ローマ、ラツィオ、フィオレンティーナ、パルマがリーグの主役として脚光を浴びたのである。

彼らの直接対決はいやがうえにも期待が高まり、セブンシスターズの一角が格下に敗れようものなら各国のスポーツ紙に“事件”として取り上げられることもあった。

2000年代に突入すると、イングランドでは「ビッグ4」が話題になった。マンチェスター・U、アーセナル、リバプール、チェルシーの4クラブが毎年の ように覇権争いを繰り広げたことから、世界中の注目を集めるようになったのだ。プレミアリーグが「世界最高峰」と評されるまで成長を遂げられた背景には、 間違いなく「ビッグ4」の存在があった。

当時のセリエAやプレミアリーグには世界的に有名な選手が数多くいたからそれだけ盛り上がったとの見方もできる。ただ、「セブンシスターズ」や「ビッグ4」というフレーズがサッカーファンの興味を引く要因になったことは紛れもない事実だ。

数年前のJリーグは、昇格した柏がいきなりJ1制覇を成し遂げ、また大宮が前半戦に快進撃を見せるなどして、「どこが優勝しても不思議はない」と言われ ていた。勘違いしてもらっては困るが、柏の快挙、大宮の奮闘にケチをつけているわけではない。ただ単純に、「どこが優勝しても不思議はない」という状況 は、見どころを絞れないという点で興味を惹きにくいということを主張したいだけだ。

その点、「ビッグ6」という分かりやすい指標があれば、メディア的にも取り上げやすいだろう。例えば「ビッグ6の直接対決」と謳うだけで、もしかするとこれまでJリーグに関心がなかったサッカーファンを振り向かせられるかもしれない。

そうした発想が安易かどうかはさて置き、いわゆる“戦力の二極化”(ビッグ6と他のクラブ)はJリーグ人気を回復させるうえでひとつのファクターだと考えている。失礼を承知で言えば、スモールクラブという解釈がもっとJリーグに浸透していい。

近年は毎年のように降格候補に挙がる甲府の、守備的な戦い方を批判する向きもあるが、記者はそう思わない。「どんなことをしてもJ1に残留する」という信念が感じられるその戦い方には、むしろ好感が持てた。

「弱者には弱者なりの生き様がある」

彼らのパフォーマンスを見ていると、そんなメッセージを投げかけられているような感覚にさえなった。格上を倒すうえで守備を重視するのはごく当たり前で、残留か降格かという崖っぷちにいる状況下で正々堂々戦えなどという綺麗事はいらない。

レスターの奇跡の価値も、ビッグクラブがいてこそ高まる。

 いずれにせよ、どのクラブもJ1制覇を狙う構図ははっきり言って現実的ではない。いまひとつピンとこない「○勝点が目標」と設定するより、「残留こそ最大にして唯一の目標」と堂々と言い切るクラブが増えてもいいだろう。

今季のプレミアリーグで戦力的に乏しいレスターの大躍進が世界的に注目されているのも、「スモールクラブが起こすミラクル(リーグ優勝)」に期待してい るからだ。シーズン開幕前は降格候補と目されたスモールクラブだったレスターだからこそ、「ミラクル」の価値は高まるのである。それが「どこが優勝しても 不思議はないリーグ」だったなら、注目度は間違いなく下がる。

そういう意味でも、ビッグクラブの存在意義はある。J1リーグでビッグ6が定着したとして、その他のクラブが毎年恒例のチームスローガンに「打倒ビッグ6!」みたいなものを打ち立ててもいい(スローガンを作成するうえでの規則は置いておいて)。

ビッグ6という概念は、“お茶の間”にサッカーを広めるうえで切り札になるかもしれない。J1の18クラブを平等に扱うなとクレームを付けているのではなく、Jリーグの新規ファンを獲得するうえで目を引く、耳に残るフレーズは重要だということだ。

もっとも、今季のJリーグが盛り上がるかどうかは、ビッグ6がその看板通りの実力を発揮することが大前提とも言えるのだが……。

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