<ガンバ大阪・定期便157>植中朝日、鮮烈なガンバデビュー。
■心待ちにしていたパナスタの熱狂。ガンバでの初ゴール。
今年1月の加入から約8ヶ月。ガンバ大阪での初ゴールは、パナソニックスタジアム吹田で生まれた。彼の言葉を借りれば「この半年、パナスタでプレーすることをずっと楽しみにしながらリハビリしていた」舞台だ。しかも、2026/27シーズン開幕を告げる浦和レッズ戦の前日には、たくさんのファン・サポーターの熱が沸き立つ圧の感じるスタジアムが『大好物』だと明かしていた。
「お客さんの前で試合をできるのがサッカー選手としての一番の喜び。明日のパナスタは満員に近いと聞いていますが、僕は観客が入る試合ほどゴールを決めてきた確率も高い。ACLE2024/25の決勝(アルアイン戦・第1戦)とか、リバプール戦(Jリーグワールドチャレンジ2025)とか、67,000人強お客さんが入った中で点を取った記憶もある。明日のパナスタも満員に近いそうなので、はい。取れるんじゃないかと思います」
「観客が多いほど点を取れる」と自信を膨らませるきっかけになったのは、前所属の横浜F・マリノス時代に戦ったACLE2024/25の準決勝・蔚山現代戦だったという。アウェイでの第1戦を0-1で折り返した中で迎えたホームでの第2戦。植中は13分と30分に2点を叩き込む活躍を見せる。その試合が改めてFWとしての自信を備えるきっかけになった。
残念ながら今年1月にガンバに移籍した直後、沖縄キャンプ中に左膝を痛めてしまい長期離脱に。特別シーズンではその自信をピッチで確認することはできなかったが、その期間も含めて溜めに溜めた得点への欲は、8月7日の浦和戦で示される。有言実行、『決勝点』という劇的な一発で、だ。
「僕が入ってから逆転されてしまいましたけど相手が10人だったし、まだ諦める時間帯でもなかったので。弱いチームだったらあのまま終わってしまっていたと思います。でも、ACL2 2025/26で『タイトル』も獲って、みんなが自分たちに対しても自信を深めているはずだし、そういう経験も含めて強いチームになってきているんじゃないかと思います。ただ、個人的にはタイトルは嬉しかったけど、僕自身はあのトロフィーを掲げる瞬間にいられなかったので。決勝戦は正直、ギリギリ帯同できるかどうか、自分の膝次第だなという状況だったんですけど、『今の自分が行ったところで力になれないなら、1枠を自分で埋めるのは申し訳ない』と思って自分から行かないと決めたんです。それもチームのための決断だと思ってのことだったのでそのことに後悔はないですけど、次の『タイトル』にはちゃんと自分もいい状態であの喜びの輪に入りたい。そのためにもしっかりとピッチでの結果を残して、仲間の信頼を得たいし、ゴールを決めてガンバの勝利に貢献していきたいと思っています」
得点シーンを振り返ってみる。80分に浦和・南野遥海に逆転ゴールを許しながらも、84分にウェルトンのゴールで再び試合を振り出しに戻した上での86分のシーンだ。
岸本武流からパスを受けたイッサム・ジェバリがややボールを貯めて敵陣、右裏のスペースにボールを送り込むと、ペナルティエリア内に進入した山下諒也がダイレクトでクロスボールをあげる。それに反応したのが植中だ。やや体制を崩しながら「首がもげるかもげないか、ギリギリのところで頭を振って」頭で合わせ、ゴール右上を捉えた。
「どんなクロスボールが上がってくるかわからなかったので、自分の前をボールが横切らないようにだけはしたいなと思いながら入っていきました。ちょっと入り過ぎた形にはなったんですけど、うまく合わせられて良かったです。自分が入ってからの時間帯も相手が10人だったこともあったし、いつも通りのサッカーにはなっていないなというのは感じていて。ボールが自分の上を通り過ぎていくというか、ロングキックが多めの展開になっていましたしね。僕としてはもっと自分の持ち味を出したかったなというのはありました。ただ、結局、ゴールは決められたので。それが一番求めていたことだったので、(決められて)良かったです。初めて今日、パナスタのピッチに立ってみて、自分たちを後押ししてくれる感覚がすごくあったし、僕がゴールを決めた時の雰囲気も最高でした。あれを何回も感じられるようにしたいです」
先に書いた通り、80分には昨年までのチームメイト、南野にゴールを許していた中で、そのことにも触発されたのかと尋ねると、茶目っ気たっぷりの返答で笑いを誘った。
「遥海(南野)が抜けて、僕は怪我から復帰したという中で、同じFWとしてどうしても比べられるところもあると思いますけど、今まで自分がやってきたものを出すだけだと思っていました。結果的に今日は向こうも決めましたし、僕も決めましたけど、でも今日は僕らが勝ったので、はい。ヒーローはもらっちゃいました(笑)」
■「他の選手の足が止まってしまうようなタイミングでも自分は走り続けてチームに貢献したい」。
ガンバに加入してからここまで、その多くをリハビリに費やしながらも、チームを『観る』ことで得点のイメージを膨らませてきた。
「ガンバがどういうサッカーをするのかを聞いた上で移籍を決断したし、リハビリをしていたこの半年間も、自分のプレースタイルに合うなと思いながら見ていました。結果的に監督は交代になりましたけど、やっているサッカーは大きく変わらないということをベースにここまで進んできた分、自分のやるべきプレーはイメージがつきやすい。あとは強度高くプレーすること、前線からの守備、背後に抜ける、高い位置でボールを失わずにキープするといった自分の特長をそのまま表現していくだけだと思っています」
ポジションは1トップ、もしくはトップ下。プレシーズンマッチや練習試合でもその両方で、いろんな選手と組みながら戦ってきたが、本人は特にこだわりは持っていない。
「今日のように自分が前で、トップ下のジェバ(ジェバリ)と組む時はお互いに時間を作って、お互いがいい状態でボールを出したり、受けたりできますし、自分がトップ下に入ったときも、どこでボールを受ければより攻撃を前に進められるのか、とか、周りの選手を活かせるのかというバリエーションも持ちながらやれています。とにかく、僕はどこに入ってもガムシャラにやるだけ。仮にケガ人が出てしまった時にどこのポジションにも移動できるように準備はしていますし、なんならゴールキーパーもやります(笑)。いや、それはちょっと無理ですけど、そのくらいの気持ちを持って準備をしていると思っていただければ大丈夫です」
すなわち、それは、ガンバの勝利のために自分のすべてを注いで戦う覚悟があるということだ。もちろん、そのための準備もできている。
「今シーズンを迎えるにあたっての準備期間は、半年間サッカーをしていなかったので、ボールフィーリングのところは一番気にしながらやってきました。あとは心肺機能の部分ですね。本来、もっと早くに復帰する予定のケガだったのに結果的に倍近い期間がかかっちゃったので、そこもしっかり取り戻そうと意識してきました。また、痛めた膝もこの先もっと良くなっていくと思うので。サッカー選手にとってサッカーができないことが一番苦しいことだと考えても、そこに引き戻されないためにもメディカルスタッフの力も借りながらケアも入念にやりながら進んでいこうと思います。あと、この夏の暑さについては、これまでも暑い夏の試合は経験しているし、(ACLEなどを通して)中東での試合経験もあるので。そこまでビビっていないというか、気にしていないというか。それよりも、そんな暑い中でも『あいつ、走ってるな』というのが僕の特長だと思っているからこそ、他の選手の足が止まってしまうようなタイミングでも自分は走り続けてチームに貢献したいと思っています」
何より、約8ヶ月の期間を通して新たな環境、新たな仲間に慣れたことも彼のプレーを後押しする大きな要素になることだろう。加入した時から「普段からふざけるキャラ。そこでも楽しまられるように頑張っていきたい」と話していただけのことはあり『関西の笑い』もどんとこい、だ。ピッチの内外でいろんな選手と絡み、絡まれる姿も今ではすっかり、ガンバの日常になっている。
「この半年、先輩たちといる時間も多くて、よくイジってもらったり、そこに食らいついてウケを狙いに行ったりしてきましたが、そこのセンスはもっと磨きたいし磨けると思っています(笑)。ただ、リハビリ期間でずいぶん、チームに溶け込めたというか、みんなとの距離が近づいたと思っていましたけど、実際にこうしてキャンプが始まってサッカーをしながらコミュニケーションを取ると、また全然違うなと感じています。明らかにサッカーをしながらの方がみんなとより密にコミュニケーションを取れている感じもする。やっぱりサッカー選手はサッカーをしてナンボ。ここからしっかり頑張っていきます」
もっとも、開幕戦では『初ゴール』に『白星発進』と幸先のいいスタートを切ったものの、まだまだ課題は多い。失点にもつながったクロス対応の守備や局面での寄せの甘さを含めて、本人も「改善できるところはたくさんある」と気を引き締める。8月11日にはACLE2026/27への出場を懸けた一発勝負のプレリミナリーステージ・江原FC戦が待ち受けると考えても、短い期間の中でも改善を図る必要はあるだろう。
「勝ちながら修正して、次に繋げることができれば、チームは強くなっていける。ファン・サポーターの人たちも、クラブレジェンドであるミョウさん(明神智和監督)のもとでタイトル争いをすることができれば一番嬉しいはず。それを実現するシーズンにするためにもしっかり結果にこだわりながら、次のプレーオフもしっかり勝ってスタートダッシュをできるようにしたいです」
ちなみに有言実行で浦和戦でのゴールを決めた植中曰く、「僕、一発勝負も得意なので(江原戦も)任せてください」とのことだ。




