W杯初得点に凝縮されたサッカー人生…憧れの舞台での新たなドラマに期待
その軌跡は今でも覚えている。2010年サッカー・ワールドカップ(W杯)南アフリカ大会のデンマーク戦で、日本代表の遠藤保仁さん(当時ガンバ大阪)が決めたフリーキック。1メートル90前後の長身選手が並んだ相手の「壁」を越え、弧を描いてゴール右隅へ吸い込まれた。GKもわずかに届かない絶妙なコントロールだった。
3―1で勝利後、遠藤さんは頬を紅潮させながら、取材エリアに現れた。「(壁を作った守備選手の中で)右端の選手が小柄だった」と言い、その頭上を狙ったと自ら切り出した。普段なら、そんな手の内は明かさない。何よりもいつもの淡々とした口ぶりではなく、興奮を抑えきれない様子に、W杯初得点を決めた喜びがにじみ出ていた。
遠藤さんは当時30歳。代表では同世代の影に隠れる期間が長く、06年W杯ドイツ大会もGKを除く選手で唯一、出番がなかった。めったに悔しさを見せないが、この時ばかりは「次は頑張るよ」と家族に伝えたと聞く。毎朝、2人の兄と自宅の庭でボールを追うところから始まったサッカー人生。南アでの一蹴りに全てが凝縮されていた。
11日、史上最多の48チームが出場するW杯北中米3か国大会が開幕する。日本が過去7大会で積み上げたゴール数は25。その一つ一つに、憧れの舞台を目指してきた選手たちの熱情が込められていた。今大会も新たなドラマに期待したい。



