<ガンバ大阪・定期便155>古巣相手に2アシスト。初瀬亮が示す、唯一無二の存在感。
■チームを勢いづけた活躍。初瀬が古巣相手に激らせた『感謝』。
初瀬亮にとっては古巣戦となった、5月2日のJ1百年構想リーグ第14節・ヴィッセル神戸戦。
かつて在籍していた神戸で磨き抜いた『キック』という最強の武器はこの日のパナソニックスタジアム吹田でも存分に示された。思えば、その神戸時代の23年には8アシスト、24年には7アシストという数字を残しチームのJ1リーグ連覇に貢献した初瀬だったが、この日も当時を彷彿とさせる圧巻の2アシスト。彼にとっては昨年8月にガンバに復帰してからホームで戦う初めての神戸戦に期する思いも強かったという。
「どの試合も気持ちは入っていますけど、古巣相手でより気持ちが入っていました。昨シーズンのパナスタでの神戸戦はケガで出られなかっただけに、今日の試合は個人的にもすごく楽しみにしていました。神戸はすごくお世話になった、たくさんの経験を積ませてもらったチーム。選手としてここで結果を残すことが恩返しだと思っていたので、成長した姿を少しは見せられたんじゃないかと思うし、チームとしても個人としても結果が出せて良かったです。個人的には前節の京都サンガF.C.戦は出場がなかったのでフレッシュな状態でこの試合を迎えられた。連戦の中でもチーム、個人として継続してやり続けてきたからこその今日の結果だったと思っています」
特別な思いを込めた一戦は、初瀬が開始早々の3分に放った、強烈なミドルシュートから始まった。宇佐美貴史からのパスを受けた彼は、ペナルティエリアの外から挨拶がわりと言わんばかりに思い切りよく左足を振り抜く。
「今日は最初から思い切っていくしかないと思っていました。止められましたけど、シュートの感覚もすごく良かったです」
それが勢いになったのか、その後も宇佐美や食野亮太郎、美藤倫らといい連係を築きながら左サイドから圧をかける。その中で初瀬のクロスボールが南野遥海の先制点につながったのが22分だ。美藤からパスを受けた初瀬は、前線で相手DFと駆け引きをしながら2センターバックの間を割ってゴールに近づいた南野にピンポイントクロスを送り込む。さらに36分には左ショートコーナーキックのシーンで再び、左サイドからのクロスボールをファーサイド後方の中谷進之介に合わせ、その折り返しを三浦弦太が頭で捩じ込んで2点目に繋げた。
「1点目は完璧でした。遥海(南野)はこれまでもずっといいところに入っていてくれたし、自分も決していいところに蹴れていなかったわけでもなかったので。大阪ダービーも含め、いろんな場面でいいボールを蹴れていたので、あとはいつゴールにつながるか、だけでした。(アシストをつけるのは)ちょっと遅くなりましたけど、自分としては狙い通り、フリーの状況だったのもあっていいボールを蹴れたと思います。2点目の左ショートコーナーの形も前日に準備していました。練習通りに得点にできたのも良かったです」
さらに初瀬が自ら「それよりも僕が一番好きなゴールだったのは…」と切り出したのが2-0で折り返した後半、52分に再び、初瀬のクロスボールから南野が頭であわせて奪った3点目だ。
「宇佐美くんとのワンツーのシーンは、神戸時代でいうイニエスタみたいな感じで、絶対に(ボールが)自分に返ってくると信じていましたし、実際にめちゃめちゃいいボールを返してくれた。僕のクロスボールも遥海のヘッドも文句なしやったと思います」
そこに続いた言葉も実に初瀬らしい。
「アシストも、たくさん点が入ったものもちろん嬉しいですけど、今日何よりも嬉しかったのは、先発メンバー11人のうち5人がガンバアカデミー出身選手だったこと。得点シーンもアカデミー出身の3人で取れたし、プラス、ベンチには途中出場した仁郎(中村)をはじめ、秋くん(倉田)、天翔(山本)もいましたしね。仁郎はなかなかここまで出番がなかったですけど、練習でずっと頑張っていたのを見ていたし、今日は、イェンス(ヴィッシング監督)が大事にしている、普段からの頑張りをつなげてチームで勝つんやって姿をみんなで見せられた。アカデミー出身選手がこのパナスタで活躍する姿は、アカデミーの後輩たちの刺激にもなると思いますし、こうした姿をもっともっと見せていきたいです」
昨年夏、7シーズンぶりにガンバに復帰した時から常々口にしてきたガンバへの『想い』があってこその言葉だった。
「僕がジュニアユース時代、ユース時代、トップチームが勝つ姿、タイトルを獲得する姿をスタジアムで見てきました。それを見て僕も『ガンバのトップチームでタイトルを獲りたい』って思ったし、それが自分の目標になった。あの時の自分と同じようにアカデミーの後輩たちがトップチームに今以上にたくさんの夢、目標を描いてもらうためにも、ここで絶対にタイトルを獲りたい。それが育ててもらったことへの本当の恩返しやと思っているし、そのために必要だと思うことを自分らしくやり続けたいと思っています」
以降も80分に奥抜侃志が、82分にデニス・ヒュメットが得点を重ねたガンバは5-0の圧勝で、首位・神戸から勝点3をもぎ取る。初瀬も「絶対にゼロで勝ち切るぞと、みんなで声を掛け合いながら最後までやり切れた。なんも、いうことないです」と完勝に胸を張った。
■倉田秋が絶賛する初瀬の姿。「その『声』がチームを鼓舞し、盛り上げる」。
今シーズンも初瀬はチームのムードメーカーとして唯一無二の存在感を示してきた。ハードな日程で厳しい連戦を戦う最中も、自身が試合に出ても、出なくてもだ。フィールド最年長の倉田秋が証言する。
「チームがいい状態の時に声が出る、自分の調子がいい時に声が出るのはある意味、簡単なんですけど、亮(初瀬)のことをほんまにすごいなって思うのは、あいつだけはどんな時もずっと声を出し続けていること。練習でも、試合でもマジでずっとです。今シーズンも亮には『今日は元気ないな』みたいな日が一度もなくて、自分の立場とか調子とか一切関係なく、常にチームを鼓舞して盛り上げてくれている。ここまで試合が多くなると当然、疲労もあるし練習で自分を鼓舞するので精一杯みたいな感じになっても致し方ない部分もあるとは思うんですけど、亮にはそれが一切ない。それは後輩ながらすごいなってめちゃくちゃリスペクトしているし、亮がその姿を見せてくれてきたから、最近は少しずつチームにもその雰囲気が浸透してきて、チームの日毎のテンションの差が小さくもなってきた。もちろんサッカーをする上で声を出すことが全てだとは思わんし、人それぞれの引っ張り方があっていいとは思う。でもやっぱり僕は試合に向かう雰囲気、ロッカールームのテンションはすごく大事やし、そこから勝つ雰囲気、戦う雰囲気を作っていくべきやと思うので。そこで誰よりも声を出して、誰よりもチームを鼓舞して盛り上げてくれる亮の存在は今のガンバにとってめちゃめちゃ貴重やと思っています(倉田)」
初瀬によれば、それも「チームが勝つため、タイトルを獲るため」だ。仲間の戦う姿に彼自身も勇気をもらい、それが『意識』や『声』に変わることも多いという。
「なんでも考え方次第やと思うから。いい時は、チームもいい雰囲気やし、いい声が出るけど、大事なのは負けている時とか、うまくいかない時。よくない時間をできるだけ短くしたいと思えばこそ自然と声も出るし、気持ちも勝手に上がっていく感じです。それに、連戦はもちろん大変やけど、サッカー選手にとって試合ができるっていちばんの喜びやから。連戦で大変とか、なかなか疲れが取れへんみたいなことってめちゃめちゃ贅沢な悩みやし、その受け止め方次第で体の疲れ、頭の重さも少しは取れる部分もあるはず。ガンバは本当にいい選手が揃った、いいチームで、みんなが見えないところですごい戦っているし、メンバーに入れていない選手もすごいハードなトレーニングと向き合って、必死に自分を成長させようとしている。チームとしてもハードな中でも走りのメニュー、ウエイトのメニューも含めすごいハードなトレーニングを続けてきましたしね。イェンスもみんなを平等に見て、練習でいい選手を使うと一貫しているから、みんなの『練習からしっかりやろう』という気持ちも全面的に出てる。そのみんなを見てて僕もまたやらなアカン、負けてられるかって思うし、それが自分を奮い立たせてくれています」
おそらく、そうした気持ちの強さは、彼がアカデミー時代から何度も逆境から這い上がることで身につけ、かつ、今でも「大きな決断だった」と振り返る神戸移籍や、そこでぶつかったさまざまな壁、『タイトル』を手にしてきた経験によって育んできたものだ。
神戸在籍時代、大迫勇也、酒井高徳、武藤嘉紀、山口蛍らに代表される経験豊富な選手とプレーし、たくさんのことを学び取った経験は、今もしっかりと彼の中で脈打っている。
「強いチーム、結果を残し続けられる選手は、どんな時も絶対にブレない。神戸時代も悪い時ほど、あちこちから『こうした方が良くなるよね』とか『もっとこうしようよ!』みたいな声がたくさん聞こえてきたし、負けた試合の時ほどロッカールームでの会話も多かった。気持ち的な切り替えもすごくうまくて、よくない状態から這い上がるのもめちゃめちゃ早いし、リバウンドメンタリティを確実に力に変えられる。それはガンバがほんまに強い集団になっていくには絶対に必要なこと。ってか最近は、たとえば負けた後もシュンとなるんじゃなくてリカバリーで走っている時にもすでに『あそこはこうした方が良かったよね』みたいな声も結構たくさん聞かれるようになってきたので。それは今後も継続しながら、でもまだまだ僕らは強くなれると思っているんで、その高みをみんなで追い求めていきたいです」
もちろん、自分自身のプレーの『成長』にも余念がない。ケガから復帰した、同じ左サイドバックの中野伸哉の存在も刺激になっているという。
「伸哉(中野)もすごいいい選手ですが、伸哉には伸哉の、僕には僕の良さがあると思うので。同じ武器で勝負するのではなく、それぞれの武器で勝負することがチームとしてのいい味になっていくと思うし、そういった競争があるほどより強いチームになっていける。今はとにかくイェンスのサッカーを自分自身に染み込ませつつ、その中でも自分の武器をしっかり表現しながら成長を続けるだけだと思っています。今シーズンが始まって常に『ああした方がいいかな、こうした方がいいのか』と考えながらやってきて、その都度、その答えを見つけながら自分をイェンスのサッカーに適応させていくトライを続けてきた中で最近はようやく形というか、結果に表れる部分も増えてきたので、その数をまだまだ増やしていきたいです」
コツコツと積み上げてきた日々を自信に、「とにかくガンバでタイトルを獲りたい」という決意を『声』に変えて。初瀬亮が放つ唯一の存在感は今、ガンバに新たな風を吹かせ、『強いチーム』への成長を促す、大きな足掛かりとなっている。



