「キレッキレ」の中村仁郎がガンバ大阪で爆発の予感。「ただの一選手」か「中村仁郎」であり続けるか、出した答え【コラム】
ガンバ大阪アカデミー出身の中村仁郎が、期限付き移籍から復帰した。2024シーズン途中からは松本山雅FC、25シーズンはFC岐阜でプレー。「うまくいかなかった」と受け止める1年半は、若きレフティーを成長させる時間になった(取材・文:高村美砂)
●1年半の武者修行。中村仁郎が出した答え
「11人の中の、ただの一選手」でいるか。
「中村仁郎」であり続けるのか。
期限付き移籍をしていた1年半で出た答えは、後者だったという。もちろん、それは自身の課題を見ないようにするとか、単にエゴを貫き通すということでは決してない。
だが、再びガンバ大阪のユニフォームを纏う自分を想像した時に、後者でなければ勝負できないと考えた。
「松本山雅FCでの半年も、FC岐阜での1年も、正直、うまくいかなかったと受け止めています。ただ、一方で、新たな環境に身を置いて学んだこともたくさんあって、一年半前の自分に比べると成長を感じられた1年半にもなりました。
これまでいろんな人に課題だと言われてきたフィジカルとか、守備とか、戦術理解度とか、プロになって足りないと言われてきたことにフォーカスして取り組んできた中で、その部分で成長できている自分を感じられたところもありました。
でも、だからと言ってめちゃめちゃ試合に出られたわけでもないし、圧倒的な結果を残したわけでもない。だからこその『うまくいかなかった』でもあります。
じゃあ、その理由は?
と言えば、結局『11人の中のただの一選手』になっていたからだと思うんです。課題を克服することとか、チームの中でうまくやる、みたいなことばかりに気持ちがいって、『中村仁郎』で勝負することや自分のプレーに責任を持つことを忘れていた。
でもそれじゃあ、僕でなきゃいけない理由がないというか。だからこそ今年は、戦術とか役割とかチームの駒としての最低限の仕事はしながらも、もっと自分のプレーに責任を持って、自分がやるべきこと、勝負すべきプレーによりフォーカスしてやりたいなと思っています」
●恩師の言葉で払拭した迷い「J1でプレーしている選手に大差はないけど…」
そう整理したきっかけは、このオフシーズンに久しぶりに再会した恩師、森下仁志(東京ヴェルディコーチ)の言葉だったという。期限付き移籍の1年半の報告をした際にもらった『決断力』というワードは、彼の中にある迷いを払拭することに繋がった。
「仁志さん(森下)に『J1でプレーしている選手に大差はないけど、きちんと自分のすべきこと、出すべきプレーを決断できる選手が上にいける』と言われてなるほどな、と。思えば、僕はプロになって、どちらかというと試合に出たいが故に自分の足りないところに向き合い続けてきたんですけど、たとえば、自分がどれだけ守備を頑張ったとしてもそれが得意な選手には敵わないわけで…。
もちろん、そこに向き合い続けてきたからこその引き上げもそれなりにできたとは思いますけど、それが自分の武器になるわけではない。だからこそ、僕はやっぱり攻撃で勝負したい。それを軸に、自分のプレーに責任を持って、ピッチでもしっかり決断していこうと思っています」
●指揮官の言葉が中村仁郎の背中を押す
その思いがあるからか、始動から約2週間が過ぎた今も、ピッチに見る中村のプレーに迷いはない。練習でも、練習試合でも、その時々で彼が何をしたいのか、自分をどう活かそうと考えているのか、明確に伝わってくるプレーも多い。岐阜時代、シーズン途中から就任した石丸清隆監督との出会いを通した『学び』も力になっているという。
「石丸さんには、プレーの考え方のところを大きく変えてもらいました。どう仕掛けるのか、効率よくゴールに向かう方法は何かをロジックに教えてもらったというか。自分の中で頭打ちになっていたように感じていたことも、ほんの少し考え方を変えるだけでプレーしやすくなると教わって、その通りの感覚も得られています」
と同時に、イェンス・ヴィッシング新監督以下、コーチングスタッフに常日頃から「お前は、いいものを持っている。ミスをしてもいいから仕掛け続けろ」と伝えられていることも、彼の背中を押すのだろう。中村の言葉を借りれば「クオリティの高いチームメイトのおかげで気持ちよくサッカーができている」のも大きい。
●ガンバ大阪での日々は「すごく楽しいです」
「期限付き移籍をしていた1年半は、チームスタイルもあって、正直、なかなかボールに触れないことも多かったです。試合に出ても、自分に巡ってくるチャンスは1回あれば『今日は、チャンスが来たな』と言えるような感じで、なかなかボールを触れなかった。
それに対して、ガンバでは沖縄キャンプにくる前の大阪での練習の時点で、その1年半を上回ったと言っても過言ではないくらいボールを触れました(笑)。自分のタイミングで動き出せば、必ずパスが出てくるし、周りを見れば必ず近くに誰かがいてサポートしてくれる。
そういう意味では、ガンバという環境、チームメイトのおかげで毎日、気持ちよくサッカーができているし、すごく楽しいです。もちろん、沖縄キャンプを含め戦術のことも少しずつ入ってくる中で、それはしっかり理解しなくちゃいけないし、その中での役割ということも頭に置いてですけど、その中で自分がどうプレーするのかしっかり決断してやって行こうと思っています」
その決意は、今も彼の中で強く脈打っている。沖縄キャンプ中も、今シーズン最初の練習試合となったFC町田ゼルビア戦では、中村らしく右サイドからドリブルで持ち込み、左足でゴールネットを揺らした。あとは公式戦でその姿をどれだけ表現できるか。今シーズンの目標だという「数字を残す」姿を明確に示せるか。
チームメイトの言葉を借りれば「キレッキレ」の中村仁郎が爆発の予感を漂わせている。



