確信した「来る」 金星生んだ技術“凝縮”ボレー…原点はカナリア軍団
中村敬斗の1年4か月ぶりゴールで同点に
あの日の自分に捧げたゴールだった。日本代表(FIFAランク19位)は10月14日、東京スタジアムで行われたブラジル代表(同6位)戦で3-2の大逆転勝利。日本代表MF中村敬斗は歴史的一勝をお膳立てする同点弾を挙げた。フランスのスタッド・ランスで2年間同僚だったMF伊東純也からのクロスを仕留め昨年6月以来の約1年4か月ぶりゴール。青色のユニフォームを着て、セレソンを倒したこの日は中村の脳裏に刻み込まれることとなった。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞)
【実際の様子】「日本人が大好きです」を掲げたブラジル人サポーター
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信じて待っていた。ブラジルに2点を先行されるも、MF南野拓実のゴールで1点差。そのわずか10分後だった。「来る」。伊東がボールを持った瞬間、確信した。飛んできたクロスをダイレクトでボレーシュート。「ふかさないように打った」。手前でバウンドしたボールは勢いそのまま相手に当たってサイドネットを揺らした。
「伊東選手が持った時にアイコンタクトというか、距離は結構あったけど、ランスで2年間一緒にやってきたのでわかっていた。正直。めちゃくちゃいい球がきた。僕も結構スピードに乗った状態で入ったので難しかったですけど点が取れて良かったです」
原点はブラジルだった。幼き頃からカナリア色のユニフォームに憧れた。高校2年生で三菱養和SCからガンバ大阪に入団したのも当時率いていた監督がブラジル人のレヴィー・クルピ氏だったから。17歳ながらキャンプでブラジル人FWと同部屋になってもポルトガル語で会話。何より、幼少期からサッカーをする理由の1つとして、常にブラジルがあった。サッカーだけでなく音楽も愛し、独特なドリブルのリズムも影響を受けた。だからこそ対戦前からこの一戦に懸ける思いが違った。
待ち望んだピッチ。今夏は2部に降格したスタッド・ランスから移籍を望み、約2か月チームから離脱した。長く、手探りで歩き続けた道。「精神的なところは浮き沈みがあった」。最終的に移籍は実現せず、フランス2部で「違いは毎試合見せなきゃいけない」と再び立ち上がった。9月のアメリカ遠征は招集されず。復帰後のリーグで4試合2ゴール2アシスト、出場293分間で圧倒的な数字を残して戻ってきた舞台だった。
悔しさも夢も全てぶつけた。思いをゴールで体現できるのが中村の持ち味。だからこそ国際Aマッチ20試合で9得点できた。これまで1度も勝利したことがなかったブラジル相手に14戦目にして大金星。この一戦で得た経験と信頼を8か月後、世界相手に見せつけてくれるはずだ。



