【G大阪に苦杯で5連勝ストップの浦和。固定メンバーで上がった完成度と連戦の壁(1)】「レッズに対しては持たれている状態の方がいい」と宇佐美。主力の疲労とガンバの戦術にすくわれた足元
開幕4戦未勝利の苦しいスタートが嘘のように、4〜5月にかけて9年ぶりの5連勝という快進撃を見せた浦和レッズ。14試合終了時点で勝点25の2位に浮上。首位・鹿島アントラーズをあと一歩で捉えそうなところまで来ていた。
■【画像】徐々にメンバーの最適解が見えてきているが……「浦和レッズの最新先発メンバー布陣」■
最大の要因は昨年9月からチーム作りを進めていたマチェイ・スコルジャ監督の”最適解”が見つかったことだろう。連勝がスタートした4月13日の町田ゼルビア戦以降、浦和の攻撃陣は松尾佑介が1トップに陣取り、2列目に金子拓郎、渡邊凌磨、マテウス・サヴィオが並ぶ形が続いていた。彼らが日替わりでゴールを奪い、チームを勝利へと導いてきた。それは非常に大きなポイントだったのだ。
改めて連勝街道を驀進した5戦を見返すと、4月16日の京都サンガ戦のようなミッドウイークのゲームも組み込まれ、日程的には厳しかったが、彼らは本拠地から一度も動く必要がなかった。町田戦を東京・国立競技場で戦った後、浦和は全ての試合をホーム・埼玉スタジアムで消化した。となれば、疲労や消耗を最小限にとどめられる。そのアドバンテージを生かし、連動性と流動性を引き上げ、完成度を一気に高めることができたのだ。
5月に入ってからボランチのサミュエル・グスタフソンが負傷離脱。3日の東京ヴェルディ戦から松本泰志が穴を埋める形になったが、圧倒的走力を誇る背番号6らしいダイナミズムがチームを活性化。新たなエッセンスももたらされた。守備陣の5人も西川周作中心にガッチリ固まっており、「今のメンバー構成なら崩れることはない」と指揮官も絶大な信頼を寄せていたはずだ。
■「持たれている状態が続いたけど……」
ところが、大型連戦ラストの6日のガンバ大阪戦はその通りにはいかなかった。
スタメンはヴェルディ戦と同じ松本がボランチに入ったイレブンだったが、開始早々の5分に絶対的守護神・西川がアクシデントに見舞われ、牲川歩見との交代を余儀なくされたのだ。
牲川もいいGKだが、経験値や統率力という部分でどうしても西川には劣る。そこが不安視されたが、前半は守備の綻びは生じることはなかった。彼らはガンバの食野亮太郎や満田誠の決定機を一丸となって阻止。失点を許さなかった。
ただ、攻撃の方はなかなかギアが上がらなかった。ガンバが序盤はハイプレスを仕掛けてきたものの、浦和攻撃陣の個人能力の高さを感じるや否や、すぐさまミドルブロックを引いてブロックを作る戦術へと転換。ダニエル・ポヤトス監督の機転の利いたマネージメントが奏功していたからだ。
「持たれている状態が続いたけど、レッズに対してはそっちの方がいいかなという感じはあった。僕らが持って『どう崩すか』を考えている間にカウンターから失点して、その後は後ろを固められて最終的に負けているみたいな展開がずっと続いていたので」と宇佐美貴史も語っていたが、ガンバは守って一刺しようと虎視眈々と狙っていたのだろう。
それを後半8分に形にされてしまう。相手左サイドの食野亮太郎からファーにクロスが入った瞬間、山下諒也が飛び込んできて、長沼洋一が対応したはずだったが、マークしきれずに決められてしまったのだ。
「失点シーンは僕のポジショニングが悪かったですね。ちょっと陣形が崩れた時にやられるという典型的なパターンだったかな」と長沼自身も反省しきりだったが、この時間帯になるとチーム全体に疲労感が見え隠れしていた。やはり短期間の6試合を同じ守備陣でしのぐのは難しいということだろう。
■ぶつかった2つの壁
失点後、スコルジャ監督は中島翔哉や関根貴大、荻原拓也ら持ち駒を次々と投入したが、主力組が並んでいるときに比べると連動性や流動性は低下する。中島がエリア内で持ち込んでマテウス・サヴィオがウチに行った後半24分の決定機もあったが、それを仕留められず、最後までガンバに守り切られた。最終的に0-1で敗れ、連勝がストップしてしまったのだ。
これで順位を1つ落とし、首位・鹿島との差も6に広がったが、浦和としてはガンバの臨機応変な戦い方と連戦による疲労という2つの壁にぶつかったということだろう。
西川の動向も不透明で、今後も不安はあるが、「我々がやらなければならないのは、しっかり顔を上げて日曜日の試合(アルビレックス新潟戦)に向けて準備すること」という指揮官の言葉通り、すぐに切り替えて前進しなければならないのだ。
(取材・文/元川悦子)



