「代表には戻れない」ガンバ大阪、満田誠は厳しい現実を誰よりも理解している。「課題なのかな…」いま思うことは【コラム】
明治安田J1リーグ第11節が20日に各地で行われ、ガンバ大阪は敵地で横浜FCと対戦し、1-1のドロー。ガンバは昨季を4位で終えたが、今シーズンはここまで4勝2分5敗と負け越している。2月にサンフレッチェ広島から期限付きで加入した満田誠も、暫定では無得点。苦しむトップ下は、課題を明確に見据える。(取材・文:元川悦子)
●「自分でもビックリする」一瞬で奪ったゴール
2025シーズンのJ1第10節終了時点で4勝1分5敗の勝ち点「13」と、13位に沈んでいたガンバ大阪。昨季4位に躍進した名門は今季、連勝がまだ1回だけで、思うような結果が得られていない。
重苦しいムードを払拭すべく、20日の第11節・横浜FC戦では何とか白星がほしかった。アウェイ・ニッパツ三ツ沢球技場に集まった9,697人の観衆のうち半数以上を占めたガンバサポーターのためにも、選手たちは奮起する必要があった。
ダニエル・ポヤトス監督は、12日の前節・名古屋グランパス戦とほぼ同じ陣容でゲームに入った。
この日の横浜市内は想像以上の強風が吹き荒れ、両者ともに難しい戦いを強いられた。こうした中、環境を熟知する横浜FCは長いボールを多用し、リズムを作る。そして開始7分、リスタートの流れからンドカ・ボニフェイスがヘディング弾で先制点をゲット。ガンバは早々にビハインドを背負うことになった。
それでも彼らは一瞬のスキを見逃さなかった。15分、相手フリーキックをキャッチした一森純がすぐさま前線にロングフィードを蹴り出し、次の瞬間、山下諒也が浮き球のシュートを放つ。これがGKの頭上を越え、瞬く間に同点に追いつくことに成功したのだ。
「純君のキックが素晴らしかった。あとはトラップして決めるだけでした。シュートは純君がキャッチした瞬間から行こうと思った。自分でもビックリするくらい冷静でしたね」と背番号17をつけるドリブラーは古巣相手のテクニカルゴールに胸を張ったが、ガンバとしてはこの1点に救われる形になった。
というのも、そこからの彼らは得点チャンスをほとんど作れなかったからだ。
●無得点続く満田誠「今日に限って言うと…」
トップ下に陣取った満田誠もシュートを放ったのは29分の強引なミドルだけ。前半のシュート数はこの2本にとどまり、後半も満田からイッサム・ジェバリにスルーパスが通ってフィニッシュに至った67分の1本だけだった。
横浜FCも決め切れず、終わってみれば1−1のドローだったのだが、ガンバとしてはシュート3本というのは納得いくはずがない。相手の10本よりはるかに少なかったこともあり、攻撃のキーマン・満田も不完全燃焼感を色濃く感じたことだろう。
「今日に限って言うと、もうちょっとチーム全体でシュートに行ける回数っていうのを増やしていかないと得点は入らないと思う。後ろの選手がしっかりと守ってくれている分、前の選手がどれだけ形を作ってゴールを決め切るかが大事になってくる。それを増やしていかないといけないと感じました」と背番号51は反省の弁を口にした。
この1ポイントを上積みし、ガンバは12位と順位を1つ上げた。が、依然として黒星先行という状況だ。2月末にサンフレッチェ広島から電撃加入した彼も、ここまで無得点と苦しい状況が続いている。
広島での苦境を打破すべく、覚悟を持って新天地に赴いたのに、物事は思惑通りに進んでいない。そのあたりは本人も複雑な思いがあるはずだ。
●「それだけじゃダメ」サンフレッチェ広島から決意の移籍
「昨年から今年にかけての意気込みは強かったし、『より結果にこだわっていこう』とシーズン前から思っていました。でも広島ではなかなかチャンスをもらえなかった。
正直、難しさはありましたし、移籍の決断も悩みましたけど、『何が一番成長につながるか』を考えた時に、やっぱり試合に出ることが一番だと。それでガンバに移籍したんです。その後、試合に絡めるようになりましたけど、それだけじゃダメ。もっと結果にこだわっていかなきゃいけないと思っています」
彼は6日の柏レイソル戦後にも神妙な面持ちで語っていたが、その後の公式戦でも数字がついてこない。もちろん今回の横浜FC戦含めて満田自身、打開策を探ろうと懸命に取り組んでいるし、ハードワークは凄まじいものがある。
横浜へ視察に訪れたサッカー日本代表の森保一監督も「満田は攻撃のアクセントとしてはいい起点になっていたし、守から攻のカウンターの部分では勢いを持って前へ出ていくという良さは出ていた」と前向きに評していたほどだ。
それでもトップ下である以上、ゴール・アシストという目に見える結果を残さない限り、満足もできないし、周囲からも評価されない。本人もその厳しい現実を誰よりもよく分かっている。
●「それを出さない限りは代表には戻れない」
「自分のポジション上、結果や数字が求められるので、それを出さない限りは代表には戻れない。そこを出しつつ、プレーのクオリティを上げていけば、自ずとそこに近づけるのかなという気がします。
だからこそ、まずは数字や結果にこだわっていくことが大事。今日みたいな展開でもイッサムや(ファン・)アラーノたち攻撃陣との距離感をよくして、攻撃にかける枚数を増やしながらやっていければいいと思います」と満田もやるべきことを明確に見据えていた。
幸いにして、ガンバには遠藤保仁、明神智和というワールドカップ経験のあるコーチがいる。広島時代も昨季引退したばかりの青山敏弘コーチらがアドバイスを与えてくれたが、遠藤・明神両コーチとの出会いによって、満田はさまざまな気づきがあるようだ。
「ヤットさんは試合中に上から見ているので、主にポジショニングの部分を言ってくれます。『相手がこう来るなら、こう取ればもっといい動きができる』といったことを言ってくれるので、自分のプラスになっています。ミョウさんは練習中に近くで指示をしてくれる。貴重な経験をしてきた人たちの話を聞きながら、よりよい最適解を見つけていければいいですね」と彼は言う。
フットボーラーというのは、もがき続けることでしか正解を見出せないもの。それは目下、戦列を離れている先輩・宇佐美貴史も同様だろう。宇佐美も遠くない時期にピッチに戻ってくる見通しで、満田との共存も実現するはずだ。
2人が息の合った連係連動を見せてくれれば、ガンバの攻撃は必ず活性化する。そんな明るい未来を信じて、今は目の前の苦境を乗り越えていくしかない。
「自分のよさを出しながらゴール前に入っていくところが大事になってくると思うので、そこをどうやっていくのかですね。自分のエゴが出すぎてもよくないので、チームのバランス見ながら、フィニッシャーになれるポジションや場所にいることが今の自分の課題なのかなと思います」
こう話す背番号「51」の冷静な判断力と高度な決定力に期待したいものである。
(取材・文:元川悦子)



