【川崎の元分析官・二階堂悠氏が語るJ1第2節(2)】FW・MFで4人を入れ替えたG大阪が攻守で改善見せ初勝利。ボランチのかみ合わせ&ジェバリ起用がチームに好影響もたらす
2024年シーズンまでの8年間にわたって川崎フロンターレで分析コーチを務めた二階堂悠氏。チームの7冠に貢献した二階堂氏は現在、次なる挑戦を前にしているが、フリーの立場で2025年J1リーグ第2節について語った。
■【スタメン比較図】開幕・C大阪戦から第2節・福岡戦に4人変更……「ガンバ大阪、2試合分の先発メンバー布陣図」■
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2月22日、23日に行われたJ1リーグ第2節。2戦目で今季初勝利を飾ったチームの一つが、アビスパ福岡をホームに迎えたガンバ大阪だ。開幕戦ではセレッソ大阪を相手に奥抜侃志と名和田我空という2人の新加入選手を先発入りさせるなどしていたが、2-5で大敗。
仕切り直しとなるこの試合では、ワントップにイッサム・ジェバリを置き、2列目に右から岸本武流、宇佐美貴史、倉田秋とし、ダブルボランチはネタ・ラヴィと美藤倫のコンビとしている。MFとFWの6人のうち4人が開幕戦から入れ替わった。
「倉田と美藤はもらったチャンスを手にしようと、個人としての動きはよかったと思います。ただ、チームとしては前線から相手の攻撃を限定できないシーンが多かったことで、福岡に押されるような展開となりました」
また、福岡が最終ラインから対角に蹴るボールを用いていたことも押し込まれる要因になっていたという。「それでも、C大阪戦のように早い時間帯に失点しなかったことは、流れを完全に渡さないうえで重要だったと思います。中谷進之介や福岡将太が相手のクロスなどに粘り強く対応していて、去年の硬い守備を感じさせるような場面も出てきました」という。
■ジェバリ起用の効果
攻撃面では左サイドでポジティブな面も映ったという。
「ボールを持った際、倉田が中に入り、左サイドバックの黒川圭介が駆け上がり、そこに美藤倫や宇佐美貴史が絡んでいった。開幕戦よりもスムーズさが見られるようになっていたと思います」
そして、センターフォワードの位置にイッサム・ジェバリが入った影響も大きかった。
「宇佐美貴史がFWに入ると“ゼロトップ”のような形で流動的に動くスタイルとなりますが、ジェバリが入るともう少し分かりやすくなります。技術はありながらもターゲットになりやすいですし、潰れ役もこなせますから、目標として見えやすくなっていて、それが現時点でのチームでは戦いやすいのかなと思いました」
倉田が決めた2得点は、そのジェバリの影響があった。1点目は黒川の精度の高いクロスからジェバリが飛び込んで、そのこぼれに倉田が反応。2点目はコーナーキックの流れで右サイドから入れたクロスをアビスパ福岡がはね返し、その流れを回収した倉田が見事なシュートで得点に結びつけたもの。そのはね返した場面で、ジェバリにアビスパ福岡の2人が寄せていった。
「直接絡んだわけではありませんが、相手の警戒を引き付ける効果もあった」と二階堂氏は見ている。
■美藤倫の起用でボランチのかみ合わせも改善
ボランチのかみ合わせも、開幕戦より良くなっていた。
「セレッソ大阪戦での鈴木徳真とネタ・ラヴィのコンビでは、どちらも後ろ寄りになっていました。昨年、G大阪の中盤で活躍したダワンはもっと前に行く場面も見られましたし、その効果は大きかった。アビスパ福岡戦での美藤倫とネタ・ラヴィの組み合わせでは、美藤がより前に行く姿勢が見られて、昨年により近い形になっていたように見えます」
前半15分に美藤がペナルティエリア内に侵入し、倒されてPKかと思われた場面はその一例で、「PKは獲得できませんでしたが、ボランチがあそこまで来るのは相手としてはいやです。体が大きくて前に侵入できるのは彼にとって武器。まだ粗削りなところはありますが、期待したい存在ですよね」と話す。
試合は2-1でガンバ大阪が制した。
(語り:二階堂悠)
(「その3」へ続く)
【にかいどう・ゆう】 1984年5月17日生まれ。宮城県出身。筑波大学大学院卒業後にメキシコ留学を経て、杭州緑城(中国)のコーチに就任。2014年からモンテディオ山形のコーチ、2017年から川崎フロンターレのコーチを務めた。川崎ではクラブの国内7冠達成に寄与し、24年シーズンを持って同職を退任した。