「ゴール前でパスを出すつもりはない」ガンバからベルギーに旅立った21歳日本人FWがいきなり爆発!「あれはデカかった」と明かす“決意と本音”【現地発】
冬の加入ながら早くも3ゴール・1アシストと出色の出来
1月、ガンバ大阪からウェステルローに移籍した坂本一彩(21歳)は、早くも3ゴール・1アシストとベルギーリーグで勢いに乗っている。昨季の最終節で2ゴールを決めて、Jリーグでシーズン二桁ゴールを達成した伸び盛りは、1月19日のアントワープ戦で早くもスタメンで抜擢され、ベルギーメディアから高い評価を受けるプレーを披露。続くヘンク戦はベンチスタートとなったが、巧みなステップワークで左からのクロスをボレーで合わせて、ベルギーリーグ初ゴールを記録した。
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ヘンク戦のゴールを「あれはデカかった」と坂本は振り返る。この試合を1-2で落としたウェステルローは12月1日のヘント戦以降、2分け8敗と大不振にあえいでいた。しかしヘンク戦の追い上げ弾は坂本にとってはレギュラー奪取のキッカケに、チームにとっては暗闇から脱する契機となり、続くコルトレイク戦からウェステルローは2勝1分けと調子を取り戻す。この間、坂本のスタッツは2ゴール・1アシストとチームの復調に大きく貢献した。
しかし2月22日、ウェステルローと坂本はシャルルロワの前に沈黙し、1-3で完敗した。 「相手にボールを持たれる時間が長かったので、自分たちのやりたいサッカーがなかなかできなかった。球際のところでボールを失ったり、デュエルのところは今日の試合をやってみて、まだまだ足りないと感じました。チームとしても個人としてもやりたいことができなかった日だったと思います」
アントワープ戦でストライカーを務めた坂本はヘンク戦以降、トップ下を主戦場にしている。シャルルロワ戦ではチームが守勢に立たされるなか、前線にボールが届くことはほとんどなく、ビルドアップでボールに触っても相手のフィジカルに弾き飛ばされた。1-2で迎えた68分から2トップにしてパワープレーにチームが徹すると、坂本は攻めではトップ下、守りではボランチのエリアを行き来した。
「(4-3-3から4-2-4にシステム変更し)途中からストライカーが2枚、前にいる状態だったから、僕はなんにも言われてないんですが、『俺がここに入らないといけなんだろうな』という感じでやってました」
悔しさをにじませ、反省の弁ばかりが出てくるシャルルロワ戦後の坂本。しかし1月上旬、日本を発って海を越えてきた欧州ルーキーにとって、3ゴール・1アシストというスタッツは上々のスタートだ。
「そうですね。良い形で入ることができました。最初は勢いでやれちゃう部分もあると思うんですが、チームの状況が難しくなってきたりすると、自分も難しくなってくるだろうなと思っています。そういったときにどう自分と向き合ってやっていくか、(それが肝心)だと思います」
昨季のJ1が終わってオフに入っていたこと、ベルギーに来てもビザが下りるまでチームの全体練習に合流できなかったことから、デビューマッチのアントワープ戦はコンディション面でもチームとの連携面でも不安を残しながらのプレーだった。
「だけど、その前に練習試合を1試合やらせてもらったので、なんとかやることができました。その練習試合で1点決めたことがスタメンで出られた要因だと思います」
3人に囲まれながら、冷静にラストパスを出したコルトレイク戦(2-1)のアシスト。ショートカウンターから一気に相手ゴールを射抜いたセルクル・ブルージュ戦(1-1)のゴール。この2試合の間で叩き出したスタンダール戦(4-2)のゴールはとりわけトリッキーだった。
0-1のビハインドで迎えた17分、MFグリフィン・ヨーが、右斜め前にいたストライカー、マティヤ・フリガンにスルーパスを出した。しかし、その間隙を突いた坂本が“チームメイトのパスをインターセプト”してから相手ペナルティーエリア内に潜り込む結果となり、相手DFの股を抜くゴールで貴重な同点弾を決めた。
“あのインターセプト”は狙っていたのか?
「いや、狙ってないです。18番の選手(グリフィン・ヨー)の選手が9番の選手(マティヤ・フリガン)にパスを出すのは分かっていたから、自分は飛んで流そうとしたところに、たまたま足に当たって目の前にこぼれた。そうしたらちょうど相手とゴールポストの端に線で結ばれたようなラインが見えた。『あ、これはトゥ・キックで蹴ったら入るな』と思ってトゥ・キックでシュートしたら入りました」
すでに「自分のここが通用している」と感じるところもあるのではないか――。そう訊くと彼は「うーん」と唸ってから語った。
「『ベルギーのピッチが良ければもっとできるんだろうな』と思いながらやってますけれど、それを言ってしまうと言い訳になる。でも逆にこのピッチの上でやれるようになったら、どこでもやれますので。今、一番大事にやっているところはデュエル、フィジカルのところです」
ベルギーでの生活は「言葉を除けば、全然困ってないです」
坂本がJ1でブレイクしたのは昨季のこと。そんな若獅子をガンバ大阪は当然「手放したくない」と慰留したが、「どうしてもヨーロッパでプレーしたい」という坂本の思いは強く、「最後は快く送り出してくれました。そのことは本当に良かったです」と感謝の念を惜しまない。
隣国オランダでオールラウンダーのMF兼ウインガーとして異彩を放つ佐野航大は、ファジアーノ岡山時代のチームメイトであり、親友だ。
「オランダに行ってさっそく活躍していたので、『すごいなあ。自分も追いつきたい』という思いがありました。『でもまずは、日本で結果を出さないといけない』という思いでJリーグで頑張ってきました。航大とはけっこう、連絡を取ってます。近々、食事すると思います」
ベルギーでの生活は「言葉を除けば、全然困ってないです」と順調のよう。競技面でも幸先良い滑り出しだが、「こっちはあまりパスを出しくれない。前の選手は本当に自分のためにサッカーをやっているようなものなので。自分もゴール前でパスを出すつもりはないです」とそこは自身の意識改革も必要と感じている。
はたして欧州デビューシーズンで、坂本がどれだけの数字を残してくれるのか、楽しみなところだが、本人はこう語る。
「今年はあんまり目標を決めてないです。まずはチームを1部に残すこと。2部に落ちちゃったら選手としての価値も下がりますし。自分のゴールで残留に貢献できたらな、とすごく思いますね」
レギュラーシーズンは残り3試合と大詰めを迎える。27節終了時点でウェステルローは16チーム中13位。このままだと4チームで行なわれる『プレーダウン』に残留を懸けることになる。「ウェステルローは冬の市場で良い補強をした」という評価を受けていることもあり、21歳の青年の両肩に早くも重い使命が課せられたのかもしれない。