白熱のJ1優勝争い、残り試合を“展望” 町田は有利で広島&神戸は不利? 鹿島とG大阪にも可能性 

2024年シーズンのJ1優勝争いが、いよいよ佳境を迎えようとしている。リーグ戦は延期・未消化試合分を除いて残り8節。果たしてJリーグ31年目のシーズンを制するのは、どのクラブになるのだろうか。上位5チームの“今後のスケジュール”を見ながら、優勝争いを展望したい。

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第30節終了時点で首位に立っているのは、今季クラブ初のJ1舞台を戦っているFC町田ゼルビア(勝点58:17勝7分け6敗、得失点差+24)だ。堅守速攻の戦術を徹底させた戦いぶりで勝点を積み重ねた後、7月下旬から8月にかけて1勝3分け2敗と停滞して首位の座を明け渡したが、前節の3-0勝利で首位返り咲きを果たしている。今季の残り8試合は、札幌(H:ホーム)、広島(A:アウェー)、川崎(H)、柏(A)、鳥栖(A)、FC東京(H)、京都(H)、鹿島(A)。9月28日の広島戦が大一番となるが、夏の移籍期間で戦力アップに成功して絶好調の京都、独特の雰囲気のあるカシマスタジアムでの鹿島戦を控えるラスト2試合は厄介だ。

その分、それ以外の5試合をしっかりと勝ち切れるか。一時の勢いはなく、2回り目で対策を練られることは間違いないが、天皇杯、ルヴァン杯も敗退済みでリーグ戦のみに集中できることは大きな利点だ。残りの対戦8チームとの今季リーグ戦の対戦成績は、広島に敗れたのみの7勝1敗である点も精神的なプラスに働く。苦虫を噛み潰す他クラブのサポーターをよそに、「史上初のJ1初昇格初優勝」へ向けて、スケジュール的には明らかに有利だ。

2位にはサンフレッチェ広島(勝点56:15勝11分け4敗、得失点差+25)がつけている。7月14日の第23節から破竹の7連勝を飾って一時は首位奪取を果たしたが、9月に入ってルヴァン杯、天皇杯と立て続けに敗退し、リーグ戦(対鹿島)でも2-2のドロー。夏加入の新戦力が働きながらもチーム全体としての疲れが心配だ。そして今季リーグ戦の残り8試合は、横浜FM(H)、町田(H)、磐田(A)、湘南(A)、京都(H)、浦和(A)、札幌(H)、G大阪(A)。

町田も含めて残り試合8チームとの今季リーグ戦の対戦成績は5勝2分け1敗で負けは横浜FM戦のみだが、最終節で戦うG大阪には天皇杯も含めて今年は1分け1敗。開幕前に行われた新スタジアムのこけら落としの一戦でも敗れており、印象は良くない。そしてそれ以上に大きな懸念材料がアジアの舞台での戦い。リーグ戦8試合を戦う間にACL2の1次リーグ6試合(9月19日に第1節)が組まれており、特にリーグ戦残りの3試合はACL2でシドニー、フィリピンへの移動をこなしながらも中2日という超過密スケジュールとなる。日程的には非常に厳しく、ハッキリと二兎を追うべきではないかもしれない。

3位は前年王者のヴィッセル神戸(勝点55:16勝7分け7敗、得失点差+19)だ。開幕から粘り強く戦い、8月11日から4勝1分けと調子を上げて首位の背中も捉えている。今季リーグ戦の残り8試合は、新潟(A)、浦和(H)、京都(A)、FC東京(H)、磐田(H)、東京V(A)、柏(A)、湘南(H)。上位5チームとの直接対決はないが、残り8チームとの今季対戦成績は4勝1分け3敗と相性は良くなく、新潟、京都、東京Vなど夏場以降に調子を上げているチームや新体制となった浦和にトンネルを抜けたFC東京、そして最後の2試合は残留争いに絡みそうな2チームとの対戦であり、決して楽ではない。

さらに広島同様にアジア舞台の戦いが入る上、より厳しい相手との対戦になるACLEでの1次リーグ6試合(9月17日に第1節)が組まれている。モチベーション及び気運的には、広島が「新スタジアム初年度でのリーグ優勝」という命題がある一方で、昨季リーグ初優勝を飾った神戸は「Jリーグ<ACL」であるとも言える。昨季は横浜FMがACLの過密日程の中で勝点をこぼした間に一気に勝点を積み上げた神戸だが、今季は逆の立場になり得る。天皇杯も勝ち残っている中、改めて吉田孝行監督のチームマネジメント力が問われることになりそうだ。

4位には鹿島アントラーズ(勝点49:14勝7分け8敗、得失点差+10)がつける。4月から6月にかけて11戦負けなしで優勝争いに加わったが、直近4試合は2分け2敗と失速している点が気がかりだ。ただ、消化試合が1試合少なく、今季リーグ戦の残りは、柏(H)、湘南(A)、新潟(A)、福岡(H)、川崎(A)、名古屋(H)、京都(A)、C大阪(A)、町田(H)の9試合。

相性の悪い川崎戦、調子を上げる京都との対戦を残しているが、全体的には“楽な相手”が多いと言え、その9チームとの今季リーグ戦対戦成績も5勝2分け2敗と悪くない。天皇杯は準々決勝に勝ち上がっているが、町田同様にACLには不参加で、町田が初体験となる優勝の重圧に苦しみ、広島と神戸がタイトスケジュールの中で失速すれば、最終節で町田との直接対決を残す鹿島がドラマを起こす可能性はある。そのためにも、本拠地最終決戦まで優勝の可能性を残しておくことが必要になる。

5位のガンバ大阪(勝点48:13勝9分け7敗、得失点差+9)も諦めるのはまだ早い。一時9戦負けなしで首位に肉薄しながら6月30日の町田との直接対決で今季最高の立ち上がりを見せながら退場者を出して逆転負け。そして直近6試合を4分け2敗と足踏み状態となった。それでも鹿島同様に消化試合が1試合少なく、ACLにも不参加だ。その上で今季の残り9試合は、京都(A)、東京V(H)、C大阪(A)、札幌(H)、川崎(A)、名古屋(H)、磐田(A)、新潟(A)、広島(H)で、その9チームとの今季リーグ戦対戦成績は5勝3分け1敗だ。

まずは白星なしのトンネルを抜け出すこと。最初の3試合で上位3チームに勝点6差以内に縮めることができれば一気に逆転優勝の目が復活する。鹿島同様、最終節に本拠地での上位対決を残しており、もし可能性を残した状態で迎えることができれば“何か”を起こせるはずだ。

今季の優勝争いはこの5チームに絞られたと言っていい。リーグ戦の対戦カード以上にACLの戦いが影響することになりそうだが、果たしてどうなるか。終盤戦になれば、残留争いの渦中にあるチームが優勝争いのチームを“食う”ことはよくあり、最後の最後まで混戦状態が続く可能性は十分にある。ここからがチームの真価を問われる本当の戦いであり、ここからが間違いなく、面白い。(文・三和直樹)

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