【トップ5に絞られたか。ラスト10節を巡る「J1優勝争い」展望(1)】首位・町田と猛追する広島の終盤の分かれ目……“新加入タレント力”で払しょくしたい“町田慣れ”、広島の負けにくさ
J1リーグも残すところ10節。周回レースに例えるなら第四コーナーから最後の直線に差し掛かったところだ。
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ここまで快進撃のFC町田ゼルビアが、勝点54で首位を走っているものの、ミヒャエル・スキッベ監督率いるサンフレッチェ広島が、6連勝で勝点2差まで迫ってきている。さらに昨シーズンの王者であるヴィッセル神戸が勝ち点49で続き、鹿島アントラーズとガンバ大阪が首位と勝点6差で追いかける。
監督交代から4勝1敗と巻き返している横浜F・マリノスにも、奇跡的な逆転優勝の可能性は残されているが、ACLエリートが挟まる過密日程をこなしながら、同じペースで勝点3を積み上げても、上位が総崩れすることが条件になってきそうだ。それを前置きして、トップ5の優勝争いとして、今回の話を進めることにしたい。
首位の町田は昨シーズンにJ2で優勝したメンバーを土台としながら、J1で躍進を果たすべく、大型補強を行った。それは単にJ1クラスのタレントをかき集めるのではなく、黒田剛監督と金明輝コーチが、二人三脚で作り上げてきた町田にフィットできる特長の選手をうまく揃えたのが高く評価できるところだ。
J2の清水エスパルスから獲得し、韓国代表にも招集された大型FWオ・セフン、あまり出番のなかった浦和レッズから期限付き移籍で加入したMF柴戸海などが象徴的だ。鹿島から来たDF昌子源もしかりで、実力を発揮できていなかった個性的なタレントを集めて、戦う集団に仕上げる様は「水滸伝」の梁山泊を想起させる。
■ライバル勢に見られる”町田慣れ”
ただ、二巡目にして少しパフォーマンスに停滞が見られる理由としては夏場の疲れもあるかもしれないが、プレー強度が目に見えて落ちている訳ではない。走行距離やスプリント回数は相変わらず、相手を上回っている。
それよりも、J1のライバルが”町田慣れ”してきているのは大きいだろう。夏に補強した白崎凌兵、杉岡大暉、相馬勇紀、中山雄太といったハイスペックな個の力を持つ選手たちの真価が問われてくるのもここからだが、本来の能力からすれば、昨シーズンJ2最優秀選手のエリキなどの奮起も期待したい。
昨年の神戸もそうだが、初優勝の正念場はやはりラスト10、ラスト5といったところにあり、ここで踏み外してしまえば、優勝どころか、ACL圏外に落ちてしまう危険もある。そうした意味でも、昨年の昇格メンバーも含めた総合力に注目したい。
現在の勢いを見る限り、広島が日本代表の森保一監督に率いられた2015シーズン以来、5度目のリーグ優勝を果たす可能性はかなり高い。筆者も優勝候補の一角に挙げてはいたが、未知数な要素として見ていたのは新スタジアムで、完全なホームアドバンテージを取るには時間が必要と考えていたこと。現在はホームでもアウェーでも強いという状況なので、そこの不安要素が完全に取り除かれたかは不明だが、ゲームの主導権を握りながら、勝ちきれなかった前半戦から、流れが変わってきている。
■広島の中盤に加わったタレント
攻守の基本的な強度が高い上に、プレー効率が良い。トランジションから相手の守備より良い位置を取り、オフの選手が前向きなランニングを繰り出して、ボールを持つ選手の時間とスペースを生み出す。その1つ1つを見ればシンプルだが、無駄なロストも少なく、仮にボールを失っても全員が責任を持ってカバーするという意識が徹底されているので、非常に負けにくい。
そこにトルガイ・アルスラン、川辺駿という明確な仕事のできる中盤のタレントが加わり、守備を安定させながら、どこからでもゴールが狙えるチームになっている。前半戦でエース的な活躍を見せてきた大橋祐紀(ブラックバーン)の穴は埋まっていないが、加藤陸次樹の奮起に加えて、そうこうするうちにピエロス・ソティリウやマルコス・ジュニオールが戦線に戻ってくれば、終盤のブースターになりうる。
(取材・文/河治良幸)
(後編へつづく)