【JリーグCS~平畠啓史の視点】遠藤保仁、サンフレ劇場は関係各所から表彰されるべき! SOCCER DIGEST Web 12月8日(火)12時44分配信

遠藤のひと言が多くのガンバファンに“埼玉行き”を促した。

 今季のJ1リーグは、最終節を迎えた時点で広島にも浦和にも年間1位の可能性があり、FC東京かもしくはガンバ大阪に年間3位、チャンピオンシップ(以下CS)準決勝進出の可能性があった。ということは、この時点で、CSの対戦そして会場も決まっていないことになる。

「浦和レッズ、ぶっ叩きます!」

FC東京が引き分け、ガンバ大阪が勝利し、ガンバ大阪が年間順位3位でCS進出を決定した後、万博でのホーム最終戦セレモニーで、キャプテンの遠藤保仁は高らかにそう宣言した。湧き上がるような歓声と鳴りやまぬ拍手がスタジアムを包む。

「浦和さんは強いですけど、僕たちも精いっぱい頑張ります」のような表向きリスペクトしていますし、波風立たないでしょ的発言ではないところがさすがの遠藤保仁。プロであり、エンターテインメントの世界。もっと、こういうおもしろさがあっていいと思う。

そして、この発言の影響の大きさを感じたのが、準決勝が行なわれた埼玉スタジアムでのこと。試合前にサポーターの話を聞くと、あの遠藤の発言を聞いて、埼玉スタジアムに行くことを決めた人が少なくなかったのだ。

鉄道会社、航空会社の関係各所から表彰されてもいいくらいだ。90分間ゲームを動かし続ける男は、試合以外の部分でも人の心と身体を動かしている。

サンフレ劇場は広島が抱える慢性的な問題を緩和させる一助に。

 広島のホームゲームで勝利後、サポータースタンドの前でいつしか行われるようになったサンフレ劇場。サポーターの前に何人かの選手が集まり、パフォーマンスを行ない、サポーターを喜ばせ、時にすべりつつも、ともに勝利を分かち合うのが恒例行事になった。

ただ喜び合っているだけに見えるこの行事は、エディオンスタジアム広島が抱える問題と密接にリンクしている。というのも都心部から少し距離があるスタジアム。渋滞、駐車場不足は慢性的な問題となっている。

そして、公共交通機関となるとバスとアストラムライン。試合後の混雑は相当なもの。そこで、サンフレ劇場なのである。試合後の帰宅の客が、一斉に帰ることのないように、渋滞が少しでも緩和されるようにとの思いが、サンフレ劇場には込められているのだ。

この劇場だってバス会社や市や県から表彰されてもなにも問題はないだろう。

ところで、CS第2戦が行なわれた広島ではあるが、宿泊施設の不足も深刻だ。サポーター、マスコミ、この試合にかかわる人たちからホテルが取れないという言葉を数多く聞いた。

最近は海外からの観光客が多く、研究学会の会合のようなものも週末にはよく開かれる。それらは、前もって予定が立てられているので、ホテルの確保などが 容易かもしれないが、CSはというと広島の対戦相手が決まるのが1週間前。すでにその時には、満室のホテルが少なくなく、予約が取れない事態になってい る。

漫画喫茶で夜を明かす記者もいると聞いた。試合方式など賛否両論のCSではあるが、交通、宿泊を含め日程のことも見直すべき点は多い。

ただ、第2戦エディオンスタジアム広島の雰囲気は素晴らしかった。浅野拓磨のドリブルに、スタンドの観衆は大いに沸いた。こういう試合、こういう雰囲気 が各地のリーグ戦で1試合でも多く見ることができたら、Jリーグはさらに盛り上がっていくはず。物議を醸したCSだったが、そうした可能性を感じ取ること はできた。

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