中村敬斗のウイングバック成功は「必然」 5年前から積み重ねた経験と恩師・宮本会長との秘話【現地発コラム】

W杯アジア2次予選でミャンマーと対戦

日本代表は6月6日、2026年北中米共催ワールドカップ(W杯)アジア2次予選で敵地でのミャンマー戦に臨み、5-0で勝利を収めた。MF中村敬斗(スタッド・ランス)は2ゴールで国際Aマッチ9試合8ゴールという圧巻の決定力を発揮。日本代表では初めて挑戦したウイングバックで躍動した姿を見せた。5年前、当時の宮本恒靖監督(現JFA会長)に起用されたポジションでの真価を示した。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞)

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見るべき価値ある“敬斗ショー”だった。断続的な雨が上がり、湿度80%を超える蒸し暑い気候のなか、次世代を担う23歳が攻撃的3バックの主人公。前半17分、ハーフウェーライン付近でボールを受けたMF鎌田大地が左前方のスペースへボールを展開すると、走り込んだ中村がペナルティーエリア内まで切り込んで右足シュートを決めた。“敬斗ゾーン”からの先制ゴール。さらに4-0とリードする試合終了間際に芸術的なミドルでゴールを奪い、ダメを押した。

「1点目は旗手選手が持った時にスペースがあり、鎌田選手にパスが行った時はスプリントして前に入っていく形で受けた時はフリーだった。得意な形だったので振り抜けた。2点目もうまく自分の前にこぼれてきて、あれも自分の中では得意な形なので自信を持って決められて良かった」

国際Aマッチ9戦8発という驚異的な数字はもちろん、この日は「3-4-2-1」システムの左ウイングバックでワイドに張って1対1を仕掛けて一気にチャンスを作り上げるという役割で本当に伸び伸びとプレーしていた。森保監督も「ギラギラいいですね。やはりボールに向かっていく姿勢がいい。ウイングバックはそう簡単なポジションじゃない。守備ではより長い距離を戻ったり、タスクがある中で、彼は攻撃のギラギラ感とタスクをしっかりとこなす真摯さが出ていた」とべた褒めだった。

今から5年前の2019年、G大阪は宮本監督のもとで「3-5-2」にトライしていた。中村が担っていたのはその左ウイングバック。監督はJFA会長となり、ミャンマーの地で愛弟子の活躍を見守った。「高い位置を取ってウイングと同じようなポジションで切れ味鋭いのは持ち味だと思う。あの頃よりもだいぶ上下できるようになったし、守備もできるようになって素晴らしいと思う」と成長に目を見張った。

中村のプロ1年目はレビー・クルピ監督に才能を見出されて活躍していたが、夏に解任後就任した宮本監督のもとでは当時のU-23チーム行きを告げられたこともあった。フィジカル面、走力、精神面を指摘されてとにかく鍛えられた。だが、どんな場所でも与えられた環境で上を目指し続けるのが中村。MF堂安律と比較され、「結果が足りない」と言い放たれたこともあった。

それでも、宮本監督も中村の2時間の個人居残りに毎日、毎日付き合った。足りないと言われた守備、苦手だったヘディングも元日本代表キャプテンDFに付きっ切りで指導してもらった。この日前半39分にニアを突くヘディングシュートでの決定機があったが、これが決まっていればハットトリックだった。宮本会長は「一緒に練習していたので。あいつもさっき(決めなきゃと)言っていました」と笑った。

アジアカップでは壁にぶち当たった。MF三笘薫が負傷で先発起用での期待を寄せられた。3試合に出場して1ゴールという数字自体は悪くないものの、ブロックを敷いてくる相手に対しての仕掛けに苦しんだ。

「アジア杯で感じた縦突破の壁みたいなところはフランスでこの半年凄く意識して自分の中では成長していたと思うので、今日は出せて良かった。フランスリーグは1対1、個の強いリーグだと思う。普段、対人の強い相手とできていて自分の中でも成長を感じられたので嬉しい」

壁の数だけ這い上がるのが中村。17歳でプロ入りしたが、決して順風満帆ではなかった。オランダ1部トゥウェンテでも試合に出ることができない期間に腐らず、やるべきことに向き合ってきた。ベルギー1部シント=トロイデンで思うようなシーズンを過ごせなくても、欧州で踏ん張り続けた。アジア杯の壁も、ウイングバックの壁も、越えるためにある。

今日のプレーで本人は決して満足しない。課題を見つけ、クリアするために這い上がる。中村敬斗とはそれほど泥臭くたくましい男なのだ。

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