パリ五輪最終予選メンバー23人を予想 欧州組は招集厳しく…SB、ボランチ、攻撃陣が激戦区【コラム】
ゴールを決めた田中聡はどうなる?
4月のパリ五輪アジア最終予選(AFC・U-23アジアカップ=カタール)を控えた大岩剛監督率いるU-23日本代表の3月シリーズが終わった。ご存知の通り、日本はU-23マリ代表に1-3で逆転負けを喫したものの、U-23ウクライナには2-0で勝利。指揮官も「今回、厳しい2試合をやることで、もう1回、『甘くないんだよ』という気持ちになったと思う」と改めて気を引き締めた。
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グループリーグから中国、UAE、韓国という強豪揃いの組に入り、そこで2位以内を死守して、最終的に3位以内に入らなければならないというのは非常にハードルの高いテーマだが、ここまで2年間の強化の成果を大舞台で発揮するしかないだろう。
初戦・中国戦が16日で、現地での暑熱対策などを視野に入れてメンバー発表は4月4日になった。大岩監督や羽田憲司コーチらを軸に最終絞り込み作業が行われる模様だが、欧州組招集交渉のリミットは発表の直前に設定されているという。
現状では、昨年9月の1次予選に参戦していた鈴木唯人(ブレンビー)、斉藤光毅・三戸舜介(ともにスパルタ・ロッテルダム)、小田裕太郎(ハーツ)の招集は困難と言われる。それ以外の欧州組では、チェイス・アンリ(シュツットガルト)、福井大智(ポルティモネンセ)、福田師王(ボルシアMG)の3人に招集可能性があるものの、インターナショナルマッチデー(IMD)の3月シリーズに呼ばれなかったことを考えると、彼らの滑り込みは考えにくい。今回の2連戦に挑んだ陣容が最終予選のベースになるはずだ。
GKは1次予選に参戦した野澤大志ブランドン(FC東京)、小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)とジェフユナイテッド千葉で定位置を確保している藤田和輝という、3月シリーズの3枚で決まりだろう。
藤田和輝はマリ、ウクライナ戦での出番こそなかったものの、Jリーグのパフォーマンスは安定。いざという時に使える状態だ。試合勘の不足している野澤のパフォーマンスが少し気がかりではあるが、1~2月のアジアカップ(カタール)に参戦した経験は貴重。それを還元することが強く求められる。
センターバック(CB)についても、西尾隆矢(セレッソ大阪)、鈴木海音(ジュビロ磐田)、馬場晴也(北海道コンサドーレ札幌)、高井幸大(川崎フロンターレ)の4人でほぼ決まりではないか。高井はマリ戦でやや不安定なプレーを見せてしまったが、ロングボールを多用してくるアジア相手を想定すると、190センチ超の高さはやはり必要。今後の伸びしろを含めて、最終予選は経験させたいところだ。
少し選考が難しいのはサイドバック(SB)。右はA代表招集経験のある半田陸(ガンバ大阪)と左もこなせる内野貴史(デュッセルドルフ)がこれまでの常連組だったが、ここへきて187センチの長身・関根大輝(柏レイソル)が台頭。ウクライナ戦で2点目をお膳立てしたこともあり、「空中戦に強いこの選手が必要」という見方が強まっているのだ。
もし関根を加えた場合には、内野を左兼任ということで残し、左を本職とするバングーナガンデ佳史扶(FC東京)と大畑歩夢(浦和)のいずれかを落とすという選択肢もあるが、キックの精度に秀でたバングーナガンデ、ビルドアップ能力の高い大畑も捨てがたい。内野を外すという選択肢もあるが、果たして指揮官はどうするのか。目下、大畑の選外が確率的に一番高そうだ。
ボランチも激戦区。リーダー格の山本理仁・藤田譲瑠チマ(ともにシント=トロイデン)と松木玖生(FC東京)は不動だとして、もう1枚を川﨑颯太(京都サンガF.C.)にするのか、それともウクライナ戦でゴールという結果を残した田中聡(湘南ベルマーレ)にするかは悩みどころ。これまでの流れを踏襲するならもちろん川﨑だが、田中の今季の活躍ぶりと昨季1年間をベルギーで過ごした国際経験値は捨てがたい。キャプテンシーなどを含めて総合判断すると川﨑に分がありそうだが、大岩監督の判断の行方が気になる。
グループリーグ突破の鍵となる攻撃陣の陣容は?
2列目アタッカー陣に関しては、1次予選経験者の平河悠(FC町田ゼルビア)、山田楓喜(東京ヴェルディ)の選出は確実。昨年9~10月のアジア大会(中国)で大きな存在感を示した佐藤恵允(ブレーメン)も決まりだろう。残された枠が2つだとすると、それを争うのが荒木遼太郎(FC東京)、植中朝日(横浜F・マリノス)、小見洋太(アルビレックス新潟)の3人となる。
植中はFWやトップ下、インサイドハーフ(IH)など前線のあらゆるポジションをこなせる万能性が強みで、献身的に攻守両面に関われる選手ということで、一歩リードといった印象だ。あとは2年ぶりの代表復帰でインパクトを残したインサイド専任の荒木を取るか、流れを変えられるドリブラーの小見を取るかという選択になる。荒木のフィニッシュの迫力は捨てがたいし、小見も苦しい時にスピードと泥臭い突破で局面を打開してくれる分、チームにとっては心強い。
となれば、FWを1枚減らすという考え方もある。FWは細谷真大(柏)、藤尾翔太(町田)の主軸2人に加え、今季好調の染野唯月(東京V)の滑り込みがあり得ると見られたが、荒木と小見の両方を入れるなら、FWを2人にするしかない。実際、1次予選も細谷・藤尾の2人で挑んでおり、大岩監督が同じ構成にしないとも限らない。マルチ型の植中がいれば、ターゲットマンタイプを複数呼ぶ必要もなくなる。となれば、染野にとっては苦しい状況。最終的には選外という扱いになる可能性が高そうだ。
万が一、鈴木唯人や斉藤光毅、三戸らが呼べるとなると、こうしたアタッカー陣のメンバー構成は大きく変わってくるだろうが、現状では以下のような23人で挑むことになりそうだ。彼らで8大会連続五輪切符を手にできるのか。今こそパリ世代の底力が問われる。
■GK
野澤、藤田、小久保
■CB
西尾、鈴木、馬場、高井
■SB
半田、内野、関根、バングーナガンデ
■MF
山本、藤田、松木、川﨑、平河、山田、佐藤、植中、荒木、小見
■FW
細谷、藤尾
[著者プロフィール]
元川悦子(もとかわ・えつこ)/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。