“所属元”G大阪の逆転阻んだ町田GK谷晃生「あんなに時間を稼いで負けられないですよね」FK決めた宇佐美も称賛

[2.24 J1第1節 町田 1-1 G大阪 Gスタ]

期限付き移籍中という複雑な立場の中、開幕戦から異例の古巣対決に挑んだGK谷晃生がFC町田ゼルビアの一員としてガンバ大阪に立ちはだかった。終盤は守勢の中で時間稼ぎが続き、「終始申し訳ない気持ちはあるけど僕もやるしかなかった。遅延行為という形になってしまって、あとでガンバの選手には謝りました」と苦笑いも見せたが、旧知の選手たちとの対決に「特別な90分だった」と感慨を口にした。

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23歳の谷はG大阪の育成組織で育ち、2021年夏の東京五輪全試合に出場した世代屈指のGK。昨季はベルギー2部のデンデルで武者修行していたが、リーグ戦1試合の出場にとどまり、今季は出番を求めてJ1初年度の町田に期限付き移籍した。通常、同カテゴリの移籍では当該クラブ対戦の出場不可条項が組まれるが、今年1月の移籍発表時には同条項の存在は明記されておらず、開幕戦のピッチに立つことができた。

そんな谷がこの日、G大阪のチャンスを次々と阻んだ。まずは前半18分、背後に抜け出したFW坂本一彩との1対1を冷静なアプローチで止め、同33分にもスルーパスに反応した坂本のシュートをセーブ。後半はやや攻め込まれる場面が続いたが、9分にはMF岸本武流の攻め上がりにプレッシャーをかけ、シュートを枠外に外させると、終盤に数的不利で受けた猛攻もことごとく防いだ。

中でも際立っていたのはクロスや横からのボールに対するキャッチングの正確さ。谷は「キャッチの判断は日頃から意識して取り組んでいる。またキャッチするかのところと、ラストプレーでは弾くシーンもあったけど、弾く位置も相手が来ているのを見て判断することを日頃から意識している」と振り返ったが、同世代のGK鈴木彩艶が日本代表のアジア杯で注目を浴びた「判断力」の部分でも優れた能力を見せつけた。

もっとも谷は「結果的に失点したので悔しい気持ちがある」と厳しく総括した。唯一の失点は後半38分、FW宇佐美貴史の直接FKを沈められたもの。「あれは正直、宇佐美くんを褒めるしかない。やられてしまったなという感じ」と苦笑いを浮かべつつ、対応としては「1本決めてくるのはさすが」と称えるしかなかったが、引き分けという結果に真摯に向き合った。

それでも最終盤の奮闘は見事だった。「あんなに時間を稼いで負けられないですよね。それだけでした」と苦笑いも浮かべたが、その際にはG大阪サポーターからもブーイングを受けていた。「何ともいえない威圧感というか、敵に回すと嫌だなと感じた」。そんなプレッシャーの中でも最後まで集中力を欠くことはなかった。

そんな谷にはFKを決めた宇佐美も「オーラがあるし、余裕もある。あの年齢にしては恐ろしいほど落ち着いているキーパー。途中から時間をうまく稼ぎながらパフォーマンス的にやることで、もう今日は勝ち点1でいいよと伝える意図もあったと思う。あの年齢のわりにそういうこともできるキーパー」と称賛を惜しまず。古巣相手という難しい試合に挑んだ23歳にとって、あらためて存在感を示す一戦となった。

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