G大阪 DF藤春の退団を正式発表 涙の別れ、あす3日神戸戦がラストゲーム
G大阪は2日、元日本代表DF藤春広輝(35)の今季限りでの退団を正式に発表した。現役続行を希望している。
リーグ最終戦となるあす3日の神戸戦(パナスタ)へ調整後、取材に応じた背番号4は、あふれる思いをこらえ切れなかった。冒頭では「いつかは来るっていうのは覚悟していたので、そんなに落ち込んだりはなかったですし、他のチームに行って挑戦できるのも自分としては楽しみ」と努めて前を向いていたが、在籍した13年間の足跡を「最初の頃と比べると、年齢を重ねていって、人としても変われたかなって……」と振り返っている途中、涙がとめどなくあふれた。
2分弱の沈黙と流れた涙は、それだけ濃い13年間だったことを意味していた。酸いも甘いも、全てかみ分けてきた。2年目の12年にリーグ戦全試合フル出場を果たすも、J2降格。それなら、とばかりに13年にはJ2のフィールドプレーヤーで唯一のリーグ戦全試合フル出場を、カテゴリーをまたいで達成し、1年でのJ1復帰に大きく貢献した。14年には出番を減らしたが、3冠獲得に貢献。G大阪の左サイドバックを長年、守り抜いてきた。
ガンバでユニホームを脱ぐという選択肢もなくはなかった。だが、もっとサッカーを続けたい思いが勝った。「最近、ここ1年半ぐらいほとんど試合にも出ていなかったので、まだまだやりたいっていう思いの方が強かった」。そう感じる根拠もある。近年はDF黒川圭介(26)にポジションを奪われ出番が激減していたが、黒川が累積警告で出場停止のため今年8月6日の川崎戦(等々力)で今季初出場すると、フル出場で衰え知らずの体力と技術を披露。「走れるかなと心配しましたけど、体は嘘をつかなかった。この13年やってきたことで、90分間走れた」と、燃え尽きてはいないからこそ、現役続行を目指すことに決めた。
入団から20年途中まで、チームの先輩として背中を追いかけ続けたMF遠藤保仁(現磐田)への思いも強い。「ヤットさんがいなかったら、ここまで活躍できたのかなと思う。ヤットさんはそこまで(口で)言わないですけど、背中で語るタイプ。監督が代わっても、ヤットさんはのみ込む速さもある。そういうのをずっと見てきて、自分だけがやりたいようにやるんじゃなくて、監督に言われたことをまずはやってみて、そこから(自分の色を出す)というのはヤットさんから聞いていた(ことが基礎になっている)」と話し、サッカー観を変えた恩人であることも明かした。
「若いときは“自分が自分が”みたいな感じだったけど、今はいろんな人とすぐ仲良くなれる。そういう人間性も、ガンバに来られなかったらもしかしたら変われていなかったかもしれなかった。ガンバに来られて本当に良かったと思っています」とクラブへの深い感謝はあるが、だからこそ、遠藤より先にユニホームを脱ぐわけにはいかない。「自分が納得いって、やめるのが一番。もう走れなくなったと、そう思えた瞬間、やめようかなと思う」。裏を返せば、まだ走れる自信があるということ。青と黒の魂は胸の内に秘めつつ、新しい挑戦が始まる。