ティアモ枚方の“1年生監督”元G大阪・二川孝広監督が明かした指揮官の重圧「負けると本当に苦しい」
JFLは26日、最終節が行われ、FCティアモ枚方はホームでソニー仙台に2―0と勝利し、2023年シーズンを終えた。昨季限りで枚方で現役引退し、今季からチームを率いた二川孝広監督(43)は8勝10分け10敗、12位(15チーム中)の成績に、試合後のセレモニーで「今シーズンは勝ちきれず、苦しい試合も多く、監督として責任を感じています」とスタンドのファン、サポーターに頭を下げた。
現役時代はG大阪などで活躍し、天才的なパスセンスで2005年のリーグ優勝などに貢献した二川監督。昨年11月16日に現役引退を発表すると、その4日後には監督就任が発表された。当初は不安の中でスタートしたという。「わからないことばかり。勉強です。自分が気づかないことも多くて。特に守備のこと。選手時代も、もちろん考えて(プレーして)きたけど、チーム全体の守備はあまり考えていなかった。主に攻撃のこと、どうやってチャンスを作るか、という感じだったので。本当に助けてもらいました」。監督経験のある大槻紘士ヘッドコーチや、G大阪でともにプレーした寺田紳一コーチ、植田龍仁朗コーチ、枚方でともにプレーした武田博行GKコーチのサポートを受け、指導者として第一歩を踏み出した。
チームは開幕3連勝と好スタートを切ったが、続いて5戦勝ちなしと苦しむ時期もあった。「攻撃的に、ゴール前にどんどん人が入っていくようなサッカーがしたかった。でも、技術的な問題などもある。基本は前からプレッシャーをかけて、ショートカウンターということをメーンにした。ただシンプルに裏に蹴られた時にリズムを作れない試合や、ボールを持たされてミスして失点もあった」。毎試合、試行錯誤の日々。勝てば充実感に満たされたが、負けた際の苦しみは、選手時代に味わったことがないものだったという。
「勝ったときは楽しいですよ。でも負けたときは本当に苦しい。勝たないと全然楽しくない。選手時代とは重みが違う。監督って、こんなに責任を感じるんだと。選手、応援してくれている人、すべてを背負っているんだと思いました」。敗れた時にのしかかる責任の重さに苦しむ日々。さらにJFLにも地域リーグ降格の可能性があり、その重圧にもさらされた。それでも選手達の奮闘、コーチ陣のサポートもあって残留を決めると、シーズン最終戦は4位のソニー仙台に快勝する好ゲームで締めくくった。
監督としての楽しさについては「楽しい、まではいっていない。監督って、楽しいものなのかな。一部で勝ち続ける監督は楽しいのかも。考えることが多くて、勝つために毎試合考えて、苦しいことが多かった。特に今年は」と語った二川監督。現役時代は無口なキャラクターで通したが、監督となればそうはいかない。試合前の指示に加え、この日のようにサポーターへのあいさつなどもあり「話すことが仕事ですよ」と苦笑いする。しかしサッカー人として、貴重な経験を積み重ねていることは確かだ。
今季を通じて、まだまだ監督として未熟な部分も痛感したという。「マネージメントもそうだし、シーズン通して(選手の)モチベーションを高くするのも大変。あとは試合中の解決策をもっと出せればよかった」と改善点は多い。それでも「チームを勝たせたい。頑張って、上を目指している選手もいる中で、自分も応えたい、という責任感もある。サポーター、スポンサーの方々もいる。その人達に支えてもらっているので」。学びの多い“監督1年目”を終え、さらなる成長を見据えていた。(金川 誉)