北川信行の蹴球ノート 被枠内シュート数少ない神戸、横浜Mは危険なエリアへの侵入防ぐ…データが示す戦いぶり
佳境を迎えているサッカーのJ1は、代表活動などに伴う約3週間の中断期間を間もなく終え、20日に再開する。今季は各チームとも29試合を戦い、残りは5試合。17勝7分け5敗の勝ち点58で首位を走るヴィッセル神戸が悲願の初優勝を成し遂げるのか、勝ち点4差の2位につける昨季王者の横浜Fマリノスが巻き返すのか。3位争いも熾烈(しれつ)で、勝ち点5差の中に浦和レッズ(勝ち点50)、鹿島アントラーズ(同47)、サンフレッチェ広島(同47)、名古屋グランパス(同47)、セレッソ大阪(同45)、アビスパ福岡(同45)の6チームがひしめく。ここまでの各チームのデータを、おなじみの国際サッカー連盟(FIFA)が中心となって設立したサッカーの国際研究機関「CIES Football Observatory」で調べてみた。
■枠内シュート数など6項目で調査
CIESの公式サイトには「Performance Stats」のページがあり、欧州5大リーグをはじめ、各国・地域リーグに所属する各チームのパフォーマンスデータを簡単に見ることができる。日本はJ1とJ2が対象となっている。
1試合当たりの
①「Shots on target」=枠内シュート数
②「Passes in the opponent third」=アタッキングサード(3分割したフィールドの相手ゴールに近いエリア)でのパス成功数
③「Ball possession」=ボール保持率
④「Accurate passes」=パス成功率
⑤「Shots on target conceded」=枠内シュートを打たれた数
⑥「Passes conceded in the own third」=ディフェンシブサード(3分割したフィールドの味方ゴールに近いエリア)でパスを通された数
-の6項目について、調べることができる。
■横浜M、川崎とスタイル異なる名古屋
枠内シュート数は5・7本のサンフレッチェ広島がトップ。横浜Fマリノスが5・0本で続く。ユニークなのは、3位にJ1で14位の北海道コンサドーレ札幌(4・7本)、4位に同13位のガンバ大阪(4・3本)がつけている点。北海道コンサドーレ札幌は得点数もリーグ3位の50得点をマークしているのでまだしも分かりやすいが、ガンバ大阪はリーグ9位の37得点。サンフレッチェ広島もリーグ10位の36得点しか挙げておらず、両チームとも枠内シュート数の多さが得点に結びついていない。
首位のヴィッセル神戸と17位の湘南ベルマーレが4・2本の5位タイで並んでいるのもおもしろい。しかし、ヴィッセル神戸がリーグ2位の51得点を挙げているのに対し、湘南ベルマーレは35点。ここに、決定力の差が表れている気がする。
アタッキングサードでのパス成功数は横浜Fマリノスの47・2本がトップで、2位は川崎フロンターレの46・5本。両チームとも相手陣に押し込む攻撃を指向しているといえる。最下位は名古屋グランパスの28・7本で、両チームとのスタイルの違いがはっきりと表れている。
ボール保持率も同じような傾向があるが、トップはアルビレックス新潟の57・0%。2位が横浜Fマリノスの56・4%、3位が川崎フロンターレの55・9%となっている。この項目の最下位も42・5%の名古屋グランパスだ。
パス成功率のトップ3も変わらず、アルビレックス新潟(88・0%)、川崎フロンターレ(85・9%)、横浜Fマリノス(85・8%)。ワーストは京都サンガの76・6%で、ヴィッセル神戸も79・0%と意外と低い部類に入る。ヴィッセル神戸のパス成功率が高くないのは、ロングパスを多く用いているのが理由ではないかと思う。
■攻守のバランス取れた神戸
守備の項目となる枠内シュートを打たれた数が最も少ないのは、鹿島アントラーズの2・5本。次に少ないのが、ヴィッセル神戸が3・0本となっている。ヴィッセル神戸は失点数も浦和レッズの22点に次ぐ25点と少ない。決定力のある攻撃と、ゴール枠内に打たせない守備で、攻守のバランスを取っていることが分かる。
一方で、横浜Fマリノスは4・5本と4番目に多い。得点はトップの52得点で、失点は8番目に少ない36失点。打ち合いを制して上位につけている。
ただ、横浜Fマリノスのディフェンシブサードでパスを通された数は、サンフレッチェ広島の30・3本に次いで、2番目に少ない32・1本。危険なエリアでボールを回すのは許しておらず、それが枠内シュートを打たれた数が多いにもかかわらず、失点が増えていない理由のように思える。
ディフェンシブサードでパスを通された数でも、スタイルが異なる名古屋グランパスがワーストの45・3本。しかし、枠内シュートを打たれた数は3・5本と6番目に少ない。失点数も30失点と少なく、ゴール前でDF陣がよくしのいでいることが分かる。
ちなみに、6項目のJ2のトップチームを挙げると、①枠内シュート数=ジュビロ磐田、清水エスパルス(ともに5・4本)②アタッキングサードでのパス成功数=ロアッソ熊本(51・5本)③ボール保持率=清水エスパルス(57・9%)④パス成功率=ロアッソ熊本(86・7%)⑤枠内シュートを打たれた数=ジュビロ磐田、清水エスパルス、ブラウブリッツ秋田(ともに2・9本)⑥ディフェンシブサードでパスを通された数=清水エスパルス(27・4本)となっている。