J1神戸で今夏に台頭 FW川崎修平 “だんじり魂”持つ若きアタッカー サッカーができる喜びを力に
サッカー・J1で、今シーズン、堂々の首位争いを展開している、ヴィッセル神戸。大迫勇也選手や武藤嘉紀選手ら、日本代表や世界で活躍してきたベテラン勢の活躍が目立ちますが、今夏、期待の若手が台頭してきました。その1人が、FW川崎修平選手(※「崎」=たつさき)です。ヴィッセル悲願のJ1制覇に向けて攻撃陣にさらなる厚みを加えている若き逸材が、ラジオ番組のインタビューに応じ、今の思いなどを語りました。
【写真】ラジオ収録でははにかむ様子も ヴィッセル期待の若きアタッカー・川崎修平選手 アカデミー時代を過ごしたガンバ大阪でトップ昇格、プロデビューを果たし、2021年夏からは海を渡ってポルトガルでのプレーに挑戦。ポルティモネンセSCでは「2回けがして、1年くらい何もできなかった」と、サッカーで勝負できない悔しさも味わった川崎選手ですが、再起をかけて今シーズンからクリムゾンレッドのユニフォームに袖を通しています。
ガンバ時代は期待の1人として注目されていたなか、ポルトガルではサッカー人生での大きな挫折も経験しましたが、「あっちで1年半やってきて、自分で、ひとりでどうにかしなければいけないという生活のなかで、けっこう成長したかなと思います」といいます。チームで一緒だった日本代表GK中村航輔選手の存在も大きかったようですが、異国でコミュニケーションをとる苦労も経験したことで、キャラクターにも変化はあったと語ります。
「日本に帰って、よくしゃべるようになりましたね。もともと僕のことを知ってくれている人からは『変わった』と言われますし。たぶん(海外生活が)さびしかったんだろうなと、思いますね(笑)。(人見知りも)だいぶ今はなくなりました」
今年1月、ヴィッセルの新体制会見が行われた日に、ポルティモネンセSCからの期限付き移籍加入が、永井秀樹スポーツダイレクターから電撃的に発表されました。チームでは即戦力として期待されつつ、大迫選手や武藤選手という絶対的な存在が攻撃陣にいたこともあり、しばらくはカップ戦でのプレーが続きます。それでも、春の段階で吉田孝行監督の口から、期待する若手選手の1人として川崎選手の名前が挙がっていました。
指揮官からの抜擢に応えたのは、7月12日の天皇杯3回戦、ジュビロ磐田との一戦。大迫選手と武藤選手が控えに回った以外は主力が勢ぞろいしたなか、先発に名を連ねると、前半に鋭い動き出しから左足でゴール。後半にもコーナーキックのこぼれ球を押し込み、チームの勝利に貢献しました。
7月7日の第20節アルビレックス新潟戦、7月22日の第16節延期分・川崎フロンターレ戦で途中出場するなど、J1でも徐々に出番を得れば、8月30日の天皇杯準々決勝・ロアッソ熊本戦で先発した際は、試合中にはオフサイド判定でゴールは取り消されたものの、前半のみの出場ながら存在感を発揮。すると、その内容を評価されて、J1第26節京都サンガF.C.戦で、ヴィッセル加入後初めてスターティングメンバーの座を勝ち取ります。
「試合前に、『これを勝てば首位になれる』ということもあって、僕もスタメンだったので、なんとしてもチームに貢献したい、チームとして絶対に勝って終わりたいなと思って、試合に入りました」
待望の瞬間は前半の18分に訪れました。左の汰木康也選手からのクロスが相手DFにあたってこぼれたところを、川崎選手がすぐに反応し、左足を一閃。これが見事に決まり、試合を振り出しに戻したヴィッセルは、後半のジェアン・パトリッキ選手の決勝点で、2-1と逆転勝利。背番号21は、この試合でクラブのマン・オブ・ザ・マッチにも選ばれました。
「やっとJ1でゴールを決めてホッとしたというのはあります。試合が終わってから改めて(ゴールシーンを)見ましたが、あそこで足を振るというのは、日ごろ言われていたので、それが出たなと思います。リーグ2試合に出ていたなか、今回3試合目で(初)スタメンだったので、リーグ戦では点を取りたいという気持ちは強かったです。ルヴァン、天皇杯では(計)9試合も出ているのに2点しか決められていなかったので、結果にこだわってやっていることもあり、今回の試合で結果を出したいという思いはありました」
また、川崎選手にとって、指揮官の起用に応えられたということも、今後に向けて大きな一歩になったようです。「(監督からは)攻撃で違いを出せとずっと言われていましたし、ここ最近、練習でもやっと自分の特長を出せてこれたなと思っていたので。京都戦でああいうゴールを決めることができて、だんだんよくなっているなと自分のなかでも感じています」と、自身にとっても手ごたえをつかんだ試合になりました。
「だんじりの町」大阪府岸和田市出身、「お父さんがだんじりの法被を作っていて、だんじりに直接関わる仕事をしているので、僕もそういう仕事場とかを見たりして(育って)きた」という川崎選手は、幼稚園のときからサッカーを始め、今に至っています。
「僕は楽しいからずっとやっているというだけであって、本当にサッカーが楽しくなくなったらサッカーを辞めようという思いでずっとやっています。(しんどいよりも)ボールを蹴るのが楽しいなと思ってやっています」と、プロになった今でも、サッカーの楽しさにハマり続ける日々。さらに、ポルトガルでも、神戸でも、オフの日まで「たまに公園に行ってボールを蹴ってます」と、まさに“サッカー小僧”という表現がぴったりです。
そんな川崎選手がいま、課題としているのは、オフ・ザ・ボールの動き。「ボールをさわるのは楽しいのですが、逆に、ボールを持っていないときの動きは僕自身、全然(ダメ)だと思っているので。そこは、日ごろ、特に酒井高徳さんからは結構言われていて、そういうのを追求して今はやっています」と、チームリーダーの1人、酒井選手の、いわゆる「高徳塾」で薫陶を受けながら、プレースキルを伸ばしています。
プライベートでは「めっちゃきれいな街」とほれこむ港町で、神戸ライフを楽しんでいるよう。「(チームの)みんな仲良くさせてもらっていますし、それこそ、僕は後輩とつるむのが好きなので、下の子たちとけっこうごはんとか行っています」という22歳は、最近Z世代に流行中のSNS「BeReal」で楽しんでいるという話も明かしていました。
また、ちょうどこの週末は「岸和田だんじり祭」の宵宮(16日)と本宮(17日)が行われることもあり、さらに気合いも入っているよう。週末のJ1第27節サンフレッチェ広島戦では、“だんじり”魂を持つ川崎選手の活躍にも大いに注目が高まります。
初めてのラジオ出演に「なんか難しいですね……(苦笑)」とはにかんだものの、30分にわたって丁寧にインタビューに応えていた、川崎選手。「いま、順位で優勝を目指せるというところで、(齊藤)未月くんの残念なけががあったなか、未月くんのためにもというのがチームとしてあるので、残り8試合、なんとしても勝ち続けて優勝を目指して頑張っていきたい。応援よろしくお願いします!」と、サポーターにメッセージを送っていました。
さらに、プロを目指す子どもたちに向けてのアドバイスを求められた際は、「いろいろ壁にぶち当たることもあると思いますが、やっぱり楽しんでいるから(川崎選手自身が)ここまでやってこれたのはあるので、どれだけしんどくても楽しめたら、いいことがあるよと言いたいですね」と、自らの経験を踏まえながら言葉をつづっていました。 (※ラジオ関西『GOGO!ヴィッセル神戸』2023年9月11日放送回より、インタビュー収録日は9月9日)