「そんなルールは一切存在しない」ガンバ大阪監督が審判に疑問。なぜVARが介入しなかったのか
明治安田生命J1リーグ第23節、横浜F・マリノス対ガンバ大阪が12日に行われ、2-1でマリノスが勝利した。先制を許したガンバ大阪は一時同点に追いついたが、PKが決勝点となり9試合ぶりに敗れることとなった。試合後、ガンバのダニエル・ポヤトス監督は審判団に対して不満を漏らしている。
ポヤトス監督は「Jリーグにリスペクトを持っている。両チームのレベルを示す試合になったし、マリノスの勝利を祝福したい」としたうえで、「悲しいことがありました。アジアのベストなリーグであるJリーグの審判は改善しなければいけない」と苦言を呈した。
ポヤトス監督が言及したのは、後半開始から間もないPKのシーン。アンデルソン・ロペスのキックは東口順昭がセーブしたが、キック前に東口の足が前に出ていたとして、PKはやり直しに。2度目のキックをロペスが成功させ、マリノスは勝ち越しに成功した。
この場面で異議を唱えたのがガンバの選手とスタッフたち。映像を見返すと、マリノスの数人の選手がロペスが蹴る前にペナルティーエリアに入っており、ガンバは再度やり直しを求めて抗議した。ポヤトス監督は「本当にこれは妙なことが起きている」と話し、過去数試合の例を引き合いに出しつつ、「審判の意図が明らかに違う」と述べた。
「東口の数センチはすぐに入る(VARが介入する)。でも、マリノスさんの数人入ったところには入らなかった(VARが介入しなかった)。何らかの意図があるのではないか」
競技規則に則して考えると、キックが行われる前に攻撃側(マリノス)競技者がペナルティーエリア内に侵入した場合、ゴールが決まったときはPKを再び行うことになっている。一方で、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が介入できる事象は以下の通りとされている。
「ペナルティーキックを行う時のゴールキーパーやキッカーによる反則や、攻撃側または守備側の競技者がペナルティーエリアへ侵入し、ゴールポスト、クロスバー、またはゴールキーパーからボールが跳ね返った後、プレーに直接関与した場合」
競技規則に明記されているわけではないが、間接的な解釈として、この場面はVARが介入できない。つまり、競技規則上、マリノスの選手の侵入はPKのやり直しに値するが、主審がゴールを認めた以上、VARは判定に関与することはできない。言うまでもないが、1度目のやり直しは、東口がプレーに直接関与している。
「本当に妙なことが起きている事象であって、石毛が副審から言われたのは、跳ね返りの(ボールに触る)意図(的なプレー)がなければ(ペナルティーエリア内に)入ってもいいと説明されたが、そんなルールは一切存在しない」
ポヤトス監督は副審から説明があったことを明かした。文字通りに捉えれば指揮官の言っていることは正しいが、「入っていてもいい」はやや誤解を生む表現かもしれない。「入っていたとしてもVARが介入できない」と言われたのであれば競技規則を適切に運用していることになる。
ガンバ側の主張は決して間違いないが、VARのマネジメントも間違えてはいない。勝敗に影響するシーンだっただけに様々な感情が交錯することとなったが、競技規則に照らし合わせるとフェアな判定だったと言える。