遠藤保仁43歳、パフォーマンスは全盛期の「半分ぐらい」。“引退”も頭に…それでも走り続ける原動力
テレビ朝日のスポーツ番組『GET SPORTS』では、Jリーグ30周年を記念し、遠藤保仁と中村憲剛の対談を放送。
【写真を見る】40歳という節目で「移籍」を選んだ遠藤保仁と「引退」を選んだ中村憲剛
日本サッカー界を代表する2人がJリーグを語り尽くした。 テレ朝POSTでは対談の模様を全6回に分けて紹介。最終回となる今回は、遠藤が「40歳での移籍の理由」「引退についての思い」を語る。
◆「もう一回自分の力を証明したい」
中村:「40歳で2人は転機を迎えました。僕は引退。前年度に前十字」
遠藤:「ケガしていたね」
中村:「だけど、もともと40で引退は決めていたので。ヤットさんは2020年に日本人最多記録となる632試合を達成。そして、ガンバ大阪からジュビロ磐田へ期限付き移籍をしました」
2019年、左膝に大怪我を負った中村。リハビリ生活は10か月にも及ぶ壮絶なものだった。それを乗り越え、ピッチに帰ってくると復帰戦で劇的ゴール。
それでも、このシーズンを最後にファンに惜しまれながらも40歳で現役を引退。
一方、遠藤は40歳の時、20年間在籍したガンバ大阪からジュビロ磐田へ期限付き移籍。翌年には完全移籍を決断した。
中村:「40歳での移籍。今振り返ってみてどうですか?」
遠藤:「ナイスチャレンジだったと思う。それはまったく悔いなし。(ガンバでは)試合に絡めたり、絡めなかったりして、年齢を考えるとたぶんやり続けないとすべてが落ちる一方だった。自分のわがままでチャレンジしたい思いをクラブに直接伝えて、クラブも本来は不本意だったとは思いますけど、自分の気持ちを尊重してジュビロに気持ちよく行かせてもらった。若干複雑なところはありましたけど、自分の人生だし、もう一回自分の力を証明したいという思いで移籍を決断しました」
中村:「個人的にはめちゃくちゃ衝撃だったんですよ。たぶん僕だけじゃないと思います。全サッカーファンが」
遠藤:「あんまり人に言ってなかったしね」
中村:「そうだったんですね。家族には?」
遠藤:「家族は知ってた。これだけやってきたんだから好きにしたらと気持ちよく後押ししてくれた」
中村:「もうミスターガンバといっても過言ではなかったですね」
遠藤:「(ガンバで)これだけやったから気持ちよく行けたっていうのもちょっとある」
中村:「リーグ戦もタイトルも取って、ACLも取って、カップ戦も取って」
遠藤:「しかもこの年齢だし。ガンバですべて出し切ったなっていう思い」
◆追いかけられる立場から追いかける立場へ
新天地のジュビロ磐田は、遠藤をはじめ日本代表を経験したベテラン選手と若手選手が上手く融合している。 その中で遠藤は、今シーズンほとんどの試合に出場。3アシストを記録するなど、存在感を放っている。
中村:「実感として、30代の時と比べて今の自分はどうですか?」
遠藤:「パフォーマンスは半分ぐらいになってるんじゃない」
中村:「半分…」
遠藤:「ただ、昔の自分には一切しがみついていない。『30歳の時とか代表に入っていた時はこんなプレー簡単にできたのになぁ』とかは思わないようにしてます。当たり前ですもん。43で25のプレーができるかと言ったら絶対できないので、43は43なりにプレーしますって思ってる」
中村:「やっぱり若い選手にない“味”みたいなのはあるじゃないですか。僕は35を超えた時に、自分だけにしかわからない感覚みたいなものがありました。若い時にがむしゃらに一生懸命やったことで、効率よく無駄がなくなっていった。ヤットさんはどういう感覚なのかな」
遠藤:「俺は逆かも。毎回の練習で、若手よりもアピールする気持ちでやっている。今までは悪く言えば追いかけられる立場だったけど、今は追いかける立場の気持ちだから」
中村:「それは今楽しめていますか?」
遠藤:「楽しめています。この年齢で、試合に出られない選手の気持ちや試合に絡めない選手の気持ちもわかるようになったので、それが今後にもつながるなという感じで勉強しています」
◆今なお一線で活躍できる原動力
43歳という年齢を意識しながらプレーをしているという遠藤。
だが一方で近年のサッカー界は、1試合あたりの走行距離やダッシュした回数、1対1の強さなど、ハードワークがデータ化され、それが選手の評価にも繋がっている。
こうした現状について、どう考えているのか?
中村:「サッカーってボールを扱うスポーツで、正確性がすごく求められる。それに加え、ハードワークという言葉が最前列にきている時代じゃないですか。だから、今はすごく激しい動きのなかでみんながボールを扱う技術を求められている。それは実際にピッチに立って感じますか?」
遠藤:「絶対感じますよ。毎日言われるし。ものの見事にデータに出ますからね。でも別に自分のプレースタイルに合わせて特化していればそれでいいと思っている。スプリントがすごく多い人が評価されがちで、もちろん当然なんですけど、サッカーってそこだけじゃない。簡単に言ってしまえば、ゴール取ってゴール取られなければそれでいい。そこにアプローチする過程が人と違うっていう。そこを自分の中では大事にしている」
中村:「まさにそう思いますし、僕もそう思いながら40までやっていました。技術の部分は不変?」
遠藤:「そうですね。結局ボールを一番触るポジションですし、相手に怖いと思わせるプレーをしていかなきゃいけないので。ランニングでそう思わせる選手もいれば、ボールを扱って思わせる選手もいる。僕は後者のタイプなので、それで脅威を与えられればいいかなと思いながらプレーしています」
ハードワークを追い求めるのではなく、己の技術で勝負する。それが今なお一線で活躍できる原動力となっていた。
◆「グラウンドに立っていたい、引退しても」
そして最後に聞いてみた。プロ生活26年目、43歳となったサッカー選手・遠藤保仁の「今後」を――。
中村:「ヤットさんは引退が近づいている自覚はある?」
遠藤:「ありますよ」
中村:「ぶっちゃけた話、今後についてどう考えていますか?」
遠藤:「ノープランです。正直今年でやめるかもしれないし、1年後に辞めるかもしれないし、5年後までしがみついているかもしれない。それは本当に自分でもまだ決めてない。憲剛みたいに『40歳で辞める』とか自分の中で決めていないので。本当にどうなるかわからないですけど、ジュビロに入る前から今年が最後の最後の最後だと思ってずっとやっている。35~38歳ぐらいから」
中村:「そうだったんですか」
遠藤:「『最後の最後の最後だ』と思って、『やっぱりまだやる』『まだやる』って粘って嫁に話して」
中村:「奥様?」
遠藤:「嫁に『またやんの?』って言われながらここ数年きているので、近づいているのは間違いないですよ。そこを隠そうとも思わないですし。いつどうなるかわからないから、自分の力を証明しなきゃいけないっていう思いで毎年過ごしている。いずれ近いうちでしょうって自分でも思っています」
中村:「ヤットさん、指導者やるんですか?」
遠藤:「指導者やりたいなと思いますよ」
中村:「監督?」
遠藤:「監督になったら全部決められれるでしょう。オフ増やそうかな。自分も遊べるから(笑)」
中村:「そうですね。それも自由ですから」
遠藤:「連休いっぱい作っちゃおうかなとか」
中村:「休んでばかりじゃないですか(笑)」
遠藤:「休むのも大事だからね」
中村:「いい監督かもしれないですね(笑)」
遠藤:「チャンスがあればって、漠然とね。サッカーしかできないと思う。サッカーが一番楽しいから、やっぱりサッカーに関わった仕事を、とくに現場でしたいなと思います」
中村:「みなさんヤットさんの今後の話ってすごく気になると思いますよ」
遠藤:「グラウンドに立っていたい、引退しても。そう思うので、たぶんそっち系の仕事になるんじゃないかなと思います」