【番記者の視点】4連勝のG大阪“新司令塔”MF山本悠樹「スペイン人に見劣りしない」と指揮官絶賛の理由
◆明治安田生命J1リーグ▽第18節 G大阪2-1鹿島(24日・パナスタ)
【G大阪担当・金川誉】「彼は考えるスピードがずば抜けて速い。それはスペインの選手と比べても、全然見劣りしない。すべてを先読みし、認識して、実行できる選手です。彼はアンカーとか関係なく、中盤ならどこでもできる選手なのです」
これはポヤトス監督が試合前日に語った、MF山本悠樹への評価だ。その言葉通り、4連勝を飾った鹿島戦は、アンカーとして試合をコントロールした背番号29のプレーが試合の流れを引き寄せた。この試合は、それまでの3連勝に貢献したイスラエル代表MFラビがコンディション不良で欠場。山本悠が1列前のインテリオールからポジションを下げたが、彼が頭で思い描いたとおりに試合が進んでいるようにさえ見えるシーンがあった。
前半15分。DF黒川圭介の先制ゴールは、山本悠のサイドチェンジが起点だった。この直前、DFラインでボールを動かす中で、山本悠は中央でパスを引き出せそうな場面であえて受けず、右サイドへのパスを味方に指示。そうして鹿島の選手を右サイドに寄せた上で中央でパスを受け、一気に左へサイドチェンジ。鹿島のサイドハーフが中に絞ったことを確認し、相手SBに対して黒川とMF倉田が2対1を作った状況を見逃さなかった。数的有利を生かして相手DFを振り切り、MF石毛とのワンツーから右足シュートを決めた黒川の得点をお膳立てしたのが、山本悠の判断だった。
「鹿島は(中盤に)走れる選手が多い分、走らせておいたらいいかな、と思っています。まじめな選手が多いので、逆サイドにボールが行けば、必ずスライドしてくると思う。無理に中に入れるのではなく、何回も動かして走らせることができれば、(スライドは)遅れてくるはずなので」
山本悠は試合前日、鹿島戦の狙いをこう明かしていた。先制点の場面は、まさにその通りの形。チームとして狙う状況を作り出し、タイミングを逃さずに最適なプレーを選択する、という彼の特徴が存分に発揮された場面だった。山本悠自身も「苦手意識があった」という鹿島戦で、得点シーンだけでなく、攻守で存在感を発揮したこの試合は、大きな自信にもつながるはずだ。
鹿島戦の勝利、そして4連勝は2020年の10月以来、ともに約2年8か月ぶりだった。G大阪にとって、この期間はMF遠藤保仁=現磐田=の“幻影”と戦い続けた時間と言ってもいい。クラブのスタイルにまで大きく影響を与えた司令塔が20年夏にチームを離れ、チームの戦い方も定まらず、苦しみ続けた時期だった。
ポヤトス監督を迎えた今季、前半戦は最下位に低迷して苦しんだG大阪。しかし負傷などで一時戦列を離れた山本悠が5月28日の新潟戦から先発復帰し、ここから4連勝と上昇気流をつかんだ。スペイン人指揮官の下で変わりつつあるチームの中で、その存在感が際立つ大卒4年目のMF。偉大なレジェンドの後、空位だった“新司令塔”の座を、いよいよ射止めようとしている。