「日本サッカーが進むべき道を見た」元日本代表MFがペルーを4発撃破した森保ジャパンの進化に感服!「格別だった三笘&伊東の両翼」

「古橋の動き出しは間違いなく一級品」

エルサルバドルとのゲームは早々に退場者が出てしまったので、評価としては非常に難しいと感じていたので、「今日のペルー戦は良い試合になる」と期待して現地観戦しました。

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実際、ペルー代表がボール回しでポジティブな面を見せてくれました。そんな相手に対して、日本代表は最終的に4対1で勝ち切ったのですから、まさに完勝と言っていいでしょう。

ペルー戦を観戦して感じたこと、今現在の日本代表の強みとなっているポイントを自分なりに分析してみました。強みは3つあります。 ①各ポジションで競争原理が働いている ②止める・蹴るのレベル ③サイズよりスピード・インテンシティーを重要視した人選  になります。順番に考察していこうと思います。 ①各ポジションで競争原理が働いている。

これは特に前線において感じられる部分になりますが、各ポジションに色のある選手が揃ってきています。古橋亨梧選手、前田大然選手、浅野拓磨選手、上田綺世選手と所属チームでもしっかり得点を取りながら、彼らは代表戦でもゴールを決めています。

ペルー戦でも古橋選手の動き出しは間違いなく一級品。それに合わせる伊東純也選手のクロスは継続的に質が高く、衝撃にさえ感じました。ふたりの連携でチャンスも掴みましたね。古橋選手も伊東選手の出すタイミングが少し遅かったので、来ないかなと思った瞬間に伊東選手のハイスピードのピンポイントクロスが古橋選手の頭に来ました。ジャストミートはできませんでしたが、スタジアムが沸く決定機のひとつになりました。その後も伊東選手からのグラウンダーのクロスや何度もDFと GKの間へ上がっており、あと少しのところでしたね。

こうした古橋選手のプレーぶりは、過去の代表チームだったら十分なアピール要素となったでしょう。でも、現在の代表チームにあってはそれだけでは物足りないのです。途中出場の前田選手は短い時間でしっかりゴールを決めました。良い動き出しにプラスして、FWとしてゴールを決めていかないと生き残っていけないように感じます。

ウイングのポジションに目を向けると、三笘薫選手、伊東選手、堂安律選手、久保建英選手と、こちらもかなりハイレベルな競争が繰り広げられています。

それぞれ個性は異なりますが、いまや森保一監督が対戦相手によって使い分けができるほど、いずれも好プレーを連発しています。とくに「伊東・三笘」は両翼という表現がピッタリくるコンビで、ふたりの速さ、クロス、突破の質は格別です。ペルー代表は結局のところ、彼らを止める術を持ち合わせていませんでした。

中盤のボランチ/インサイドハーフのポジションもかなりの激戦です。新たに旗手怜央選手も加わって、競争は激しさが増しています。CB、サイドバックでもしっかり結果を出す選手が出てきており、誰ひとりとして安閑とはしていられない状況になっています。

「ペルー代表でさえ分かっていても止められない」

②止める・蹴るのレベル

このポイントに関しては、今日の試合を観ていてかなり上がってきているように感じました。

ボールスピードが上がったなかでもきっちり止められていましたし、パスの弾道も綺麗なものが多く、次の選手のトラップのやりやすさ、また、ダイレクトプレーに繋がりやすくなっていました。

もっと言えば荒れたボールに対しても、三笘選手のゴールに至った鎌田大地選手のトラップなど、ズレたボールをしっかり前方に収めたことでカウンターアタックを完結させました。

自陣からのビルドアップでプレッシャーを感じていない。的確に立ち位置を確保しながら、パスの強弱(伊東選手の菅原由勢選手への落とし)など強ければ全てが良いというわけではなく、受け手に意図あるボールを出す場面が格段に増えています。止める・蹴るのクオリティーの向上を存分に感じました。

③サイズよりスピード・インテンシティーを重要視した人選

日本のサッカーが進むべき道はまさにこれだ! そう思わせてくれるような今日の試合内容でした。地上戦で戦えるタイプであれば、背の高さは関係ないのではないか、と思わせてくれたのです。それはプレーインテンシティー、プレー強度の高さです。

球際での強さ、いなす技術・ぶつかり合いに怖がらないメンタリティーが、ペルーとの中盤での攻防戦で鮮明に浮かび上がってきました。南米特有の巧さにも対応していましたし、ピンチでも遠藤航選手はカラダを張り続けて、サボるという表現はいっさい出てきません。

また、三笘選手と伊東選手が繰り出す超高速カウンターにも多くの選手が付いていけるようになっています。相手DFは戻りながらの守備を余儀なくされ、準備する時間・考える時間を与えませんでした。

今日の試合は前線からのハイラインかつハイペースな守備スタイルは採用しませんでした。ただ、押し込まれたなかから奪った後のギアチェンジは、ペルー代表でさえ分かっていても止められないレベルになっていました。

これが日本サッカーが世界で勝つための方法だと感じさせてくれました。

ボール保持が全てではない。

勝つためにはいろんな方法があるんだよ。

と教えてくれましたし、これから強豪国との試合を重ねていくなかで、ボールを持たれることへのアレルギーもなくなりますし、逆に「持たせたらいいよ」のメンタリティーも備わってくる。世界と普通に渡り合いながら、ワールドカップ・ベスト4への道も切り開かれていくのではないか。そんな期待も抱かせてくれるペルー戦でした。

<了>

橋本英郎

PROFILE

はしもと・ひでお/1979年5月21日生まれ、大阪府大阪市出身。ガンバ大阪の下部組織で才能を育まれ、1998年にトップ昇格。練習生からプロ契約を勝ち取り、やがて不動のボランチとして君臨、J1初制覇やアジア制覇など西野朗体制下の黄金期を支えた。府内屈指の進学校・天王寺高校から大阪市立大学に一般入試で合格し、卒業した秀才。G大阪を2011年に退団したのちは、ヴィッセル神戸、セレッソ大阪、AC長野パルセイロ、東京ヴェルディでプレー。2019年からJFLのFC今治に籍を置き、入団1年目で見事チームをJ3昇格に導く立役者のひとりとなった。2021年5月2日の第7節のテゲバジャーロ宮崎戦で、J3最年長得点(41歳と11か月11日)を記録。2022年は関西1部リーグ「おこしやす京都AC」に籍を置き、シーズン終了後にスパイクを脱いだ。日本代表はイビチャ・オシム政権下で重宝され、国際Aマッチ・15試合に出場。173センチ・68キロ。血液型O型。

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