【番記者の視点】G大阪、3連勝の要因は…「全力が好き」34歳MF倉田秋が担う火付け役

◆明治安田生命J1リーグ 第17節 G大阪3―1FC東京(11日・パナスタ)

【G大阪担当・金川誉】G大阪は5連敗、のち3連勝で前半戦を締めくくった。一時は最下位に沈んだチームが、FC東京を相手に今季最高と言える内容(終了間際の失点は余計だが…)で勝利。チームは何が変わったのか。チュニジア代表FWジェバリは明らかに調子を上げてきた。守備面は目に見えて安定してきた。しかし何かを挙げるとすれば、34歳MF倉田秋の存在を挙げたい。

FC東京戦では得点に絡んだわけではないが、そのプレーは心を打つ。前半ロスタイム。2点リードの中で、GK東口が相手DFラインの裏に蹴ったロングボールに、FC東京DF長友と競走。ボールは長友に処理されたが、敵陣深くでスライディングし、相手陣内から出されることは防いだ。彼が前半だけで体を投げ出し、スライディングで攻撃を防いだのは3度目だった。

今季負傷などもあり出遅れた倉田だが、チームが連敗中の5月20日・横浜M戦で今季初先発。この試合では敗れたが、左FWとしてフィットしたことで、先発の座を勝ち取った。次戦の5月28日の新潟戦では先制点を決め、連敗ストップに貢献。この日も前半40分、ジェバリのクロスに飛び込み、惜しいシーンをつくった。FC東京戦は交代した後半23分までの68分間で、チーム最多17回のスプリントを記録。倉田が攻守にすべてを出し切っていることは、ひとつひとつのプレーからにじみ出ている。

本人にすべてのプレーで体を張って戦う意味を問うと、苦笑いで返された。「それが普通なんちゃう? 簡単に勝たせてくれる相手なんていない。でもおれが泥臭くやることで、みんなもやらなあかん、と思ってくれれば。基準を上げて、頑張らんでもそのぐらいやる意識でやっていければ、強いチームになっていけるのかな」。選手達がピッチで全力を尽くすことは当然。しかし、倉田が欠場し、JFL高知に敗れた天皇杯2回戦(7日)のように、さまざまな外的要因が重なり、全力を出せたように見えない試合もある。それだけに、その存在は際立つ。

倉田はG大阪でトップチーム在籍は計13年目。2017年より10番を背負い、昨季は主将も務めた。しかしチームは低迷し、自身もシーズン後半は出場機会を失った。今季もポヤトス監督を迎え、新たなチームづくりが進む中で、苦しい時間を過ごした。それでもベンチ外が続いた時期に「誰かがもう少し間に入れば、もっとボールが回るんじゃないか」「(相手DFを)2、3人かわさなくても、相手の前に頑張って入れば点は入るんじゃないか」とイメージしていたものを、今は体現している。

試合から離れた期間が長いほど、ピッチに戻った際、イメージ通りのプレーを表現するのは難しいはず。それはベテランであっても…いや、ベテランならばなおさらかもしれない。しかし出場機会が少ない間も、自身の体と向き合ってきた自負はあるという。「外から見たらわからんけど、自分の体は進化させているつもり。腹筋をメーンに、体の重心と軸をぶらさないトレーニングを取り入れたり。整体の先生に色々教えてもらったりしてやってきた」と語るように、準備だけは怠らなかった。

その結果が、現在の好プレーに繋がっているかどうかは「わからん。偶然かもしれん」と倉田は笑う。それでも「おれは自分を解放して、スイッチ入れて、全力でやるのが好きやから。練習でも終わった後、ああ、きょうもやったなあ、って帰るのが好き。周りはどうでもいいんですよ。ある意味、自分が楽しむため。筋トレも楽しいっすよ。一番楽しい」。当然、チームメートたちは彼の姿を見ている。ピッチに立てば、球際でのあと一歩、時にはおとりとなる1本のスプリントも全力で表現する倉田の姿が、チーム全体の熱量を上げたように映る。フィールド選手ではDF藤春とともにチーム最年長となったバンディエラのひとりが、ピッチに立つ意味はそこにある。

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