どの相手にも五分五分に戦える福岡だが、5戦未勝利と停滞。いまだ発展途上で、戦い方の幅、臨機応変さに欠くのが現状だ

危険な時間帯にあっさりと失点

[J1第16節]福岡 1-2 G大阪/6月3日/ベスト電器スタジアム

福岡が苦しんでいる。

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上位チームとの対戦が多くなる4月中旬からの戦いが上位進出のカギと見られていたが、8節・新潟戦で衝撃的な逆転負けを喫してから1勝3分5敗。直近の5試合では勝ち星がないなど、開幕当初の勢いが消えた。

この間の得失点は8得点、15失点。質が足りないとされる得点力もさることながら、9試合中6試合で複数失点を喫するなど、福岡の最大のストロングポイントである堅守が陰りを見せている。

高い位置からの連動したアグレッシブな守備というコンセプトに変わりはない。いずれの試合でも、そのスタイルで相手の攻撃を封じ込めている時間帯はある。質の高い選手が揃う上位チームとの対戦では、局面の争いで後手を回ることもあるとは言え、球際の強度も高さを保ててはいる。

だが、サッカーで言われる危険な時間帯にあっさりとゴールを許してしまう試合が続いている。

それぞれの試合に共通するのは、自分たちの戦い方を表現できない時にアジャストすることが難しいという点だ。顕著なのは逆転負けを喫した先述の新潟戦と、12節・広島戦。いずれも前半は相手を圧倒して先制。しかし、相手の修正に対応できずに後半は防戦一方。そのまま逆転負けを喫した。

今節のG大阪戦でも早々に先制したものの、その直後から前への意識を高くする相手にまったく対応できなくなり、なすすべもなく簡単に逆転を許した。

9節・札幌戦、10節・川崎戦、そして15節・横浜戦では、最も注意すべき立ち上がりから防戦一方に追い込まれ、抵抗することもできないままに早々と失点を喫したのも、相手のやり方に対応できなかったことが要因だった。

10人の相手に攻めあぐねてスコアレスドローに終わった13節・鳥栖戦も同一線上にある。緊迫したゲームも前半の主導権を握っていたのは福岡。だが10人になって戦い方を変えた鳥栖に対して、アジャストできないまま単調な攻撃を繰り返した。

選手間の力量差も懸念材料

質が足りないとされる攻撃面で決めきるところで決めていれば、別の結果もあったという見方もあるだろう。G大阪戦では山岸祐也が放った決定的なシュートのいずれかが決まっていればとの想いもある。

だが福岡が目ざしているのは「無失点、複数得点」での勝利。あらゆる相手に対して五分五分の戦いに持ち込んでチャンスを仕留めるというのが現時点での福岡の勝ち方で、簡単に失点をしていては望む結果は得られない。

その要因の一つとして、決して層が厚いとは言えないチーム編成にもかかわらず、主力メンバーを中心にコンディション不良者が多いということがある。システム、メンバー選考、選手交代も含めて選択肢が限られたなかで試合に臨むしかなく、チームとして本来の力を発揮しきれていないことは否定できない。

また過去3年間は誰が出ても変わらぬ戦い方をしてきたが、ここへきて主力選手と、それ以外の選手との間に力の差のようなものが感じられるのも懸念材料だ。

だが、そうしたことも含めてのチーム力。そのなかでも攻撃力アップをテーマに戦うチームには、その成果を感じられる部分もある。それが、どのチームとも五分五分の戦い方を演じることができるようになった要因なのだが、まだ発展途上のチームは、戦い方の幅、臨機応変さに欠くというのが現状だ。

自分たちの戦い方を簡単に失い、勝ち星から見放される。そうした内容はネガティブな感情を呼び起こしがちだが、福岡はまだ上位チームではない。2020年以降、数々の記憶と記録に残る戦いを演じてJ1で3年目のシーズンを迎えているが、いずれのシーズンも一定期間にわたって勝てない時期を経験してきた。

それを乗り越えて今があるのは、現実をありのままに受け止めて「自分たちは何のためにここにいるのか。何をしようとしているのか。そのために何をすべきなのか」と問いかけ続けてきたから。

それをアビスパに関わるすべての人たちが様々な手段で支えてきたからに他ならない。その姿勢は決して忘れてはならない。

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