90分の被弾が象徴的。G大阪のサッカーは決して悪くない。ダービーで垣間見えたC大阪との違いは「勝者のメンタリティ」
180度異なるスタイルに適応しつつあるのは事実
[J1第11節]G大阪 1-2 C大阪/5月3日/パナソニックスタジアム吹田
大阪北部をホームタウンとするガンバ大阪と、南部が本拠地のセレッソ大阪。Jリーグ屈指の熱量を持つ“大阪ダービー”は長らく「北高南低」の構図で推移してきたが、近年はすっかり立ち位置が逆転している。
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5月3日にパナソニックスタジアム吹田で行なわれたリーグ戦のダービーで、G大阪は1-1で迎えた90分、決勝ゴールを献上。3万4517人の観衆の前で、痛恨の敗戦を喫した。
「本当に、試合的にはコントロールもできて、少しのズレみたいなところで不幸なことに一発で決められてしまう」とダニエル・ポヤトス監督が試合後に口にした言葉は、決して負け惜しみではない。
近年、試合結果だけでなく内容でも遅れを取っていた大阪ダービーで、G大阪は確実に主導権を握っていた。
シュート数は8本対6本で大きな差はなかったが、CKの本数が試合の性格を示している。
G大阪が9本を得たのに対して、C大阪はゼロ。しかし、結果として勝点3を手にしたのはアウェーチームだった。
今季、11試合を終えて得た勝点はわずかに7。ホームで川崎フロンターレを破った1勝のみで、17位に低迷する順位は、近年見慣れた光景だ。
2018年以降、3度の監督更迭を経験。すっかり残留争いの常連になった感があるG大阪だが、今季見せているサッカーは決して悪くない。
では、なぜ勝点が積み上がらないのかと言えば、チームが無冠が続く時代に徐々に失い続けてきた「勝者のメンタリティ」が、今のチームに欠けているからではないだろうか。
「勝者のメンタリティ」と聞くと、ややもすると抽象的な概念に聞こえるが、つまるところ勝負どころでの勘所と言い換えられると筆者は考える。
その象徴が、C大阪戦で許した決勝点の場面だ。
ほぼ相手を敵陣に押し込んでいた時間帯に、宇佐美貴史が送ったクロスが弾き返されてC大阪のカウンターが発動。山中亮輔のパーフェクトクロスを途中出場の加藤陸次樹が頭で叩き込んだが、ポヤトス監督はこの失点をディフェンスラインだけの問題でないと指摘した。
「あの状況になる前のところで、一発目でファウルで止める、そこでのアグレッシブさが欠けていた。あそこでファウルで止めれば、相手に走られる距離はなかった」
リスク管理に長けたダワンがベンチに下がっていた時間帯ではあったが、カウンターを虎視眈々と狙っていた敵の術中にまんまとハマった格好だが、逆に言うとアウェーのダービーで引き分けでも悪くなかったC大阪は近年、苦手意識を全く感じていないG大阪に対して、土壇場で勝ち切ろうという「勝者のメンタリティ」を持っていたと言える。
柏レイソルとの開幕戦は終了間際に与えたPKによってドローに持ち込まれ、京都サンガF.C.戦でも拮抗した時間帯に三浦弦太のミスで痛恨の勝ち越し点を献上。ホームで逆転勝ちを収めていてもおかしくなかったサンフレッチェ広島戦もアディショナルタイムにPKを許して敗れている。
近年、リアクションスタイルのサッカーに馴染んできたG大阪が、180度異なるスタイルに徐々に適応しつつあるのは事実だが、攻守両面で勝負どころを嗅ぎ分けるしたたかさは、スペイン人指揮官とて、簡単に植え付けるのは難しいはずだ。 「エアポケット」の一言で片付けられない失点を減らすことが、G大阪の浮上に求められている。
取材・文●下薗昌記(サッカーライター)