Jリーグ2・3月のベストイレブンを独自選考 「プレーレベルが別次元」「時の人になりつつある」「驚異的な数字を残した」選手たち

スポルティーバJ1月間ベストイレブン

2023シーズンのJリーグ月間ベストイレブンを、識者が選考。今回はスポーツライターの浅田真樹氏に2・3月の11人を選んでもらった。シーズンスタートですばらしい活躍を見せた選手は誰だったか。

◆【画像】酒井宏樹が違いを見せる浦和、時の人・伊藤涼太郎の新潟ほか、J1全18チームの序盤戦フォーメーション

◆ ◆ ◆

FW/小川航基(横浜FC)、キャスパー・ユンカー(名古屋) MF/伊藤涼太郎(新潟)、西村拓真(横浜FM)、小野瀬康介(湘南)MF/齊藤未月(神戸)、山口蛍(神戸) DF/白井康介(京都)、藤井陽也(名古屋)、酒井宏樹(浦和) GK/小島亨介(新潟)

【酒井宏樹のパフォーマンスは群を抜く】

今季J1は、昨季ほど2強(横浜F・マリノス、川崎フロンターレ)の力が抜けておらず、混戦を予想する声は多かったが、第5節終了現在、大方の予想どおりの展開で進んでいる。

ガンバ大阪、柏レイソル、横浜FCにいまだ勝利がないのは心配だが、首位のヴィッセル神戸でも4勝1敗と、すでに無敗クラブはなし。負け数だけを見れば1敗が8クラブ、2敗が7クラブ(つまり、3敗以上は3クラブだけ)と、大混戦となっている。

節ごとに順位表は出るものの、次の1試合の結果次第で、順位を大きく上げたり下げたりということも起こりうる状況だ。

各クラブの力は拮抗しているだけでなく、特に新シーズンが始まったばかりのこの時期は新発見も多く、印象に残る選手も多かったのだが、そのなかから2、3月の月間ベストイレブンとして選んだのは、以下の11人である。

まずGKは、小島亨介(アルビレックス新潟)。

開幕から4戦無敗と好調だった新潟において、武器となっていたのは後方からのビルドアップ。そこでGKの小島が果たす役割は大きかった。

理屈の上では、GKが加わることで確実に数的有利が作れるとはいえ、実際にやるとなると、ミスが失点に直結するリスクもあって難しい。その難しいタスクを高いレベルでこなしていた小島を、新潟が昇格1年目ながら好スタートを切ったタイミングに合わせて選出した。

DFは酒井宏樹(浦和レッズ)、藤井陽也(名古屋グランパス)、白井康介(京都サンガF.C.)の3人。

今さらあれこれと解説する必要はないだろうが、酒井はスプリントのタイミングといい、球際の強さといい、プレーレベルが別次元。ピッチ上でのパフォーマンスは群を抜いており、攻守両面でチームへの貢献度が非常に高い。

藤井は今季、3バックの中央から左へとポジションを移したが、攻撃面でのよさがより発揮されるようになった。安定した守備に加え、自らの持ち出しや前線へのフィードなどには目を見張るものがある。

白井はハードワークが求められる京都にあってもなお、果敢な上下動が際立っていた。開幕直後の勝てなかった時期もそれは変わることなく、左右両サイドでプレーしながら、チームに推進力を生み出していた。

【時の人となりつつある伊藤涼太郎

MFでは、まず首位の神戸から山口蛍、齊藤未月のふたりを選出した。

おもにインサイドMFに入ることが多かったふたりだが、ポジションを入れ替えながら中盤を支える献身的な働きが目立っていた。攻撃では前線への飛び出し、守備ではハイプレスに加わるなど、かなり体力的負担も大きいはずだが、ともに5試合フル出場はさすがだった。

今や時の人となりつつある、伊藤涼太郎(新潟)も外せなかったひとりだ。

ややクラシカルな印象はあるものの、見ていて楽しい選手であることは間違いなく、多彩なテクニックとアイディアを駆使するプレーぶりは、まさにファンタジスタと呼ぶにふさわしい。多くのチャンスを作り出すばかりでなく、第4節川崎戦で叩き込んだミドルシュートのインパクトも強かった。

小野瀬康介(湘南ベルマーレ)は、新天地で新たな魅力を見せてくれた選手だ。

ガンバ大阪に所属していた以前は、サイドアタッカーとしての印象が強く、3-5-2の湘南でもウイングバックを担当するのかと思いきや、与えられたポジションは(湘南ではサイドボランチと呼ばれる)インサイドMF。絞った位置でボールを受けながらも、サイドに流れてウイング的にプレーすることもでき、湘南の攻撃に新たなアクセントを加えている。

すでに5試合で2ゴール決めており、コンバートによって新たな才能が開花した印象だ。

そして選手登録の上ではFWながら、横浜FMではトップ下でプレーする西村拓真も、MFのひとりとして選んだ。

昨季J1でもMVP級の活躍を見せていたが、効果的な動きは今季も健在。ボランチとウイング、ウイングとトップなど、各ポジションをつないで連係を生み出すポジショニングは非常に巧みで、自身も豊富な運動量をいかしてフィニッシュにも絡む。3月シリーズで日本代表にも選出されているように、トップ下として文句のない働きを見せている。

小川航基の得点ランク首位は驚異的】

最後のFWは、キャスパー・ユンカー(名古屋)と小川航基(横浜FC)のふたり。

堅守速攻を武器とする名古屋の、言わばラストピースとして今季移籍加入したユンカーは、期待どおりの働きを見せている。ゴール数こそ2点にとどまっているが、マテウス・カストロ、永井謙佑との相乗効果を含め、チャンスメイクは数多い。彼の存在が、2位につける名古屋の勝ちパターンを作り上げたと言ってもいいだろう。

対照的に小川は、最下位にあえぐ横浜FCにあって、まさに孤軍奮闘。チームの現状を考えれば、得点ランク首位の4ゴールは驚異的な数字だ。

しかも、第2節湘南戦、第5節京都戦で見せたヘディングシュートは打点の高いハイレベルなもの。単に数だけでなく、内容的に見ても質の高いゴールを決めている。ベストイレブン選出に異論を挟む人は少ないだろう。

最後になるが、首位・神戸の攻撃を前線で引っ張る大迫勇也、昨季王者・横浜FMの中盤を支える喜田拓也と渡辺皓太、鹿島アントラーズの新戦力である佐野海舟、FC東京で効果的な攻撃参加を見せる中村帆高など、そのほかにも選出に値する選手が多かったことを記しておきたい。

https://sportiva.shueisha.co.jp/

Share Button