電撃移籍発表からわずか10日後…GK一森純が横浜FMデビュー「強い覚悟を持ってきた」
[3.3 J1第3節 横浜FM 1-1 広島 ニッパツ]
電撃的な移籍発表からわずか11日後、背番号1のユニフォームに身を包んだGK一森純が横浜F・マリノスのゴールを守っていた。「重圧しかなくて……」。緊張の初陣は満足できるものとはならなかったが、「マリノスのゴールを守るというのはどういうことかというのをこれでもかというほど考えてきたつもり。強い覚悟を持ってきたので、もっともっと責任感を持ってやっていきたい」と力を込めた。
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一森は関西学院大を卒業した2014年に当時JFLだったレノファ山口FCで社会人キャリアをスタートしてきた苦労人。同年にJ3昇格、翌年にJ2昇格とチームと共にステップアップを果たすと、17年からJ2の岡山、20年からJ1のG大阪と順調にを続け、昨季はGK東口順昭の負傷を受けてJ1デビューも果たした。
そんな31歳に目をつけたのが横浜FMだった。2月21日、G大阪から一森を期限付き移籍で獲得したと発表。昨季まで正守護神を務めたGK高丘陽平によるアメリカMLS挑戦を受けての補強だった。そんな経緯もあり、開幕からの2試合はGKオビ・パウエル・オビンナが先発を務め、一森はいずれもメンバー外。それでも出番に向けて、前向きにトライしていたという。
「もうマリノスに行く時から(試合に出るんだと)覚悟していたし、ピッチに立てば言い訳はできないので」。横浜FMのGKはシュートストップだけでなく、攻撃の組み立ても託される難しいポジション。それでも不慣れを言い訳にすることなく、「自分のアグレッシブさだけは消さないように、弱気にだけはならないように」という気持ちでトライを続けてきた。
そうして迎えた第3節の広島戦、ついに出番がやってきた。試合は前半開始早々から広島の猛烈なプレッシングを受け、先制点を奪われるという苦しい展開。一森自身も「防げる失点だったかなと思う」という被弾に始まり、直後には大きく空けたゴールマウスにMF満田誠の意表を突いたFKを狙われ、あわや2失点目かというピンチもあった。
しかし、これまでのキャリアで積み重ねてきたアグレッシブな姿勢は貫き、弱気に見られるようなプレーはなし。最後の最後まで相手のプレッシングにも向き合ってボールを配球し、DF永戸勝也の一発退場で10人となった最終盤には、FWピエロス・ソティリウの決定機をギリギリで防ぐ大仕事も成し遂げた。
一森自身は「その場面を止められたことはよかったけど、攻撃の組み立てをうまくやっていればああいうピンチもなくなる。止めたことよりも自分がもっとできると感じられた」と謙虚に振り返っていたが、ケヴィン・マスカット監督も「加入後初めてのゲームだったが、落ち着いてプレーできていたと思う」と及第点の評価を送った。
課題あり、収穫ありの横浜FMデビュー。これからもレギュラー争いが続いていくのは変わらないが、「自分は競争に打ち勝つのもそうだけど、目の前の現象で自分が成長できるようにとずっとやってきた。もっともっと上手くなって、その上で選んでもらうというスタンスでいる」と冷静な姿勢を崩さず、日々のトレーニングに取り組んでいく姿勢を強調する。
何よりその過程では、この日公式戦のピッチを経験したことも大いに役立つであろう。「練習でやるのと実際の公式戦でやるのは全然違う。相手が広島で強度の高いプレスでやってくる中、こういう形かというのはわかった。コミュニケーションを取ってもっとやっていきたい」(一森)。さまざまな経験を持ってJリーグ王者に加わった31歳のGKが、新たな一歩を踏み出した。