最高のスタート! J1リーグベストイレブン。ブレイク、復活、変貌…。新たな顔を見せる11人

明治安田生命J1リーグが開幕して、各チームは2試合ずつを消化している。新体制の下で新たな船出となったチームもあれば、新たに台頭した選手もいる。今回は、この2試合で印象的な活躍を見せた選手の中から、ニューフェイスや昨季とは異なる姿を見せる選手を中心にベストイレブンを選出してポジションごとに紹介する。(情報は2月28日時点)

【画像】最高のスタート! J1リーグベストイレブン フォーメーション

●GK:オビ・パウエル・オビンナ

所属クラブ:横浜F・マリノス

生年月日:1997年12月18日(25歳)

2023リーグ戦成績:2試合1失点

昨季の正GK高丘陽平がアメリカに渡ったが、横浜F・マリノスのGK陣に問題は起こらなかった。シーズン開幕直前に飯倉大樹の3年ぶりとなる復帰が決まり、11日のFUJIFILM SUPER CUPにはオビ・パウエル・オビンナが抜擢された。オビはその試合も含めた公式戦3試合すべてに先発して安定感のあるプレーを見せており、今のところは高丘の穴を感じさせていない。

193cmという長身は魅力で、コーナーキックやクロスに対するハイボール処理でピンチを未然に防いでいる。カバーエリアも広く、ペナルティーエリア外からゴールを決めるのは不可能に近い。そして、今季は安定感のあるフィードも際立っており、サイドへ展開するロングボールを受け手に寸分の狂いもなく届けるシーンはこの2試合だけに限定しても何度も見ることができた。

マリノスが連覇を果たすには、GKの安定感と高いパフォーマンスは必須だ。ここまでのパフォーマンスを見る限り、オビは前任者に優るとも劣らないパフォーマンスを見せている。

●右SB:山根視来

所属クラブ:川崎フロンターレ

生年月日:1993年12月22日(29歳)

2023リーグ戦成績:2試合0得点0アシスト

FIFAワールドカップカタール2022を経験した山根視来は、所属する川崎フロンターレで新たな挑戦をしている。スタートポジションは昨季と同じ右サイドバックだが、ビルドアップ時に縦横無尽に動き回るのが特徴だ。アンカーの脇でパスをさばいて展開するだけでなく、サイドの高い位置を取ったり、時にはトップ下のように相手のライン間に顔を出したりと、神出鬼没なポジショニングで相手を混乱に陥れている。

プロ入り1年目までは攻撃的な選手で、2年目に最終ラインにコンバートされた経歴を持つ。攻撃面に特長を持ち、2021シーズンには12アシストをマーク。一方で豊富な運動量と果敢なボール奪取にも魅力があり、攻守において絶え間なく貢献できるのが最大の持ち味だ。

データサイト『SofaScore』によると、1試合の平均タッチ数は76.9から108.5へと大幅に増加。それでいてタックル数は1.7から4.5、インターセプト数は1.5から4.0へと増加しているから驚きだ。4年に一度の大舞台を経験した遅咲きのサイドバックはさらなる進化を遂げている。

●CB:丸山祐市

所属クラブ:名古屋グランパス

生年月日:1989年6月16日(33歳)

2023リーグ戦成績:2試合0得点0アシスト

センターバックは本企画の選定に当たって難航を極めたポジションの1つだが、「昨季からの変化」という趣旨に沿って考えると丸山祐市を外すことはできなかった。2021年5月に右膝前十字靭帯と内側側副靭帯を損傷して復帰まで1年近くを要した。昨年4月の復帰後も好調時のパフォーマンスを見せることはできず、リーグ戦終了後にクリーニング手術を行い、今季に照準を合わせて調整してきた。

今季2試合を見る限りはコンディションも万全で、正確な左足のフィードや機転の利いたカバーリングで攻守に存在感を発揮している。横浜FCとの開幕節では空中戦で5戦3勝と勝ち越し、京都サンガとの第2節では地上戦で3戦3勝と強さを見せていた。

チームは開幕から2戦連続で1-0というスコアで勝利を収めている。堅守が武器の名古屋において、丸山の完全復活以上に心強いものはない。

●CB:角田涼太朗

所属クラブ:横浜F・マリノス

生年月日:1999年6月27日(23歳)

2023リーグ戦成績:2試合0得点0アシスト

昨年の王者の最終ラインには、23歳の若き守備職人が据えられている。筑波大学の4年生だった2021年7月にプロ契約を結び、昨季は前半戦にコンスタントに先発起用されていた。今季はFUJIFILM SUPER CUPから公式戦3試合に先発起用されており、最終ラインに安定感をもたらしている。

185cmという長身で、クレバーな対応が光るセンターバックだ。ボールを運ぶ能力に長けており、スーパーカップでは得点の起点となっている。左足から放たれるパスの精度も高く、サイドバックでもプレー可能。左利きでありながら、川崎フロンターレとの開幕節では後半途中から右サイドバックを務めるユーティリティーぶりを発揮している。

マリノスのアタッキングフットボールを実現するうえで、センターバックに課される要求は決して低くない。角田は畠中槙之輔とともに常にリスク管理をしながら、攻撃面での貢献や広大なカバーリングをこなしている。

●左SB:佐々木旭

所属クラブ:川崎フロンターレ

生年月日:2000年1月26日(23歳)

2023リーグ戦成績:2試合0得点1アシスト

関東大学リーグMVPという実績を引っさげて川崎フロンターレに加入した昨季、一時は左サイドバックのレギュラーの座を掴み、リーグ戦21試合に出場した。そして、谷口彰悟がつけていた背番号5を受け継いだ今季も開幕から印象的な活躍を見せている。

開幕節ではパスの精度が光った。19分にはディフェンスラインの裏に抜けた遠野大弥へ絶妙なロングスルーパスを送って決定機を演出すると、後半アディショナルタイムにはペナルティーエリアでパスを受けて折り返し、橘田健人のゴールをアシストしている。第2節はコンディションの問題でベンチスタートとなったが、56分からプレーして劇的な逆転勝利に導いている。

データサイト『SofaScore』によると、横浜F・マリノス戦ではデュエルが計12戦11勝、鹿島アントラーズ戦では8戦6勝という驚異的な数字をマークしている。攻守において川崎を支える活躍には獅子奮迅という言葉がふさわしい。

●MF:佐野海舟

所属クラブ:鹿島アントラーズ

生年月日:2000年12月30日(22歳)

2023リーグ戦成績:2試合0得点0アシスト

J1初挑戦とは思えない落ち着きとパフォーマンスで、佐野海舟は鹿島アントラーズの中盤を制圧している。プレシーズンではサイドバックで起用されたこともあったが、開幕以降は本職の守備的MFとしてプレーしている。

最大の持ち味であるボール奪取能力は、J1でも大いに通用する。データサイト『SofaScore』によると、この2試合での地上戦のデュエルは13戦9勝と高い勝率を誇る。佐野のインターセプトやタックルから攻撃を開始したシーンはこの2試合で何度も見ている。

4-3-3のアンカーで佐野が守備的なタスクを広くこなしているからこそ、両脇のディエゴ・ピトゥカや樋口雄太は攻撃的に振る舞うことができる。攻守両面でまだまだ伸びるのではないかと期待させるポテンシャルがあるが、J1初挑戦のシーズンとしては上出来のスタートを切ったと言えるだろう。

●MF:小野瀬康介

所属クラブ:湘南ベルマーレ

生年月日:1993年4月22日(29歳)

2023リーグ戦成績:2試合1得点1アシスト

小野瀬康介は新天地で躍動している。開幕節では前半終了間際に平岡大陽のゴールを浮き球のパスでアシストすると、後半にはコーナーキックをペナルティーエリア外から右足で合わせて直接ゴールネットを揺らした。第2節でも右サイドからのミドルパスで町野修斗のゴールをおぜん立て。2試合で7得点を記録した湘南の攻撃において、小野瀬は欠かせない存在となっている。

これまで小野瀬は横浜FC、レノファ山口、ガンバ大阪でプレー。2020シーズンにはガンバの2位躍進に貢献したが、昨季限りで契約満了となり、ガンバ時代にコーチだった山口智監督のラブコールを受けて湘南に加入している。これまでは右サイドが主戦場だったが、湘南では3-1-4-2の右インサイドハーフで起用されている。2試合連続でチーム最高となる走行距離を記録し、起点となるパスで湘南の攻撃を司る。

ガンバでは2019シーズンにJ1自己最多となる7得点4アシストをマーク。湘南に加入した今季の目標を自己最多更新としており、幸先の良いスタートを切った。

●MF:伊藤涼太郎

所属クラブ:アルビレックス新潟

生年月日:1998年2月6日(25歳)

2023リーグ戦成績:2試合0得点2アシスト

6シーズンぶりにJ1の舞台に戻ってきたアルビレックス新潟は、2試合を終えて1勝1分という上々のスタートを切った。昨季のJ2を制した攻撃的なスタイルをJ1でも披露しており、そのキーマンとして輝いているのがトップ下で起用される伊藤涼太郎だ。

セレッソ大阪との開幕節の22分には、ペナルティーアーク付近まで運んでラストパスを出し、谷口の先制点を演出した。逆転された80分には右CKから千葉和彦のヘディング弾をアシストしている。第2節でも中盤から絶妙なパスを三戸瞬介に出して先制点の、37分には太田修介への絶妙な浮き球のパスで追加点の起点となっている。

ここまで新潟が挙げた4得点は、すべて伊藤が絡んでおり、1試合平均のチャンスクリエイト数はリーグトップの5に達する。昨年9月に右膝前十字靭帯を損傷してリハビリが続く高木善朗を欠く中、伊藤が司令塔として新潟の攻撃的なサッカーを支えている。

●MF:宇佐美貴史

所属クラブ:ガンバ大阪

生年月日:1992年5月6日(30歳)

2023リーグ戦成績:2試合1得点0アシスト

アキレス腱断裂という悪夢でシーズンの大半を棒に振った昨季を経て、宇佐美貴史は新たな姿を見せる。ダニエル・ポヤトス監督が就任した今季のガンバ大阪では任されたのは、4-3-3のインサイドハーフだった。

柏レイソルとの開幕節では前向きでボールを受けた状態で相手に寄せられながらも細かいボールタッチで相手をかわしてゴールネットを揺らした。サガン鳥栖との第2節では前半にポストを叩く強烈なシュートを放ち、CKから鈴木武蔵のゴールをおぜん立て。データサイト『SofaScore』によると、鳥栖戦でのキーパス数は5本に達している。

今季から背番号を7番に変更して、主将を務めている。ポジションを下げたことでタスクは増えたが、攻撃面ではトップフォームに近い輝きを放っている。ガンバの最高傑作と言われた逸材は様々な経験を経て、31歳となるシーズンで上々のスタートを切ったと言えるだろう。

●FW:大橋祐紀

所属クラブ:湘南ベルマーレ

生年月日:1996年7月27日(26歳)

2023リーグ戦成績:2試合3得点1アシスト

中央大学在籍時に全日本大学選抜に選出された経歴を持つ大橋祐紀が、ついにJリーグでその才能を爆発させた。サガン鳥栖との開幕節に先発起用された大橋は、開始3分に杉岡大暉のクロスを滑り込みながらゴールに押し込むと、36分にはカウンターから町野修斗のクロスをゴール左隅に流し込んだ。60分には町野のスルーパスに抜け出してハットトリックを達成している。

横浜FCとの第2節でも鋭い抜け出しで小野瀬康介のパスを呼び込み、町野のシュートをアシスト。攻守にかかわらず相手の最終ラインと駆け引きをし続けてプレッシャーをかける大橋は、2試合で7得点を挙げる湘南の攻撃を牽引している。

これまでとの大きな変化はやはりフィニッシュの精度だ。これまで4年間はシュート116本で7得点という成績で、決定率はわずか6%。今季はまだ2試合ではあるが42%という高い確率を残す。パスを引き出すタイミングや、GKの位置を把握する瞬間的なポジショニングが確実に向上している。

●FW:武藤嘉紀

所属クラブ:ヴィッセル神戸

生年月日:1992年7月15日(30歳)

2023リーグ戦成績:2試合0得点2アシスト

目に見える大きな変化があったわけではないが、30歳となった武藤嘉紀は一味違う。開幕戦では決勝ゴールを頭で演出し、第2節では全得点に絡む活躍でヴィッセル神戸は開幕2連勝という最高のスタートダッシュを決めている。

連動した守備から主導権を握る戦いは、武藤ら前線の選手の献身があってこそ成り立つ。北海道コンサドーレ札幌戦の先制点のシーンがまさにそうで、味方と協力してパスコースを遮断してボールを奪い、スルーパスで大迫勇也のゴールをアシストした。

さらに、89分にはペナルティーエリアに走りこむ山口蛍にトリッキーなパスを通し、ダメ押しの3点目をアシスト。ここまでゴールこそないが、献身的なディフェンスと味方を活かすプレーは随所に光る。ゴールを決めるのも時間の問題だろう。

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