【ナビスコカップ決勝】G大阪は何をしたかったのか SOCCER DIGEST Web 11月1日(日)7時30分配信

鹿島は執拗な右サイド攻撃によってリズムをつかんだ。

 鹿島がG大阪を退けたナビスコカップ決勝、両者の間には3-0というスコア以上の差があった。

鹿島は終始、主導権を握り、敵陣でゲームを進めた。
シュート24対5、コーナーキック12対2という数字も、そのことを雄弁に物語る。

鹿島は復調した第2ステージから見せている、執拗な右サイド攻撃によってリズムをつかんだ。
遠藤が左利きを生かして中央にカットイン、そこに大外を攻め上がる西やボランチの柴崎、さらには2トップの金崎、赤崎などが次々と絡み、短いパスをつなぎながらサイドを深くえぐっていく。

かつての鹿島は堅守速攻、少ないチャンスを確実にゴールに結びつけることで勝利を積み重ねていたが、いまは違う。ボールを支配し、パスをつなぎながら、多くのチャンスを創り出すことを狙いとしている。

これは日本人選手が中心となり、傑出した得点力を持つストライカーがいないというチーム事情もあるのだろう。実際に彼らは立ち上がりから猛攻を仕掛けたが、数々のチャンスを逃し、前半をスコアレスで折り返してしまう。

だが後半、鹿島はふたつのCKをゴールに結びつけた。サイドアタックが機能すると、必然的にCKが増えていく。それを上手くモノにしたということだ。

2-0と勝利を引き寄せたあとも、彼らは何度もCKを獲得した。CKは便利なもので、勝っているチームはゆっくりと蹴りに行ったり、コーナー付近でキープをすることで時間を稼ぐことができる。試合巧者の鹿島は、そのあたりも狙いながらサイドアタックを仕掛けているのだ。

鹿島の試合運びを観ていると、このチームが何をやろうとしているか、選手や監督に訊かなくても手に取るようにわかる。

まず彼らはジーコ時代からの伝統でもある、敵の嫌がることをやろうとする。
その主たる手段が人数をかけたサイドからの切り崩しで、ペナルティエリア内、それも相手ゴールのニアポスト近くを取ろうとする。それができればゴールの確率が極めて高くなり、仮にできなくてもCKを数多く取ることができる。敵の利になることはひとつもない。

頼みの宇佐美も守備に奔走する中で消えていった。

 理に適った試合運びを見せた鹿島とは違い、G大阪は最後まで何をしたいのかよくわからなかった。

鹿島のサイドアタックにいいようにやられ、頼みの宇佐美も守備に奔走する中で消えていった。攻撃的な4-2-3-1は、気づけば間延びした5-3-1に。攻めては単発のカウンターくらいしかなく、選手交代もほとんど役に立たなかった。

G大阪の問題は、ゲームプランの中に敵がいないということだ。
鹿島の遠藤、G大阪の宇佐美がいる左サイドが焦点となるのは、戦前から予想されたこと。それなら遠藤を厳しくマークする、もしくは宇佐美にボールを集め て敵を引かせるといった姿勢を見せてもいいはずだが、何の対策も施さず、鹿島のサイドアタックにさらされる羽目になった。

G大阪は昨年の3冠チーム。だが、決して試合運びは上手くなく、宇佐美、パトリック、遠藤、今野といった個人の力でタイトルをつかんだようなところがあ る。Jリーグのチームは試合をまとめることが下手なので、最後はタレントの力がモノを言うことになるからだ。終盤の大一番、浦和戦も敵が自滅したようなと ころがあった。

私はG大阪の完敗は、戦術や駆け引きの敗北だと考えている。だが、長谷川監督は違った。試合後の記者会見で、彼は次のように語った。

「勝てるだろうという慢心が少しあったかもしれない。ざっくり言えば、鹿島の勝ちたいという気持ちが我々を凌駕したのではないか」

これ、ざっくり言い過ぎ。
長谷川監督は続けて判定や球際について、また重要な試合が続くことの難しさについても言及したが、メンタル面を大きな敗因として挙げていた。

日本のサッカーは、どうしてこうなってしまうのだろう。

昨年のJ1昇格プレーオフで敗れた千葉の関塚監督もそうだったが、負けたチームはすぐに気持ちで負けたと言って敗戦を片付ける。情緒に流されるのはメ ディアも同じだから、私も偉そうなことは言えないが、ピッチ上に明らかな問題があり、それを放置して負けて「気持ちで負けた」というのは釈然としない。

勝てば諦めない気持ち、ブレない気持ちがあったから勝った、負ければ気持ちで負けた――。
こんな定型文の中でサッカーをしていたら、いつまで経っても日本のサッカーは強くならないと思うのだ。

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