識者5人がJ1全順位を予想。その多くが横浜FM&川崎の「2強時代」の終焉を匂わす

愛しているJ! Jリーグ2023開幕特集

今季J1が2月17日に開幕する。注目されるのは同日、他のゲームに先駆けて行なわるオープニングマッチで激突する「2強」だろう。連覇を狙う横浜F・マリノスと王座奪還を目指す川崎フロンターレが、再び頂点を争うことになるのかどうかだ。

【人気画像】超サッカー通でW杯でも話題になった「美少女アイドル」10点

ただ、いずれもこのオフの補強に関しては地味な印象がある。それぞれ主力メンバーがチームを離れたことを考えると、戦力ダウンは必至の状況だ。それでいて、ともにAFCチャンピオンズリーグの戦いもある。そうした要素を鑑みると、「2強」も決して盤石とは言えないかもしれない。

ならば、今季は「2強」に割って入る、あるいは「2強」をしのぐ存在が出てきてもおかしくない。はたして、その可能性があるのはどのチームなのか。そういった点も含めて、今年もJリーグに精通する5人の識者に、2023年シーズンのJ1全順位を予想してもらった――。

横浜FMと川崎の「2強」状態からの終止符を願う期待はより攻撃的なサッカーを目指す浦和の心意気

杉山茂樹氏(スポーツライター)

1位 浦和レッズ2位 横浜F・マリノス3位 鹿島アントラーズ4位 川崎フロンターレ5位 サンフレッチェ広島6位 ヴィッセル神戸7位 FC東京8位 柏レイソル9位 セレッソ大阪10位 ガンバ大阪11位 名古屋グランパス12位 サガン鳥栖13位 北海道コンサドーレ札幌14位 横浜FC15位 アルビレックス新潟16位 湘南ベルマーレ17位 アビスパ福岡18位 京都サンガF.C.

今季は横浜FMと川崎のマッチレースが続いた近年の傾向に、終止符が打たれるのではないか。また、そうであるべきだと願う。

連覇を狙う昨季の覇者、横浜FMは満足な戦力補強をしていない。放出した選手と加入した選手の力を比較すれば、前者のほうが勝る。戦力が落ちた分を戦術、采配、コンビネーションなどでどこまで補えるか。

過去6年間で4度優勝している川崎も同様。ここ数年は現状維持の戦力ながら、鬼木達監督のやり繰り上手な采配でなんとか乗りきってきた。

そうしたなか、今季も2強のマッチレースとなれば、J1リーグのレベルは停滞する。むしろダウンするというわけで、それ以外のチームの奮起を促したくなる。

後続グループのなかで、前向きなチームを優勝候補に推そうとした時、浮上するのは浦和だ。昨季9位ながら、好感の持てるサッカーをした。中身は決して悪くなかった。AFCチャンピオンズリーグでは決勝進出を果たしている。

にもかかわらず、浦和のフロントはリカルド・ロドリゲス監督を解任。マチェイ・スコルジャ(レフ・ポズナン→)を新監督に迎えた。より攻撃的なサッカーを目指してのものだとすれば喜ばしい。思いきって、その心意気に懸けることにしたい。

鹿島にもそろそろというムードを感じる。実際、そのサッカーは4-2-2-2的な旧来のブラジル式から脱却しつつある。横浜FM、川崎にだいぶ寄ってきた。サイド攻撃とプレッシングがどこまで決まるか。広島から獲得した藤井智也や4年目の松村優太がウイングとしてコンスタントに活躍すれば、「2強」を超える可能性がある。

谷口彰悟(→アル・ラーヤン)がいなくなった川崎は横浜FMより心配。鬼木監督のやり繰り上手も、そろそろ限界にきていると見る。MF大島僚太がフル稼働できないと、かつての高級感を取り戻すことは難しい。

18チームの全体図は、昨季と大きな違いがないと見る。上位、中位、下位に分かれた状態にある。その枠組を壊すチームがあるとすれば、G大阪と神戸だろう。両者には、下位グループから中上位に進出する可能性を感じる。降格争いは、京都、福岡、湘南、新潟、横浜FC、それに札幌、鳥栖まで絡みそうだ。

ACLが大きなハンデとなりそうな横浜FMと川崎代わって優勝のチャンスを得るのは広島とC大阪

中山 淳氏(サッカージャーナリスト)

1位 セレッソ大阪2位 サンフレッチェ広島3位 横浜F・マリノス4位 川崎フロンターレ5位 鹿島アントラーズ6位 FC東京7位 名古屋グランパス8位 浦和レッズ9位 ヴィッセル神戸10位 サガン鳥栖11位 北海道コンサドーレ札幌12位 ガンバ大阪13位 柏レイソル14位 湘南ベルマーレ15位 アルビレックス新潟16位 アビスパ福岡17位 京都サンガF.C.18位 横浜FC

川崎”1強”時代が終焉した印象のJ1だが、横浜FMと川崎の2チームが最後まで優勝を争った昨シーズンのような展開にはならないと予想する。なぜなら、今シーズンはACL(AFCチャンピオンズリーグ)のグループステージが、優勝争いの佳境を迎える時期にあたる9月下旬から12月上旬に予定されているからだ。

天皇杯王者としてACLに挑むJ2のヴァンフォーレ甲府は別として、横浜FMと川崎にとって、この時期にACLを戦うことは大きなハンデとなるはず。そこで、優勝のチャンスが巡ってきそうなのが、昨シーズンのルヴァンカップ王者でリーグ3位に躍進した広島と、香川真司(シント・トロイデン→)の加入で注目を集めるC大阪(昨シーズン5位)だ。

広島は、ミヒャエル・スキッベ監督のサッカーが浸透しているうえ、大幅な戦力の入れ替えもないため、優勝争いに加わることは確実だろう。安定感はリーグ屈指と言える。

一方のC阪は、課題の決定力不足を解消すべくFWレオ・セアラ(横浜FM→)を獲得し、さらにパス供給源としてクロスが武器のMFジョルディ・クルークス(福岡→)も補強。MF清武弘嗣が開幕前の負傷で出遅れるのは誤算だが、広島以上に飛躍する可能性を秘めたチームと言える。古巣に復帰した香川の加入もプラスに作用するはずで、悲願の初優勝も夢ではないだろう。

その他、DF昌子源(G大阪→)とDF植田直通(ニーム→)が復帰して常勝軍団のアイデンティティを取り戻そうとしている鹿島、アルベル体制2年目のFC東京、そしてFWキャスパー・ユンカー(浦和→)が加入した名古屋も、上位争いに食い込んでもおかしくないポテンシャルを持ったチームと言える。

一方、残留争いはさらに予想が難しい。今シーズンは最下位のみが降格となるが、その1枠は昇格組の横浜FCと予想。開幕前の積極補強策からは残留への意思が伝わるが、戦力の入れ替えが激しすぎる印象は否めない。チーム作りが遅れるようだと、早い時期に残留争いから脱落する可能性もあるだろう。

「2強時代」を終わらせる力を備えた広島がV候補どう転ぶかわからないのは、浦和とG大阪

原山裕平氏(サッカーライター)

1位 サンフレッチェ広島2位 横浜F・マリノス3位 川崎フロンターレ4位 セレッソ大阪5位 FC東京6位 柏レイソル7位 名古屋グランパス8位 浦和レッズ9位 鹿島アントラーズ10位 サガン鳥栖11位 ガンバ大阪12位 ヴィッセル神戸13位 湘南ベルマーレ14位 北海道コンサドーレ札幌15位 横浜FC16位 アルビレックス新潟17位 アビスパ福岡18位 京都サンガF.C.

まずは、昨季の振り返りから。ピタリ賞は優勝とした横浜FMのみ。あとは軒並み大外れ。ニアピンも3位の川崎(実際は2位)くらいで、10位とした広島が3位、13位としたC大阪が5位。逆に2位予想の神戸が13位などなど、見当外れの予想が相次ぐ事態となりました。今年もさっぱりわかりませんが、例年どおり継続性を重視した予想で、リベンジを狙います。

優勝は広島。昨季は3つのコンペティションで優勝争いに絡み、悲願のルヴァンカップ制覇を実現。今季も補強は最低限ながら、昨季はコロナの影響で入国が遅れたミヒャエル・スキッベ監督が最初から指導できる点は大きい。FW満田誠ら伸び盛りの選手も多く、2010年代後半から続く”2強時代”を終わらせるだけの力を備えているはずだ。

もちろん、横浜FMと川崎の2強の完成度の高さはやはり群を抜いており、広島にとってはひと筋縄ではいかないだろう。

香川真司(シント・トロイデン→)の復帰で沸くC大阪も注目チーム。日本での実績のある2人の外国籍選手を前線に加えたことで、昨季は苦しんだ得点力不足の課題解消にもめどが立っている。この4チームが優勝争いを牽引するのではないか。

5位以下は、補強策を考慮した。FC東京、柏、名古屋あたりは、昨季の足りなかった部分を上手く補ったように見える。

読めないのは、監督を代えた浦和とG大阪の2チーム。とりわけ、唯一、日本で指揮を執った経験のない監督を迎えた浦和は、どちらに転ぶか見当がつかない。昨季の広島のようになるか、あるいは早期監督交代となった鹿島のようになるか。いずれの行く末も考えられるだろう。

スペイン人指揮官を迎えたG大阪も、新たなスタイルの浸透には時間がかかるはず。大きく出遅れてしまうようだと、順位を下方修正せざるを得ない。

残留争いは、昇格2チームと昨季の下位チームとしたが、なにせ”予想力”は冒頭のとおりですので、ご安心を!

V候補筆頭は川崎。対抗は横浜FM、広島、鳥栖香川、井手口ら海外組のカムバックにも注目

小宮良之氏(スポーツライター)

1位 川崎フロンターレ2位 サンフレッチェ広島3位 サガン鳥栖4位 横浜F・マリノス5位 鹿島アントラーズ6位 セレッソ大阪7位 北海道コンサドーレ札幌8位 FC東京9位 浦和レッズ10位 柏レイソル11位 名古屋グランパス12位 湘南ベルマーレ13位 ガンバ大阪14位 ヴィッセル神戸15位 アルビレックス新潟16位 京都サンガF.C.17位 横浜FC18位 アビスパ福岡

優勝の筆頭候補は、一昨年王者の川崎だろう。補強面はバックラインで谷口彰悟(→アル・ラーヤン)の移籍がマイナスだが、前線は宮代大聖(鳥栖→)のレンタルバック、アカデミー出身の山田新(桐蔭横浜大→)の加入でプラス。小林悠、レアンドロ・ダミアンもケガからの復帰が見込める。何より、中盤の陣容は脇坂泰斗を筆頭に強力だ。

ライバルは、対抗が昨年王者の横浜FM、穴が広島、大穴が鳥栖と言ったところか。

横浜は、主力の離脱がどう出るか。昨年のMVPでボランチとセンターバックの”二刀流”だった岩田智輝(→セルティック)、かつてのMVPでケヴィン・マスカット監督が好むパワー、スピードを注入していたFW仲川輝人(→FC東京)、さらにポイントゲッターだったレオ・セアラ(→C大阪)が相次いで移籍。とどめに戦術軸だったGK高丘陽平の退団も決まり、この戦力ダウンは避けられない。ベテランMF水沼宏太の奮闘や若手のMF山根陸の台頭などで、戦いを好転させられるか。

広島は戦術的に合理的で、昨季J1で3位、ルヴァンカップ優勝、天皇杯準優勝の成績は伊達ではない。左ウィングバックにも志知孝明(福岡→)を補強し、戦力も整った。ミヒャエル・スキッベ監督の2年目が期待される。

最も楽しみなのは、川井健太監督が率いる鳥栖である。これだけ監督の色が出たチームはない。MF西川潤、MF堀米勇輝、DF中野伸哉ら左利きが共演し、GK朴一圭が戦術を司る。昨年のJ2ベストプレーヤーと言える河原創(ロアッソ熊本→)のプレーメイクも楽しみ。同じく新加入の富樫敬真(ベガルタ仙台→)がふた桁得点できるかで、チームの成績的な浮沈も見えてくる。

戦力的には、鹿島も割って入る力はある。MF荒木遼太郎は必見。センターバックも補強し、常勝を取り戻す面子はそろったが、プレシーズンではJ2相手に不振で……。

サッカーとして面白そうなのは、札幌だろう。ミハイロ・ペトロヴィッチ監督の采配の妙か、MF青木亮太など多くの選手が進化を遂げている。神戸から移籍のMF小林祐希の本領発揮も期待だ。

また選手個々では、C大阪に復帰した香川真司(シント・トロイデン→)、福岡に移籍した井手口陽介(セルティック→)など、海外組のカムバックは注目だろう。新外国人の顔ぶれはさみしいが、カタールW杯で奮闘してG大阪入りしたチュニジア代表のFWイッサム・ジェバリ(オーデンセ→)は楽しみ。あとは、やはり神戸のアンドレス・イニエスタがたとえ5分間でもコンディションがフィットしたら、観戦の価値はある。

最後に、G大阪のMF中村仁郎やFC東京のFW熊田直紀など10代プレーヤーの新しい波にも待望したい。

優勝候補筆頭格は充実ぶりが際立つ横浜FM注目は「一発」ありそうな柏と新潟

浅田真樹氏(スポーツライター)

1位 横浜F・マリノス2位 鹿島アントラーズ3位 川崎フロンターレ4位 サンフレッチェ広島5位 セレッソ大阪6位 名古屋グランパス7位 FC東京8位 浦和レッズ9位 柏レイソル10位 ヴィッセル神戸11位 ガンバ大阪12位 アルビレックス新潟13位 北海道コンサドーレ札幌14位 サガン鳥栖15位 湘南ベルマーレ16位 アビスパ福岡17位 京都サンガF.C.18位 横浜FC

昨季J1の優勝争いは、横浜FMと川崎のマッチレース。”2強”が3位以下に大きく水をあける結果となった。

サッカーの完成度、選手層の厚さなどを考えれば、当然今季も、昨季2強が優勝候補の筆頭格。とりわけ横浜FMの充実ぶりは際立っており、最有力候補だろう。

ただし、2強はいずれもオフの戦力補強が物足りなく、昨季との比較で言えば戦力ダウン。ゆえに優勝争いの注目ポイントは、戦力ダウンした昨季2強を超えるクラブが現れるのか、である。

最も期待が高いのは、鹿島だろう。DF昌子源(G大阪→)、DF植田直通(ニーム→)らを加え、戦力は厚みを増した。

とはいえ、過去のJリーグでは、大型補強が期待外れに終わるケースも少なくない。期待半分、不安半分というのが正直なところだ。

優勝の可能性があるのは、2強を含め、上位に予想した5クラブと見ているが、FC東京、名古屋、浦和あたりがスタートダッシュに成功し、上位に食い込んでくるようなら、優勝争いはさらに面白くなるはずだ。

一方の残留争いは、優勝争い以上に予想が難しい。

現時点で降格の危険性が高いのは、12位以下に予想した7クラブと見ているが、その他のクラブが降格危機に陥っても驚かない。

下位予想の7クラブにしても、志向しているスタイルは興味深く、うまくハマれば台風の目となれるだけの力を備えている。

そこで、残留争いの注目ポイントとなるのは、神戸とG大阪の逆襲はあるのか、だ。

ともに戦力的には十分なタレントがそろっているだけに中位予想としたが、昨季からの低迷が続くようなら、残留争いもさらなる大混戦となりそうだ。

優勝争いや残留争いとは別に、個人的に注目したいのは、柏と新潟。

柏は、MF山田康太(モンテディオ山形→)、MF高嶺朋樹(札幌→)ら、伸びしろのあるクレバーな選手が新たに加わり、既存の若手との間で相乗効果が生まれれば、大きく化ける可能性を感じる。

また新潟は、J2で確固たるスタイルを確立してのJ1昇格。2019年に昇格1年目で9位に躍進した大分トリニータに通じる雰囲気を感じる。

どちらのクラブもスタートで躓くことなく、シーズンはじめから自信を持って戦うことができれば、”一発”があるのではないだろうか。

https://sportiva.shueisha.co.jp/

Share Button