「日本にストライカーがいれば…」マンガ『ブルーロック』に込められた「日本サッカー界への期待と願望」

「日本にストライカーがいれば」とみんな思っているんじゃないかと感じていた

――金城さんが、マンガの題材としてサッカーがおもしろいと思った理由は?

金城 まず何より僕自身がめちゃくちゃ好きだからです。それに、世界中の人が観ている人気のスポーツですしね。僕自身は遊びでやっていただけで、部活とかでのサッカー経験はないんですけれども。でも子どものころからずっと好きで特に日本代表を観ていたし、サッカーゲームもずいぶんやりこみました。

「週刊少年マガジン」編集部の方と企画について話しているときに「高校生が熱く戦っている話がいいよね」と盛り上がり、それから僕がずっと感じていた「ストライカーって日本になかなかいないですよね」という会話をしたらさらに盛り上がり、「これだ!」となりました。

――「サッカーを描く」といってもいろいろ切り口はありますが、『ブルーロック』は、なぜ日本中の高校からストライカーたちを集めてW杯優勝を目指す話になったのでしょうか。

金城 「日本がW杯を優勝するところが観たい」という僕の願望ですね。小さい頃から僕はテレビにかぶりついて真剣にサッカーを観て、「勝て!」と必死に応援していたんです。そのころから僕が思っていた「優勝して欲しい!」「日本にストライカーがいれば……!」という願いを持っている人って多いんじゃないかと。それを描けば少年マンガとして大きい話ができそうだな、という想いもありました。

そこから「日本人の特性は和を重んじる協調性で、日本のサッカー界が抱えている課題の根本は、その協調性がありすぎるゆえのエゴイスト不足なんじゃないか?」と僕が思っていたことを全部ぶち込んで原作を作りました。連載前には現役の選手やスタッフさん、元日本代表コーチの方といったサッカー関係者の方にも読んでいただいたんですね。めちゃくちゃ怒られるんじゃないかとビクビクしていたんですが、でもかなりの方から「その通りだよ!」と言っていただいて。取材すればするほど、この方向性で間違っていないんじゃないかなという気持ちになりました。

――原作を作るなかで気付いたサッカーの特徴は?

金城 改めて資料を読んだり関係者から話を訊いて感じるのは、リアルのサッカーはもっとシステマティックなものなんだろうな、と。選手はデータやシステム、規律やチーム内のルールを頭に入れて、それを90分間徹底している。僕も昔は試合を観ながら安易に「そこでシュート打てよ!」と思っていましたけど、勉強するほどに「いや、チームとしてそこはそんな簡単には打たないよな」と思うようになりました。だけどフォワードに関しては「それでも打ってほしい!」という想いもあり。だからそれもあって、あえて『ブルーロック』はエゴイスティックにアドリブで動く選手が多いお話にしています。

――『ブルーロック』は現代サッカーの複雑な戦術や専門用語を知らなくても読めるように描かれていますよね。

金城 僕自身、団体競技もののスポーツマンガを読んでいてルールと作戦を理解しないといけなくなると苦手に感じることがあって。だから『ブルーロック』ではいまだにオフサイドすらまともに出していないんです。ややこしいルールや用語、戦術はなるべく読者に説明しなくてもいいように、サッカー知識がなくても読めるように工夫しています。難しいことを考えずに、読者がマンガのおいしいところだけ楽しめるものにできたらと。

ひょっとしたらマネできるかも、というギリギリで勝負したい

普通のサッカーものだと思ったらケガすると思います

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