【番記者の視点】降格危機のG大阪が横浜M撃破 シュート数3分の1以下も“局地戦”制す
◆明治安田生命J1リーグ第32節 横浜M0―2G大阪(8日、日産ス)
G大阪が首位・横浜Mに2―0と勝利し、暫定ながら自動降格圏を脱出して入れ替え戦圏の16位に浮上した。前半8分、FW宇佐美のCKをMFダワンが折り返し、MFアラーノが決めて先制。その後は一方的に攻められる展開となったが、GK東口の好守や全員の体を張った守備で耐えた。後半34分にはCKの流れから、MF食野の折り返しをFWパトリックが押し込んで追加点。苦しい残留争いの中で、5試合ぶりの勝利をつかんだ。
シュート数は横浜M22本に対し、G大阪は6本。ボール保持率は横浜Mの61パーセントに対し、G大阪は39パーセント。内容としては完敗だったが、“局地戦”で上回った。この日、松田浩監督は出場停止のMF斉藤に代え、対空時間の長いヘディングを持つMFダワンを先発にチョイス。さらに前線の軸として起用してきたFWレアンドロ・ペレイラをベンチに置き、高さが武器のFWパトリックを先発起用した。
横浜Mの先発メンバーで180センチ以上は、GK高丘(182センチ)を含め3人のみ。セットプレーをファーサイドで折り返された形からの失点が多いことは分析済みだった。先制点の場面では、189センチのパトリックがニアサイドに走って相手DFの目を引きつけ、177センチと大柄ではないがヘディングが得意なダワンがファーサイドで折り返し、アラーノが押し込んだ。CKでダワンに正確なキックを届けたFW宇佐美は「(横浜Mの弱点は)分析でしっかり落とし込まれていたし、キッカーとしてあそこに蹴るというのは狙っていた通りだった」と明かした。
その後は想定以上に主導権を握られても、4―4―2のブロックを形成して中央を締めた。空いてくるサイドは、両サイドバックやサイドハーフが必死のスライドでカバー。前半38分には完全にサイドを崩されたが、最後は左SBのDF黒川がゴールライン上ではね返した。サイドの対応で後手を踏む場面はあったが、角度のない場所や距離のあるシュートは、GK東口がシャットアウトした。
内容的には完敗でも、今は勝ち点3だけが必要だという共通認識の下、守備の集中力は最後まで途切れなかった。時に自陣深くまで戻り、守備にも奔走したパトリックは「苦しい時に(守備で)サポートするのは当たり前のこと。前で待って、得点に執着するという思いはなかった」と語り、アラーノも「守備でも自分ができる範囲のことはするのが当たり前だし、限界を少し超えたところまでやろうと思っている」とうなずいた。
残留を争う福岡や湘南も勝利したことで、16位に浮上したとはいえ状況が大きく好転したわけではない。ただ首位からもぎ取った勝利は、勝ち点3以上のものをチームにもたらす可能性はある。「泣いても笑っても、残り2試合しかない。この試合を分析し、次に繋げていきたい」と東口。最終節までもつれ込むことは必至の残留争い。この日つかんだ小さな自信を、J1残留に向けた光明としたい。(G大阪担当・金川誉)