【番記者の視点】G大阪、連敗ストップの要因は…片野坂監督が挙げた“陰”のキーマン
◆明治安田生命J1リーグ第15節 G大阪2―0広島(29日、パナスタ)
G大阪にとって、結果と内容が伴った大きな勝利だ。4連敗と苦しむ中で、4連勝と好調の広島から2点を奪い、守備でもクリーンシートで5試合ぶりの勝利。片野坂知宏監督の「選手が奮起してくれましたし、いま我々がトライしているサッカーを最後まで集中力高く、ハードワークして、切らさずに戦ってくれた。本当に選手に感謝しています」という言葉にも、手応えと安どがにじんだ。
4連敗目を喫した26日の札幌戦から、わずか3日間で何が変わったのか。先発6人を入れ替え、フォーメーションも変更。先制点に加え2点目の起点となったMF黒川、J1初ゴールに加えて前線のポスト役としても機能した18歳FW坂本の活躍も光った。その中でも最も大きな変化を感じられたのは、札幌戦ではほとんど作れなかったボール保持の時間を、落ち着いて作ったことだ。片野坂監督はその要因について、広島の守備に対してボールを動かす狙いがはまったこと、さらに「特に今回、久しぶりに先発で出た福岡将太の(ボールの)動かしは、チームにとってよかった。いい攻撃につながった部分もあった」と珍しく個人の名前を挙げて評した。
今季徳島から加入した福岡は、左右両足から高いパス精度を誇るDF。リーグ戦では3月12日の磐田戦以来となるスタメンのこの日、3バックの右に入ると、冷静な判断で広島のプレスをかわし、アンカーのダワンらに効果的なパスを配した。ボールが繋がった要因について、福岡は「ひとりひとりの意識が変わったからだと思います。パトリックも昨日の練習で言ってくれたんですけど、自分たちは這い上がるしかないと。この1試合に対し、“責任感”はみんな強かった。それが前面に出た」と語った。彼にとっては、久々の先発という重圧の中でも、自身の特徴でもあるビルドアップの能力を発揮することが、“責任感”だったはず。福岡のプレーが、チームメートにわずかながら時間的余裕を与え、札幌戦にあったようなイージーミスの激減にもつながったように見えた。
チームは中断期間を経て、守備のハイプレスへの意識を高め、アグレッシブな戦いを目指している。しかし酷暑の夏を、ハイプレスだけで乗り切ることはできない。ボールを握り、相手を走らせて疲労させる時間もつくることで、ハイプレスの効果も上がる。「みんなが気持ちよくプレーできるように」と語る福岡が、チームに欠けていたビルドアップの安定性を向上させるキーマンとなるか。加入1年目ながらすでに明るいキャラクターでチームに溶け込む27歳は、プレーでもチームに光明をもたらした。