P・ウタカ、パトリック、レオ・シルバ…主力外国人選手の顔ぶれが変わらない現状をどう見るか
京都サンガのナイジェリア人FW、ピーター・ウタカの活躍は、Jリーグ前半戦のひとつのトピックになっている。昇格クラブである京都を牽引し、得点王争いを演じている。38歳になるも衰え知らず、だ。
ウタカはJリーグ8シーズン目で、クラブ在籍はすでに6チーム目になる。2016年、サンフレッチェ広島時代にJ1で得点王に輝き、2020年には京都でJ2得点王になった。格別のフィジカルをベースにした得点力で、まさに「時を止めた」活躍を見せる。
ウタカのように、Jリーグでのプレーが長期化した外国人選手は他にも多い。彼らは重要な戦力で、Jリーグへの貢献度も高いのは間違いない。ただ、それがリーグ全体として好ましいことなのか。
ベテラン外国人選手たちの現状に、今のJリーグの深層が見える。
ガンバ大阪のブラジル人FWで34歳になるパトリックは、日本で引退するまでプレーするのが目標で、日本国籍取得も目指しているという。すでにJリーグ10シーズン目。もはや日本人同然だ。
2014年、パトリックは「フィジカルモンスター」ぶりを発揮した。Jリーグベストイレブンを受賞し、ナビスコカップでも最優秀選手賞に輝き、国内三冠の原動力となった。その後はケガもあったが、2018年には広島で20得点を記録。昨シーズン、一昨シーズンとカップ戦を含めて2ケタ得点を叩き出している。
ただし、全盛期のインパクトはない。
名古屋グランパスのブラジル人MF、レオ・シルバは36歳、やはりJリーグ10年目になる。
2013年にアルビレックス新潟にやってきた時、「世界」を感じさせるボランチだった。個人的なボールを奪い取る能力もさることながら、周りと補完しながら守備ができ、それを攻撃にも使って、勝負どころではゴールに絡むことも少なくなかった。2014年にはベストイレブンに選ばれ、しばらく傑出した存在だった。
だが、残念ながら昔日の面影は消えている。
主力となる外国人選手の顔触れが変わらない、というのは危惧すべき状況である。
若手のブレイクを妨げる危険性
FC東京には、Jリーグ8年目のアダイウトン、同7年目のディエゴ・オリヴェイラ、同6年目のレアンドロという3人のブラジル人がいる。湘南ベルマーレのブラジル人FWウェリントンは34歳で、Jリーグ9年目。横浜F・マリノスのブラジル人DFエドゥアルドは10年目、名古屋グランパスのブラジル人FWマテウスも同じく10年目だ。
新陳代謝が遅れている理由として、ひとつにコロナ禍が考えられる。今シーズンに関しては、そもそも外国人の入国規制が厳しく、満足に補強を行なえなかったという事情がある。
ただ、コロナ禍になる前から、「外国人選手停滞」の兆候は出ていた。日本人の有力選手が次々に海外に旅立つ一方、計算が立つ外国人選手を手放せなくなった。とはいえ全盛期の活躍も望めず、結果として全体的な地盤沈下が起こっているのだ。
率直に言って、Jリーグの外国人選手のレベルは低下しているように見える。
外国人選手は”強力な援軍”として、リーグで突出した働きが求められる。彼らによって、少なからずゲームの魅力が左右される。それはどんな国でも変わらない。人気のリーガ・エスパニョーラもリオネル・メッシ、クリスティアーノ・ロナウドという二大巨頭の勢いが衰えて去った途端、リーグとしての人気も低下せざるを得なかったほどだ。
「まだまだ活躍してくれる」
ベテラン外国人選手を支持する声もあるだろうが、彼らがJリーグに定着するのは、”うまみ”があるからでもある。クラブによっては破格の年俸が支払われている。「外国人」という銘柄なだけで優遇されているのだ。
誤解を恐れずに言えば、チームの浮沈を決めるような活躍ができなくなった外国人選手は、若手のブレイクを妨げるだけだ。
たとえば今シーズン、柏レイソルは若手日本人選手の活躍で順位を上げている。功労者ではあったが、力は落ちていたクリスチアーノを切り捨て、新たな態勢にシフトしたことが好転の理由のひとつだろう。新陳代謝を行ない(代わりのFWにはブラジル人のドウグラスを獲得したので、結果論とも言えるが)、細谷真大のような若手が台頭した。
何の働きもせず、億単位を稼いで帰国する外国人選手もいる。明らかに強化の失敗の場合も少なくない。これは深刻な問題で、有望な日本人の若手選手がチャンスをふいにし、チームの屋台骨まで傾かせることになる。
ヴィッセル神戸は「ブラジルの将来を担う」という触れ込みのFWリンコンを年俸1億円近く、約3億円の移籍金で獲得した。しかし昨シーズンは1点、今シーズンは0点。天性のスピードは特別だが、プレーが習熟しておらず、その価値は1年で暴落している。
ベテランの外国人選手が目立つ理由は、新人外国人選手が”上書き”できていないからでもあるだろう。コロナ禍の2年半で新たに入団した外国人選手は、ほとんど成果を挙げられていない。それはクラブのマネジメントの問題でもあり、リーグ人気にもつながる問題でもある。
すでにJリーグ4年目になるレアンドロダミアン、ジェジエウという川崎フロンターレのふたりに「新鋭感」が残る。外国人選手の顔ぶれは、リーグの実態を反映する。