日本で“古巣復帰”も? 苦しんだ海外組、Jクラブが獲得に動いても面白い選手は誰だ〈dot.〉

 欧州に渡って3シーズンが経過した食野亮太郎も、思うような結果を残せていない。切れ味鋭いドリブルと思い切りの良いシュートが魅力のアタッカーで、G大阪U-23で活躍した後、J1舞台でも物怖じしないプレーを披露し、2019年夏にマンチェスター・シティと契約した。しかし、今季所属したポルトガルのエストリル・プライアでリーグ戦9試合出場1得点に終わるなど、レンタル移籍先での成長曲線は期待値以下だ。来季の去就は未定だが、世界のトップクラスが集まるシティに23歳の日本人の居場所はなく、今後のキャリアを考えるならば国内復帰も悪くない。“メッシーノ”のアグレッシブなプレーは、古巣のG大阪も含めて閉塞感のあるチームの攻撃を活性化できるはずだ。

まだまだ苦しんだ日本人選手はいる。ドイツのウニオン・ベルリンに所属する24歳の遠藤渓太もそのうちの一人。横浜FMユースから2016年にトップ昇格した1年目からリーグ戦23試合に出場し、2018年にはルヴァン杯のニューヒーロー賞を受賞したスピード抜群の左ウイング。2020年夏にレンタル移籍でドイツに渡り、1年目はリーグ戦16試合に出場して1得点の数字を残したが、レンタルから完全移籍に移行した今季は、システムの変更もあって出場4試合で計66分間プレーしたのみ。プロ選手として自分の持ち味を生かせるチームでプレーすべきであり、Jリーグにも彼の突破力を欲しているクラブは多くある。

日本人が多く所属するベルギーのシント=トロイデンの中では、元清水の松原后が苦しんでいる。左サイドからの鋭いクロスを武器に、高卒2年目の2016年から4年間、清水で不動のレギュラーとして活躍を続けた大型サイドバック。しかし、2020年1月にベルギーに渡って以降は1年半でリーグ戦出場8試合のみ。今季は開幕5試合まではスタメン出場も、第7節以降は出番なしに終わった。だが、3バックにも対応可能な左利きの25歳の存在価値は高く、古巣の清水だけでなく複数のJクラブが興味を持っている。

そして忘れてはならないのが、日本代表不動の主将である吉田麻也だ。イタリア・サンプドリアで3年目を過ごした今季は、シーズン前半こそレギュラーとしてプレーしていたが、指揮官交代とともに出場が減り、今年に入ってからはほぼ出番なし。出場時のパフォーマンスに対しての評価も芳しくなく、契約満了によって今季限りでの退団が濃厚とされている。今年11月開幕のW杯を考えると欧州でのプレーがベストだが、8月に34歳となる日本人センターバックに対して魅力的なオファーが届くのかどうか。中東クラブからの関心が伝えられているが、Jリーグ復帰の可能性も大いにあり、守備を立て直したいチームにとっては非常に魅力的かつ効果的な人材だ。

さらに、元日本代表のGK中村航輔も国内復帰を考えていい選手だ。柏の下部組織で育ち、2013年にトップ昇格。2016年に正GKの座を掴み取ると、鋭い反射神経で数多くのシュートをブロック。2016年のリオ五輪に出場した後、2017年にA代表に初招集されると、2018年のW杯ロシア大会のメンバー入りも果たした。だが、その後は怪我による離脱もあって調子を崩し、2021年1月にポルティモネンセに移籍したが、1年半の所属でリーグ戦2試合に出場したのみ。27歳となった今、このままポルトガルの中位クラブの「控えGK」の立場に時間を費やすよりも、再びJクラブの正GKとしてピッチに立つ方が“オススメ”だ。

果たして、この中から今夏にJリーグ復帰を果たす者はいるのか。確実に言えることは、彼らはJリーグの各クラブにとって即戦力となり、下位に低迷するチームの「救世主」、あるいは優勝のための「切り札」になり得るということ。そして、苦しんだ中で溜まったフラストレーションはピッチの上でのみ発散され、海外挑戦の成否と自身の成長は、再びJリーグの舞台で活躍することでも十分に証明できるということだ。

昨夏は酒井宏樹(浦和)、大迫勇也、武藤嘉紀(神戸)、乾貴士(C大阪)、長友佑都(FC東京)、今季開幕前には鈴木優磨(鹿島)、齊藤未月(G大阪)が欧州クラブからJリーグ復帰を果たしたが、今後もその数が増えることで、日本サッカーの“面白味”は増すはずだ。

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