【番記者の視点】G大阪の“パワープレー依存”は是か非か 清水戦は終盤に追いつきドロー

明治安田生命J1リーグ第8節 清水1―1G大阪(10日、アイスタ)

190センチFWレアンドロ・ペレイラの投入が、その合図となった。1点を追う後半34分、最前線は189センチのFWパトリックとのツインタワーに。サイドにボールを運び、シンプルなクロスでゴールを強襲した。同42分には、MF倉田のクロスをレアンドロが頭で合わせたが、惜しくもポストに嫌われた。しかし相手をペナルティー付近まで押し込んだ結果、最後はゴール前で得たFKのこぼれ球を、MF小野瀬が決めて同点に。なりふり構わず、敵地で勝ち点1をもぎ取った。

前半は清水のプレッシング、さらに強風の影響も受けて苦しんだ。何とか無失点でしのぐと、後半は攻撃時は3バック、守備時は4バックとした可変システムに。ボールを動かして押し返そうとしたが、同13分に失点。片野坂知宏監督は「清水さんの守備に対し、立ち位置を取らせて、狙いを持ってやろうとしていた。しかし清水さんの(守備)スライド、ボールへのプレッシャーも強く、なかなか前進することができなかった。だから最終的には、ああいう形(パワープレー)の攻撃にせざるを得なくなった」と振り返った。

現時点で、パワープレーがG大阪の大きな武器となっていることも事実だ。パトリックへのロングボールは、手っ取り早く陣地を回復する効果的な方法であり、さらに終盤にレアンドロも投入したパワープレーから、第4節の磐田戦でも同点ゴールが生まれた。大分時代は、GKも含めた巧みなビルドアップが持ち味の攻撃的なチームをつくった指揮官だが、G大阪では「パワープレーは武器の一つ。状況によって、使い分けながら。流れの中でいい攻撃はしたいですけど、自分たちがやるべきことを、はっきりとした形でやっていきたい」と、“使えるものは使う”という姿勢を打ち出している。

パワープレーへの依存度が高くなれば、パトリック頼みとなって苦しみ、残留争いに巻き込まれた昨季と同様になるのでは…と懸念する。しかし今季新加入のMF斉藤は「地上戦と空中戦との融合、使い分けは少しずつできてきている」と手応えを明かす。相手が高い位置からプレッシングをかけてきた場合は、FW周辺のスペースが空くため、前線へのロングボールからこぼれ球を拾ってチャンスが生まれる確率は上がる。相手がロングボールを警戒すれば、DFラインから丁寧につなぎ、サイドに展開、またはライン間に縦パス、という形も狙える。今はまだ地上戦の精度が課題だが、確かに後半はトライしようという姿勢も見えていた。

斉藤が「頭(の中)を動かして、やれるシーンが増えないと。両方できるのがベスト」と語るように、今後はどちらの攻撃でも意図をもってやれているか、がポイントとなる。昨季は開幕8試合でわずか2ゴールと得点力不足に苦しんだチームが、今季は8試合で12ゴール。失点も多く(12失点)、11位と順位は上がっていかないが、チームは昨季失いかけていた攻撃的な姿勢を取り戻しつつある。パワープレー“も”できるチーム、というバランスが確立されれば、中位から抜け出す光明が見えてくるのではないだろうか。

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