福田正博が今季Jリーグで注目する9人。新天地のベテランや敏腕監督まで。新規の代表メンバー入りには「圧倒的な結果が必要」

Jリーグ2022開幕特集

福田正博 フットボール原論

■今季のJリーグは、11月にカタールW杯が控えていることもあり、日本代表メンバー入りを目指しての活躍を期する選手たちも多いだろう。なかでも注目すべきプレーヤーは誰か。福田正博氏に見るべき選手を聞いた。

◆【図】Jリーグ30年。歴代最強チームのフォーメーション

【代表入りへは圧倒的な活躍が必要】

今シーズンのJリーグで最初に注目したいのが、大迫勇也(ヴィッセル神戸)、長友佑都(FC東京)、酒井宏樹浦和レッズ)の日本代表の3選手だ。間違いなく本領を発揮してくれるはずだ。

過去に海外からJリーグに復帰した選手を振り返っても、Jリーグ復帰初年度はコンディショニングで相当に苦労していた。3選手も同様にベストパフォーマンスを取り戻せなかったが、今季は1月の代表合宿からスタートを切っている。開幕して強度の高い試合をこなすなかで、コンディションはさらに上がっていくことだろう。

大迫は前所属のブレーメンでは最後の2シーズンほどは低調なパフォーマンスだったが、コンディションさえ整えば相当な活躍を見せてくれると期待している。大迫のゴールシーンが数多く見られれば、神戸のタイトル獲得も近づくはずだ。

その神戸では武藤嘉紀も楽しみな存在だ。大迫と同じく昨夏にJリーグに復帰し、前線で攻守にわたって迫力あるプレーを見せていた。今年1月にあった国内組だけでの日本代表合宿でも存在感を示したが、本人も日本代表戦復帰への意欲が高まっているのではないかと思う。

武藤は前線ならサイドでも1トップでもプレーできるだけに、Jリーグでのアピール次第では代表戦復帰もありえるだろう。そのためには結果を残す必要がある。それもちょっとやそっとの好結果ではなく、圧倒的な結果を残さなければならない。

これは武藤に限ったことではなく、11月のカタールW杯のメンバー入りを狙っている若手選手にも言える。

それは森保一監督が手堅い選手選考をし、各ポジションで選手の序列が決まっている起用方法をするからだ。これが森保監督のスタイルで、そんな監督に認められるためには少しくらい活躍した程度では難しい。監督の気持ちを動かして序列を一気に覆すには、やはり圧倒的な結果が必要だろう。

【溌剌と活躍する宇佐美が見られるか】

その点で言えば、鹿島アントラーズに戻ってきた鈴木優磨が、今季のJリーグでどれくらいの結果を残すかには興味がある。2019年7月に鹿島からベルギーのシント=トロイデンに移籍し、2年目の2020-21シーズンは34試合で17ゴール。これはヨーロッパの主要リーグで残した日本人選手最多ゴールだったが、森保監督から日本代表に声がかかることはなかった。

昨夏にステップアップの移籍を模索したが、急転直下の古巣復帰。スイス人監督のレネ・ヴァイラーを迎えてヨーロッパスタイルへと転換する鹿島で、鈴木がどういう結果を残すのか。ベルギーでゴール量産した地力を再び見せられれば、代表入りも見えてくるのではないかと思う。

選手のサッカーキャリアを左右するひとつに移籍がある。そこでの決断がその後の選手生活を変えることは多々ある。オフシーズンに川崎フロンターレからの打診を断り、ガンバ大阪残留を決断した宇佐美貴史の今季にも注目している。

宇佐美は今年5月で30歳になるが、チャンピオンチームから声がかかるほど彼の技術は錆びついていない。それだけに個人的には川崎のスタイルのなかで、どんな輝きを放つのか見たかった想いがある。ただ、彼の決めた愛着あるクラブへの残留という決断も、私自身の現役時代を振り返れば十分に理解できる。残留を後押ししたものに、片野坂知宏新監督の就任もあったのではないか。

片野坂監督は2016年にJ3に降格した大分トリニータの監督に就任し、同年にJ2昇格、2018年にJ1昇格に導いて3シーズンをJ1で戦った。昨季はJ2降格という結果に終わったものの、その手腕は間違いなく高い。選手のクオリティーが高いG大阪で、片野坂監督は自身のスタイルのバージョンアップ版を見せてくれると期待しているが、そのサッカーに必須だった宇佐美の残留は大きかったはずだ。

宇佐美にとっても片野坂監督の就任によって、G大阪を頂点に返り咲かせたいと強く思ったのだろう。老練なプレーを若い頃からする宇佐美だが、まだ老け込むには早い。新監督のもとで溌剌と輝く宇佐美が見られると楽しみにしている。

【興梠は札幌に好影響をもたらしそう】

今年36歳になる興梠慎三にも注目している。昨季の浦和レッズはリカルド・ロドリゲス監督のもとで復活の狼煙をあげたが、その煽りを受けて出番を大幅に失った興梠は北海道コンサドーレ札幌に新天地を求めた。

札幌のミハイロ・ペトロヴィッチ監督とは、浦和時代に一緒に戦っているだけに、チームの戦い方を理解するのに時間はかからないはずだ。私は興梠のゴール前での得点嗅覚は、いまでもJリーグでもっとも高いと評価しているが、その選手の加入は興梠にとってもクラブにとってもwin-winの結果になる予感がしている。

昨季の札幌が、主導権を握りながらも決定力を欠いて勝ち点を取りこぼしたことを考えれば、チームの戦い方に慣れていけば、決定力の高い興梠が活躍する可能性は十分にある。

ストライカーとしての働きだけではなく、札幌にはFW小柏剛やMF金子拓郎など才能ある選手もいるだけに、興梠のゴールを決めるところから逆算した動きなどは、チームに好影響をもたらすのではないかと見ている。

最後は選手ではなく、監督の手腕に触れたい。京都サンガF.C.が12年ぶりにJ1に戻ってきたが、昨年就任1年目でJ2から昇格に導いた曺貴裁監督がどうやって選手を奮い立たせるかに注目している。

個人的に曺監督と親しくしているのだが、昨年J1昇格という結果を残したことで監督としてレベルが一段上がったと感じている。今季はFW山崎凌吾(前名古屋)、金子大毅(前浦和)らが加わっているが、湘南ベルマーレ監督時代の教え子たちも再集結していて、どのような戦いが見られるか楽しみにしている。

さらに京都で注目しているのが、ピーター・ウタカのプロフェッショナリズムがチームにどういう効果をもたらすかだ。2016年のサンフレッチェ広島時代にJ1得点王になっているウタカは、2020年から京都でプレーし、昨季は40試合で21ゴール。J2でのここ3シーズン合計では120試合で63得点を決めている。

J1でも彼の高いプロ意識とゴールへの強い意欲が、京都の攻撃の肝になるだろう。一方で、チームの守備面で存在感と責任感を発揮できる選手が台頭することを期待している。

「ウタカが得点をとるために守備は任せろ」という思考の選手が増えるように、曺監督がチームを導いていけるかどうか。そのマネジメントができた時には、京都は残留争いではなく、一段上の戦いをするのではないかと見ている。

リンク元

Share Button