今季Jリーグの優勝争いと見どころ。福田正博「ACL組は開幕から7試合が今季の行方を占うものになる」

Jリーグ2022開幕特集

福田正博 フットボール原論

■2月18日に開幕する今季のJリーグ。川崎フロンターレの3連覇への挑戦と、それを阻もうとする強豪の戦いはひとつの見どころだ。過密日程となる今シーズン、福田正博氏は「序盤が非常に大切で注目」と解説する。

◆【図】Jリーグ30年。歴代最強チームのフォーメーション

【中盤の構成が楽しみな川崎】

今シーズンのJリーグも、中心的存在は川崎フロンターレで間違いないだろう。

昨シーズンは開幕前に守田英正(サンタ・クララ)、夏場に三笘薫(サン=ジロワーズ)と田中碧(デュッセルドルフ)という主力選手を海外移籍で失いながらも、2連覇を達成した。今シーズンは、オフに旗手怜央セルティックに移籍して抜けたなかで、3連覇に挑むことになる。

開幕してシーズン途中に、主力選手が海外移籍でチームを離れる。川崎の選手たちの能力を考えれば今シーズンも起こりうることだが、その難しいチームマネジメントのなかで鬼木達監督が3連覇を達成できるかは、最大の焦点だろう。

補強は、Jリーグでの実績のある選手だと、北海道コンサドーレ札幌から来たMFチャナティップと横浜FCから獲得したMFの瀬古樹だけだが、チームスタイルにフィットする選手を的確に獲った印象だ。

チャナティップは川崎でも相当やると予想しているし、彼が加わって川崎がどんな化学反応を起こすかはとても楽しみなところだ。今季はカタールW杯のために、リーグ終了が11月頭と例年より短くなる変則シーズンであることを考えれば、中盤の選手層が厚みを増したのは大きい。

昨季終盤にアンカーのスタメンの座をつかんだ橘田健人や、ジョアン・シミッチのいるところに、アンカーをはじめ中盤ならどこでもできる瀬古が加わり、さらに大学No.1ボランチという評価の松井蓮之も加入した。ここに脇坂泰斗がいて、大島僚太も控えている。鬼木達監督が中盤をどういう構成にして、誰をどう配置するのか楽しみなところだ。

新入団選手では桐蔭横浜大から加入したGKの早坂勇希に注目している。U-18まで川崎の育成組織で育っただけに、チームに馴染むのに時間はかからないはずだ。とはいえ、守護神のチョン・ソンリョンの壁をすぐに越えるのは容易ではない。

ただ、川崎にとってGKの世代交代は不可避なテーマ。早坂に出場機会がめぐってきた時に一発解答のプレーを見せられれば、GKの世代交代は一気に進むのではないかと思っている。

【期待感が高い神戸と浦和のACL組】

この川崎に加え、横浜F・マリノス、ヴィッセル神戸、浦和レッズがAFCチャンピオンズリーグ(ACL)を戦う。4チームに共通して言えるのが、開幕から3月中旬までの7試合が今季の行方を占うものになる可能性が高いということ。

なぜならACLのグループリーグが4月15日から5月1日までセントラル開催で行なわれるため、Jリーグの開幕直後から強豪同士の直接対決が数多く組まれているからだ。ここで勝ち点3を積み上げていければ、ACLへの弾みにもなるが、逆に負けが込めばACLはもちろん、リーグ戦でも苦しくなる。

そのACL組では、神戸と浦和には補強を含めて期待感が高い。  神戸は今季もアンドレス・イニエスタ中心なのは間違いないが、昨夏の大迫勇也、武藤嘉紀、ボージャン・クルキッチの補強に続いて、今季も扇原貴宏(前横浜FM)、汰木康也、槙野智章(以上前浦和)を加えた。

2年目を迎えてフィジカルコンディションの高まる大迫と武藤、ボージャンへの期待はさらに膨らむし、セレッソ大阪時代に山口蛍とコンビを組んでいた扇原は、中盤ですぐに攻守両面で躍動すると予想している。

センターバックはトーマス・フェルマーレンが抜けたのは痛いが、昨季はフェルマーレンとコンビを組んだ菊池流帆がいて、21歳の小林友希や経験のある大﨑玲央もいる。彼らがレベルアップしながら、今年で35歳になる槙野も使えるようになると、シーズンを通じて安定感のある守備が構築できるのではないかと思う。

浦和は昨季就任したリカルド・ロドリゲス監督のもとで、選手を大きく入れ替えながら新しいチームスタイルの基盤をつくった。今年はそれにどれだけ上積みできるかという楽しみがある。

補強のところでは監督が徳島ヴォルティス時代に信頼した岩尾憲を獲得し、横浜FCから松尾佑介、鹿島アントラーズから犬飼智也、サガン鳥栖から大畑歩夢を加えたが、J2からも5選手を獲得した。昨季もJ2から獲得した選手たちが躍動したことを考えれば、彼らがチームの主力にのしあがっても不思議はない。

不安があるとすれば、FWの選手層の薄さになる。キャスパー・ユンカーが残留したが、興梠慎三を札幌へ、杉本健勇をジュビロ磐田へ出したが、控えFWがいないのが気がかりではある。ただ、昨季も江坂任を偽9番のように使ったりしているので、リカルド監督が柔軟な思考でどういう布陣にするのかは興味がある。

横浜F・マリノスは上述3チームに比べると、期待だけではなく不安要素もある。ひとつはDFの大黒柱だったチアゴ・マルチンス(ニューヨーク・シティFC)の移籍だ。その補強にサガン鳥栖からエドゥアルドを獲得したが、連携面を含めてどうなるのか。

昨年までの横浜FMは、シーズン途中に早め早めの補強が奏功してリーグタイトル争いに加わってきた。しかし、それを遂行したフロントの面々が代わっていると聞く。これがどう影響するのか。昨年までのようなフロント力が発揮できるのか見てみたい。

【新監督のクラブは注目】

このほかでは、新監督を迎えたクラブに注目している。FC東京は、アルビレックス新潟で2年間監督を務めたスペイン人のアルベル・プッチ・オルトネダ監督が就任し、親会社もmixiに変わった。大分トリニータを昨季まで率いた片野坂知宏監督は、ガンバ大阪の監督に就任した。

FC東京を昨季途中まで指揮した長谷川健太監督は、名古屋グランパスの監督に就任。そして、レネ・ヴァイラー監督が指揮することになった鹿島。この4クラブは、資金力から見ても本来は上位争いを演じてもおかしくないだけに、監督と選手が入れ替わってチームがどう変化するのか楽しみにしている。

そのなかで大転換をはかる鹿島には大きな興味がある。クラブ創設から歩んできたブラジル路線から完全に脱却し、今季はスイス人監督レネ・ヴァイラーを迎えた。どんなサッカーを鹿島に持ち込むかは、まだベールに覆われているところが多い。だが、クラブがボールを保持して主導権を握るサッカーへの転換を目指していることを踏まえれば、そういうサッカーをやれる監督なのだと思う。

ピッチ上の選手たちがオーガナイズされた整然とした動きから、多くの時間帯でボールを保持するのではないかと予想する。そうだとしたら能力の高い選手がもともと揃っているチームだけに、適応するのに時間はかからないような気はしている。ただ、それでも勝負の世界はすぐに結果が出るものでもない。数カ月後にどう変わっているかを含めて見届けたい。

今シーズンは開幕から上位対決が数多く組まれているため、どんなに実力が高くても序盤につまずくとそのまま立て直せずにドロ沼にハマる危険性はある。逆に、上位勢に少し及ばないクラブは、序盤戦は実力の似通ったチームとの連戦になるので、連勝できればチーム力を飛躍的に伸ばしていけるだろう。

それだけに開幕から1カ月半での勝敗がシーズンの行方を大きく変えるものになる。序盤戦での各チームの戦いをしっかりチェックしてもらいたい。

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