札幌の「クラブの未来図」ゴール後にドウグラス・オリヴェイラが左腕を指した「理由」【G大阪対札幌】ドウグラス・オリヴェイラが見せた真顔(2)
明治安田J1リーグ 第31節 ガンバ大阪vs北海道コンサドーレ札幌 2021年10月2日 19:03キックオフ
現在のチーム完成度がそのままスコアに表れることになったが、それは同時に「らしさ」の生成に対するここ数年の取り組みの差でもあるようだった。
札幌が採用しているオールコートマンツーマンは、2018年、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督が就任したシーズンの終盤に既にプランが生まれていたという。三上大勝GMはUHB北海道文化放送のインタビューで「クラブの未来図」という言葉を使い「社長や僕やミシャがいなくなったクラブにも在り続ける『カラー』や『礎』みたいなものを作っていきたい」と、そのプランが生まれ、実行された理由を語っている。地方のクラブが生き残っていくためには、明確で具体的な戦い方という礎が必要だった。
0-3で迎えたハーフタイム、場内には後半の応援を煽るスタジアムDJの声が響いていた。
「後半もガンバらしく」の後ろに続いたのは「熱い」だった。
今行われている取り組みがクラブそのものを未来へ繋げることになる、ということを札幌の選手たちが強く意識していることを感じさせる場面もあった。
後半、5点目のゴールを決めたドウグラス・オリヴェイラは、真面目な顔で自身の左腕を指した。2点目を決めたルーカス・フェルナンデスにはしゃぎ、白線を越えて抱きついてレフェリーから注意を受けたのと同じ人物とは思えないほど真剣な顔だ。
■石水氏の追悼
白いアウェイユニフォームの左腕に巻かれた黒いバンド。クラブ創設に尽力し、最高顧問でもあった石水勲氏が9月26日に亡くなった。石水氏がいなければ、今のコンサドーレはなかった。ペトロヴィッチ監督は試合後「このクラブが今あるのは彼のおかげです」「その志、クラブをさらに育てていきたいという彼の思いを受け継ぎたいと思います」と語り「続けていくことが我々を強くする。続けることでしか我々は成長できない。やり方を変えてしまったらその先はない」と続けた。そう言い切れるやり方を札幌は持つことができ、選手たちもそれぞれが歴史の担い手になっていることを自覚している。
背番号33は駆け寄ってきた仲間と喜ぶと、戻っていく前に振り返って再び喪章を指した。大事なことだから、という気持ちが伝わってきた。
野々村芳和社長は追悼コメントの中にこう記している。
「コンサドーレは石水さんが思い描いたクラブに近づいています。石水さんはいつも人の想像の上を行っていましたが、今度はコンサドーレが貴方の想像の上をいけるように歩んでいきます」
その歩む道が正しく、そして明るいことを、30周年を迎えたガンバを相手に選手たちが証明してくれた。
新しい時代へ歩んでいこうとしているのは、新エンブレムを発表したガンバも同じだ。クラブ創設が5年早い先輩として、ガンバは今の札幌の姿を見て何を思うだろうか。
■試合結果
ガンバ大阪 1-5 北海道コンサドーレ札幌
■得点
5分 駒井善成(札幌)
32分 ルーカス・フェルナンデス(札幌)
40分 高嶺朋樹(札幌)
47分 金子拓郎(札幌)
65分 パトリック(ガンバ)
88分 ドウグラス・オリヴェイラ(札幌)