J2に降格してしまうチームは…混沌としてきた「J1残留争い」の行方 〈dot.〉

2月末に開幕した今季のJリーグはすでにシーズンの半分を戦い終え、東京五輪の中断期間(代替試合は実施)を経て、いよいよ勝負の後半戦を迎える。優勝争いは今季も川崎が独走し、それを横浜FMが猛追している状況だが、同時に注目されるのがJ2降格争い。例年よりも2チーム多い「下位4チームがJ2自動降格」という特別ルールの下、より激しさを増して行くことになる。

すでに危険水域に達しているのが、横浜FCだ。22試合を終えて勝点11(2勝5分15敗、得失点差-37)で断トツの最下位。昨季15位で迎えた今季は、オフに経験豊富なベテランを補強して「攻撃的スタイルでのトップ10入り」を掲げたが、開幕戦での1対5の大敗から6連敗の滑り出しとなり、4月7日、8試合を終えて1分7敗、5得点22失点という段階で、下平隆宏監督が“今季第1号”の解任となった。

その後、新たに早川知伸氏の下で出直しを図ったが、チーム状況は好転せず、失点数はリーグワーストの51失点(1試合平均2.3失点)。クラブはMFアルトゥール・シルバ、GKブローダーセンの獲得を発表し、さらに外国人選手の補強を進めているが、果たして救世主になれる実力があるのか。7月11日の中断前最後の試合で約2カ月ぶりの2勝目を挙げたことをキッカケとし、中断期間中にチームが変わることができなければ、2012年の札幌(9月29日、7試合を残して降格決定)を上回る「史上最速のJ2降格」の危険性が高まることになる。

開幕前は優勝候補の一つに挙げられながらも、現在19位に沈んでいるのがG大阪だ。シーズン序盤に新型コロナウイルスの集団感染が発生したことで消化試合が15試合と少ないが、それでも勝点14(3勝5分7敗、得失点差-7)という成績は、非常に不甲斐ない。特に攻撃陣の連携不足が目立ち、15試合で7得点というクラブ史上最悪レベルの得点力不足に陥っている。すでに5月14日付で宮本恒靖監督を解任する“大ナタ”を振るったが、後任監督との交渉が不調に終わったことも大きな誤算。体制継続が決まった松波正信監督は、2012年にもシーズン序盤に緊急登板した経験があるが、その時も悪い流れをなかなか変えることができず、クラブ史上初のJ2降格という結末となった。

事実、監督交代後もチームの戦いぶりは低調で、下位チームを相手には選手個々のタレント力の差で勝利しているが、上位陣を相手には完敗の試合が続いている。今季に関しては「残留が目標」という状況。日本勢唯一のグループリーグ敗退となったACLから、中止分の代替開催6試合と天皇杯1試合を加え、7月、8月の2カ月間で計17試合を戦う超過密日程をどう乗り切るか。「まだまだ大丈夫」という気の緩みが出てしまっては、非常に危険だ。

現時点で降格圏に沈んではいるが、浮上の兆しを見せているのが、18位の大分だ。21試合を終えて勝点16(4勝4分13敗、得失点差-17)。偽カウンターを駆使した「片野坂スタイル」が対戦相手に研究されたことで序盤から苦戦が続いたが、その中でも少しずつでも勝点を積み上げ、7月10日には浦和を相手に1対0の勝利。同3日に柏から獲得を発表した大型FW呉屋大翔がチームにフィットすれば一気に視界が開ける可能性もある。同じく17位の仙台も、21試合終了時点で勝点17(3勝8分10敗、得失点差-17)と苦しい状況であることは間違いないが、開幕10戦未勝利スタートの“底”からは抜け出し、5月に3勝2分2敗と盛り返し、6月以降も白星こそないが、鹿島、浦和といった上位陣からしぶとく勝点1を奪った。8シーズンぶりに指揮を執っている手倉森誠監督の下で一体感を高めれば、後半戦の巻き返しは可能なはずだ。

下降線を辿っているのが、16位の徳島だ。昨季チームをJ2優勝に導いたリカルド・ロドリゲス監督を浦和へ引き抜かれた末に迎えた7シーズンぶりのJ1舞台。新監督のポヤトス監督の来日が遅れた中で開幕5戦未勝利のスタートとなったが、3月21日の第6節から3連勝を飾り、監督不在の10試合を4勝2分4敗と健闘した。しかし、ポヤトス監督合流後の4月17日以降の12試合は1勝3分8敗の低空飛行。レアル・マドリードの下部組織での監督経験があるスペイン人監督の下で攻撃的サッカーを目指したが、攻守ともに課題を抱えながら順位をズルズルと下げ、22試合消化で勝点20(5勝5分12敗、得失点差-10)、降格圏まで勝点差3となった。今後、どこかのタイミングで方針転換、あるいは何らかの決断を下さなければ、1シーズンでの“即J2逆戻り”の可能性が大きくなって行く。

16位の柏も心配だ。昨季は7位でフィニッシュしたが、その原動となった昨季の得点王&MVPのFWオルンガが流出。その穴を埋められず、開幕8試合を1勝1分6敗スタート。その後3連勝を飾ったのも束の間、5月1日から6月23日まで8戦未勝利(1分7敗)が続いた。さらに6月25日には昨季9得点10アシストの活躍で日本代表にも選ばれたMF江坂任の浦和への移籍が発表され、7月3日には今季12試合4得点のFW呉屋大翔が残留争いのライバルである大分へ。 “オルンガマネー”で獲得しながら低調なパフォーマンスが続いた4人のブラジル人たちが、7月11日の鹿島戦では躍動して2対1の勝利に大きく貢献したことは朗報だが、22試合を終えて勝点20(6勝2分14敗、得失点差-10)は危険な状況。就任3年目のネルシーニョ監督の求心力の低下も非常に気になるところだ。

その他、7月11日終了時点で、開幕前に主力が大量流出した湘南は勝点21(4勝9分9敗、得失点差-5)の14位、ロティーナ新監督を招聘した上でオフに積極的な戦力補強を敢行した清水も勝点23(5勝8分8敗、得失点差-6)の13位と不安な位置。さらに5月2日以降のリーグ戦6試合を3分3敗の未勝利となっているC大阪も、消化試合が18試合と少ないとはいえ、勝点23(6勝5分7敗、得失点差+2)と下位グループから抜け出せていない。そして開幕前に多くの評論家が降格候補に挙げながらも4月17日から5月22日までJ1クラブ新記録の6連勝を飾った福岡も、5月26日に最下位・横浜FCに1対1と引き分けると、続く大分戦から4連敗。現在、勝点29(8勝5分8敗、得失点差-3)とまだ余裕はあるが、中断期間中にチームの戦い方を再構築することができなければ、一気に降格圏に引きずり込まれることになる。

今後、延期分の試合を例外として、東京五輪開催によってリーグ戦は一時中断し、8月9日の第23節から再開となる。この期間を各クラブがどう有効に使うか。本来ならば、夏の移籍期間(7月16日~8月13日)に外国人選手を獲得して後半戦の“救世主”として期待したいところだが、今年は新型コロナウイルス感染症の影響で外国人の入国が制限されており、特例入国が認められても隔離期間が必要なために試合出場は早くても9月以降になる可能性が高い。果たして、最終的にどの「4チーム」が降格するのか。まだまだ巻き返しのチャンスは多くあるとはいえ、危機はすぐ背後にまで迫ってきている。

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