宮本恒靖、電撃解任!(2)他の監督にあって“ツネ様になかったもの”と求心力
低迷するガンバ大阪が決断した!
5月14日、クラブは5月13日付で宮本恒靖監督との契約を解除したと発表した。当面は松波正信強化アカデミー部長が監督を兼務し、後任監督は決定次第、発表するという。チームは現在18位と低迷。コロナでチーム活動がままならなくなったとはいえ、1勝4分5敗という成績による事実上の解任だ。
言うまでもなく宮本監督はクラブのレジェンドであり、昨季の躍進を導いた指揮官。リーグ2位に天皇杯準優勝という結果は、圧倒的強さを誇った川崎フロンターレには及ばないものの、それに次ぐ成績。クラブとしては、断腸の思いで下した決断だったに違いない。
ただし、レジェンドだから、躍進を導いたからといって、宮本監督に強大な求心力があったとは言えないのが難しいところ。
あるクラブ関係者は、「少なくとも選手からの求心力はなかった」と明かす。
「遠藤保仁、今野泰幸、米倉恒貴という日本代表経験者がクラブを去ったのも宮本監督体制でのこと」と話すように、「クラブ改革」と「求心力」のはざまで移籍していく選手も多かった。山口智コーチがクラブを去ったことを指摘する声もあるが、「宮本監督からの信頼度がもとから強かったとは言えない関係性だったから、あくまでも限定的」との声もある。
■選手の個人名を出す必要性
この関係者は、「他の監督が言うことを、ツネさんは言わないんですよね」とある部分を指摘する。それは、敗戦後や試合でうまくいかなかったときに、「自分の責任だ」などと指揮能力を反省することだ。定型文に感じるときもあるが、指揮官は負けたときに自身に矢印を向けることが多い。それは、サポーターやメディアの批判から選手を守るためでもある。
しかし宮本監督の口からそうした言葉が出てくることはなく、そればかりか、試合後に選手の個人名を挙げ批判したことも複数回あった。意図して名前を出して奮起を促すことも監督の大事な仕事だが、それが、逆効果になることも多かった。
「しかも今回、解任の発表をクラブが行ったけど、ツネさんからのコメントはなかったんですよ。解任とはいえ、何かあってもいいはず」(前同)
コミュニケーションという面で難があった宮本監督だが、それは、報道する側にも向けられていた。クラブや自身の情報をチェックしており、気になるニュースがあるとその出所を探そうとしたことが一度や二度ではなかったという。
「“犯人捜し”みたいなことで、疑心暗鬼になった部分もある。気になるのは仕方がないんだけど」(同)
完璧主義者・宮本恒靖が、指揮官としては難しさを招いてしまった一面があったのかもしれない。
■ささやかれる協会入りの可能性
ガンバは松波暫定監督の指揮下で、16日の浦和レッズ戦を戦うことになる。時間がないことから、ある程度は宮本監督のやり方を踏襲することになるだろう。松波暫定監督が「そのまま監督になる」という声もあるが、後任監督は現時点では分かっていない。
一方の宮本監督の今後の身の振り方については、かねてより「協会入りのうわさが出ている」(Jリーグ関係者)ということから、日本サッカー協会入りの可能性もあるが、当然、現場にこだわる可能性もある。「タイトルを取れば協会でそれなりのポストにいきなり就くこともできたかもしれないが、今回の解任ではやや流動的な面もある」(前同)という。
ガンバ大阪の宮本監督との冒険は、これで終止符が打たれたことになる。最後に指揮を執ったのはホームでの広島戦。緊急事態宣言下での開催のため、ホームながら無観客試合だった。レジェンドは、サポーターに見守られることなくチームを去ることなったのである。