日本代表の正ゴールキーパー、今“ガチの試合”があったら誰にすべき?〈dot.〉

新型コロナウイルスの影響によって、サッカー日本代表の活動が大幅な予定変更を強いられている。そして、その時間が長引けば長引くほど、「レギュラーは誰?」という疑問が湧いてくる。その中で現在、最も不透明なポジションの一つが、「正GK」である。

有力候補は3人。昨年10月、11月の欧州遠征に招集された川島永嗣権田修一シュミット・ダニエルだ。「欧州組のみの招集」という縛りがあった中で試合に出場したのは、カメルーン戦(△0-0)が権田、コートジボワール戦(○1-0)がシュミット・ダニエルで、パナマ戦(○1-0)では再び権田に戻り、最後のメキシコ戦(●0-2)はシュミット・ダニエル。結果的に大きな問題にはならなかったが、当時は招集された3人全員が所属クラブで出場機会を失っており、そこが大きな懸念材料となっていた。しかし、それから数カ月が経過した今、日本人GKを取り巻く状況は一変している。

劇的なV字回復を見せているのが、今年の3月20日に38歳となる川島だ。2018年のロシアW杯に出場した後、無所属の期間を経て、同年8月にストラスブール(フランス)に加入。長らく第3GKの立場が続いてピッチに立てない日々が続いたが、昨夏のシーズン開幕前にチームの正GKだったセルスがアキレス腱の断裂で長期離脱になると、第2GKのカマラも8月初めに新型コロナウイルス感染症の陽性が判明して離脱。川島は、このチャンスを逃さず見事定位置を掴んだ。

第1節、第2節と連敗スタートで一度は控えに逆戻りとなったが、昨年11月22日の第11節から今年2月28日の第27節まで17試合連続先発出場(継続中)を果たし、乱れ飛ぶシュートに対してビッグセーブを連発しながら、そのうち6試合でクリーンシートを達成。それまで2勝8敗だった降格候補のチームが、川島先発定着後は6勝6分け5敗と持ち直し、順位も20チーム中15位にまで浮上している(2月28日時点)。

復活を果たしたのは、今年2月に29歳となったシュミット・ダニエルも同じだ。2019年7月にシント・トロイデン(ベルギー)に加入したが、昨年1月に右足を痛めて約半年の戦線離脱を強いられると、昨夏のシーズン開幕後もしばらくは控えやベンチ外の状況が続いた。しかし、昨年10月25日の第10節でスタメン出場を果たして2対0の勝利に貢献すると、そのまま正GKの座に定着して今年2月28日の第28節までの20試合中6試合でクリーンシートを達成。それまで1勝3分け5敗だったチームも、7勝4分け9敗と成績が上向いた(2月28日時点)。A代表出場7試合で国際舞台での経験値はやや物足りないが、197センチの高さと長い手足はベルギーリーグでも大いに役立ち、このまま奮闘を続ければ、欧州5大リーグへのステップアップの話も出てくる。

彼らと異なる道を選択したのが、今年の3月3日に32歳となる権田だ。2019年1月にポルティモネンセ(ポルトガル)に移籍したが、出場1人のみというGKの特性上、なかなか出番を得られず。さらに2020/21シーズンになって若手GKを積極起用する方針の中で控えの状態が続くと、「試合に出ないと意味がない」と国内復帰を決断。「自分を一番必要としてくれた」と今季からJ1・清水に1年間の期限付き移籍で加入し、高いモチベーションを持って自身3シーズンぶりのJ開幕を迎えた。ロンドン五輪などアンダー世代での国際舞台を多く経験しており、A代表では通算18試合に出場。素早い反応に加え、的確なコーチングでDF陣からの信頼も厚く、スタメンの座を与えても間違いは起きない。今季、Jリーグの舞台で再び“違い”を示すことができれば、日本代表の正GK争いにも堂々と挑める。

その権田と入れ替わる形で海外に渡ったのが、今年2月に26歳になった中村航輔だ。2018年のロシアW杯メンバーであり、類稀なシュートストップの能力はすでに証明済み。ただ、昨年は度重なる怪我に苦しみ、今年1月に柏からポルティモネンセ(ポルトガル)に移籍後も8試合出番なしの状況が続いている。

それならば国内組に目を向けるべきで、G大阪で不動の地位を確立しながら好セーブを続ける34歳の東口順昭の名前が浮上する。加えて、東京五輪経由カタール行きを目指す、広島の若き守護神・大迫敬介と、同じく21歳ながら鹿島の正GKの座を奪い取った沖悠哉も、今後を見据えれば招集リストに入れておくべき存在だ。

さらにその先の将来に目を向けると、ポルトガルの名門ベンフィカのリザーブチームで活躍する20歳の小久保玲央ブライアン、浦和の次期守護神として大きな期待を背負っている18歳の鈴木彩艶という並外れた身体能力を持つハーフGKが控えている。ただ、21歳以下の彼らはあくまで「将来の正GK」であり、日本A代表のゴールマウスを任せるには、経験の面で不安が残る。

では、「誰」か。実力、経験、試合勘を踏まえると、やはり川島とシュミット・ダニエルの2人が充実している。そして所属するリーグの格を比べると、川島が上だ。エムバペ(パリSG)ら世界トップのスピードを実際にピッチ上で体感している点は国際舞台でも生かされるはずで、実際に試合中のプレーを見ても年齢的な衰えは感じられない。むしろ「今が全盛期か」と思えるほどの反応と好セーブを披露している。

そもそもGKは最も経験が求められるポジションであり、A代表通算91試合出場、W杯3大会連続出場の経験は価値あるもの。フレッシュさを求めるサポーターの心理は理解できるが、幾度目かの“旬”を迎えている川島が今、再び正GKに君臨しても文句は言えない。

ただ、その一方で2022年11月21日開幕予定のカタールW杯本大会を見据えると「確信」は持てないことは確か。今季のJリーグが開幕した中で、突出したパフォーマンスを披露する日本人GKも現れるだろう。あとは新型コロナの収束状況と、森保一監督の選択と決断にかかっている。

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