川崎を苦戦に陥らせたガンバ矢島慎也の“1人2役”。首位攻防戦、試合後に明かされた狙いとは?

首位攻防戦の舞台裏――なぜ川崎のプレスはハマらなかったのか?

[J1リーグ8節]G大阪0-1川崎/8月1日(土)/パナスタ

スコアレスで折り返したハーフタイム、まばらな記者席で、ある疑問がわき出ていた。一体、MF矢島慎也のポジションはアンカーなのか、インサイドハーフなのか、もしくはMF井手口陽介とのダブルボランチなのか――。

試合開始の立ち位置を見れば井手口陽介が真ん中で、矢島は右サイド。攻撃時には右サイドのMF小野瀬康介やMF高尾瑠とともに連係を作りながら前線に顔を出した。だがディフェンスラインからのビルドアップでは矢島が真ん中でプレーし、左右に展開することもあった。川崎の選手が口々に「前半はプレスがハマらなかった」と振り返ったように、矢島の神出鬼没な位置取りはG大阪が前半45分間の主導権を握る一因になっていた。

答えは単純明快だった。0-1で敗れた試合後、オンライン取材に応じた矢島は「ビルドアップに参加する時と、アンカーの脇に入る時を意識していました」と口にした。アンカーであり、インサイドハーフ。つまり“1人2役”を担っていたのだった。

もちろん、宮本監督の狙いがあった。矢島はリーグ再開直後の2節・C大阪戦と4節・清水戦以外の5試合は全てアンカーのポジションで出場している(C大阪戦はインサイドMF、清水戦はダブルボランチ)。そうしたなか、矢島の最初の立ち位置をインサイドハーフにして井手口を真ん中に置いたのは「中央で、前線で、ボールを奪うシーンを増やしたくて陽介を前に行かせたかった」(宮本監督)から。そして「ボールを保持した時の右サイドの崩しを意識したので、前節(神戸戦)と立ち位置を変えた」(同)からだった。

ただ同時に「これまでの試合でもそうだが、流れの中では(ポジションが)入れ替わることもある」(宮本監督)というようにディフェンスラインから繋いでいく際、矢島には真ん中にポジションを移す“自由”も与えられた。大黒柱のMF遠藤保仁がリーグ再開後は5試合ベンチスタートになっている状況下、これは指揮官の矢島への信頼度が高くなっている証拠だ。

「リーグ再開後の何試合かはボールを受けても後ろに下げることが多かった。きょうは前を向いて運ぼうと思っていた。そこはインサイドハーフでは大事なので良かった」(矢島)

後半は川崎がチームの重心を後ろに下げたこともあり、矢島が前でプレーする時間帯も増えた。51分、60分にはMF小野裕二に絶妙な縦パスを入れるなど、決定機も演出した。チームとして無得点に終わり、ゴール前での工夫を改善点に挙げたが、「リーグ戦は始まったばかり。負けを引きずるのはもったいない」と前を向いた。

年々、存在感を増してくる背番号21。川崎とのリターンマッチとなる11月25日には、どこまで成長しているのか楽しみだ。

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