試合に出なくてもG大阪に勝利をもたらす遠藤イズム

<明治安田生命J1:G大阪2-1大分>◇第5節◇18日◇パナスタ

ガンバ大阪が逆転で2連勝を飾った試合後、今季初めてパナスタに詰めかけたサポーターの拍手は鳴りやまなかった。新型コロナウイルス問題を何とか乗り越え、待ちに待った有観客試合。普段の応援歌や声援がなくても、新鮮で心温まる風景だった。

その後に改めて気付いたのは、3試合連続でベンチスタートとなったMF遠藤保仁(40)の出番が、今季初めてなかったこと。J1最多634試合出場で小休止。だが、G大阪の勝利には遠藤イズムが影響していたと思った。

J1歴代最多となる31本のPKを決めている遠藤だが、実は16年10月29日のアルビレックス新潟戦を最後にPKでの得点はない。もう丸4年になる。

ある時、関係者が理由を聞いた際、レジェンドはこう答えたという。

「自分が蹴るより、調子が出ない選手が蹴り、自信を取り戻すことが大事なんです」

この日、前半37分にPKの場面が訪れ、4日の大阪ダービーに続いてFWアデミウソンが蹴る流れだった。だが、FW宇佐美が「自分は1つ(得点が)生まれないと流れができないタイプなので、頼みました」。ブラジル人FWに声をかけ、PKを譲ってもらった。そして見事に同点ゴールを記録した。開幕5戦目での待望の今季初得点だった。

宇佐美はJ1再開後、決して調子自体は悪くはなかった。だが、中盤まで下がってボールをもらいに行き、肝心なゴール前での仕事ができていなかった。2トップの距離感も悪かった。

低空飛行が続く宇佐美は、自らの判断でPKを直訴するという行動に出た。すると得点後は、見違えたようにペナルティーエリア付近でのプレーが増え、ドリブル突破も見せた。後半3分にはスライディングでの守備で相手ボールを奪い、アデミウソンに決勝点となるパスを供給している。本人のいうように“流れ”が完全に変わっていた。

アデミウソンは「僕のゴールは(宇佐美)貴史がうまくボールを相手から奪い取ってくれ、みんなで挙げたもの」と喜んだ。遠藤が最後にPKを蹴った16年からG大阪に加入したブラジル人選手も、遠藤イズムを踏襲したかのように、宇佐美の自信回復に一役買ったことになる。

この試合のG大阪は、相手ゴール前で攻撃参加する人数が増え、再開後は最も攻撃的な姿勢を見せた。就任3年目の宮本監督が目指すサッカーが、ようやく顔をのぞかせた。

ちなみにこの試合の観客動員は感染防止のため、上限5000人に設定されていた。観客同士が密にならないため、観客が実際に座る席の近隣は、ひもで縛り付けて座席が使用できないように工夫した。先週、小野社長らクラブ職員が実際にスタジアムを回って準備したという。

仲間のため、サポーターのため、G大阪が一丸となってつかんだ、尊い1勝になった。

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